紫金山・ATLAS彗星が明け方に見えてきた(南半球)2024/09/14

20240914_紫金山・ATLAS彗星LIGHT CURVE_COBS
Spaceweather.comに、12日朝の低空でとらえた紫金山・ATLAS彗星(C/2023 A3)の姿が掲載されました。オーストラリアのMichael Mattiazzoさんによるものです。南半球では北半球より一週間ほど早く見え始まると考えていたので、全くその通りになりました。南緯30°から40°あたりでは太陽のほぼ真上に離れてゆくため、太陽離角が同じでも他の地域よりいち早く薄明から脱するのです。(※水平月が見やすいのと同じ理屈です→右下図参照。)来週末には日本でも観測例が出てくるでしょう。ふふふ、楽しみ。

水平月と傾斜月の高度
画像には明るい薄明中でありながら、はっきりした頭部が写っています。淡い尾も上方に伸びていますね。周囲の明るさでコマ直径がかなり削られているため全光度が正しく推し量れませんが、4、5等級くらいになってる感じです。約一ヶ月前に太陽観測衛星STEREOが偶然とらえた像の等級とも連続しています。連続してるって事が重要!COBSの観測データを引用し、光度曲線と観測データをプロットしたのが左上図。観測が減ってきた7月以降も光度曲線にうまく乗っています。

赤線で示した近日点通過(9月27.73日UT)前後は極めて急角度の光度変化で、動向が読めません。CBET 5445ではJ. N. Marcusさんによるコマ光散乱モデルが紹介され、「近日点通過後も状態が保つなら10月5-13日は0等級、10月7-11日は-2等級、10月8-10日は-3等級、10月9.4日頃に-4等級を超えるピーク」という予報なんだそうです。夢の見過ぎじゃないかとも感じるけれど、良い意味でも悪い意味でも予想を裏切ってきたのが彗星の世界。どう転ぶか分かりません。

地球最接近は10月13日0:11JSTごろ(約0.47242AU)。さすがに真夜中には見えないけれど、前日の宵空低空に見えていると思います。近日点通過後も元気で生き延びて欲しいですね。

今日の太陽2024/09/14

20240914太陽
昨夜から今朝は曇り後晴れ。風が前夜より強く、深夜を越えても改善されないまま夜が明けました。朝からは昼前まで雲量3、4割ほどでしたが、昼からはほとんど無くなりました。5m/s前後の風はまだ吹いています。これも台風の影響なのか?

20240914太陽リム
左は10:10過ぎの太陽。左下リム近くの活動領域13825はプラージュが明るいですね。その向こう、昨日も見えたデビルズタワーみたいなプロミネンスはいつまで続くんだろう?右端から右下にかけてのリムに見えるプロミネンスは昨日以上に面白くなってます。

気象庁アメダス速報値の本日0時から16時までの集計による夏日地点数は676、真夏日地点数は542、猛暑日地点数は81、酷暑日地点数は0、国内最高気温は長崎県口之津(クチノツ)ポイントの37.8度。

宇宙を飛ぶ青い鳥は幸せを呼ぶか?2024/09/14

20240914_Blue Walker-3
AST SpaceMobile社がBlue Walker 3(以下BW3)を打ち上げたのはちょうど2年前、2022年9月でした。世界各地で「明るい人工衛星がまた増えた」と噂になり、あちこちでその光跡が観測されています。

BW3は実験機(プロトタイプ)であり、右下画像((C)AST SpaceMobile社)の様に板状のフェーズドアレイアンテナを敷き詰めた平面アーキテクチャが特徴です。大きさは8メートル四方(約64m²)、間取りなら40畳、土地なら20坪。こんな形状なので、地上からアマチュアの望遠鏡でもなんとか形が捉えられるそうです。

今宵たまたま私宅上空でほぼ天頂通過だったので、カメラを用意してまっていました。ところが日没と共に雲が増えてしまい万事休す。それでも定刻にシャッターを切り続けていたらたまたま雲間から数コマとらえることができました(左画像)。

形状は先日観たNASAの宇宙ヨットACS3(約9メートル四方)に似てますが、BW3はアンテナ面を地上に向けっぱなしですから明滅は無く、安定した光り方です。左上画像は上方向が北で、画像中心のアルビレオ(βCyg)の少し北側で最高高度=最高光度でした。雲が邪魔で見えなかったけれど、見えた範囲ではデネブより暗くアルビレオよりずっと明るかったです。Heavens-Aboveの予報光度1.7等と言うのはほぼ合ってると思いました。今日を含めて三日間の高高度パスが続くので、明日・明後日も見てみようと思います。

Blue Walker3
ところでAST SpaceMobile社はつい三日前の9月12日にBW3そっくりな実用機「Blue Bird」を5基まとめて打ち上げました。同じBlueの名で「あれっ?」と思ったら、こちらは実用機だったんですね。いよいよダイレクトモバイル通信事業に乗り出すようです。「Blue Bird A」から「Blue Bird E」まで、衛星番号はそれぞれ61045から61049まで連番、14日時点でCelestrak.orgなどから軌道要素が入手可能、つまりプラネソフト等で追いかけられます。明日朝には幅30°+α程度で並んで飛行する低空パスがあります。空の条件が整ったところでは1等台の明るい『Blue Bird Train』が見えるかも知れません。将来的に数千基レベルの打ち上げが予定されているようで、あちこちに一等級の衛星が飛び交う時代になると考えると憂鬱です。

なおスターリンクもモバイル通信用の衛星が半年以上前から打ち上げ始まっており、DTCタイプ(Direct To Cellphone)と呼ばれています。Heavens-Above予報サイトなどでは衛星名にDTCが付与されているので区別がつきます。近年のスターリンクトレインは青っぽく見えますが、あれもDTCの特徴らしい。通信特性上、モバイル用衛星はあまり高く上げないことが予想され、Blue BirdシリーズもスターリンクDTCも500km未満(大抵は300-400km程度)で運用されるようです。つまり、地上から見ると「より明るい」ということですね。はぁ…。

スターリンク高度分布
(追記)参考までに14日現在のスターリンク遠地点高度(地面からの高さ)分布を図化したので左に掲載しておきます。DTCタイプは低めの軌道に設定してあることが一目瞭然ですね。近地点高度との差は最小0.030km、最大41.181km、平均2.227kmで、全機がほぼ円軌道と見なせるため省略。

左図を見る限り、何十もの衛星を一度に予定高度に打ち上げても、軌道を離脱して高度を下げてしまう衛星が新旧問わず一定の割合で存在することも分かります。