月面のQuincunxを観察2024/03/20

20240319_Quincunx
18日夜に見えるはずだった「マギヌスの魔女」など月面の名所探索はあまりの強風で断念しましたが、昨夜19日夜は穏やかで、ゆっくり堪能できました。中でも「Quincunx」と呼ばれる五つの光点が良いタイミングでした。

カタカナで書くと「クウィンカンクス」になるでしょうか。一般には五つの点が作る模様のこと。と言っても五芒星の頂点のような円周的配置じゃなく、四方向に四点と真ん中に一点の合計五点。ちょうどサイコロの五の目のようなものです。(※占星術では同じ単語が別の意味で使われますからご注意。)

月面のQuincunxはコペルニクス・クレーターのすぐ北西に位置します。自前計算では昨夜22時ごろ見える予報でしたので、20時過ぎから観察を始めました。シーイングは細かな揺れが目立ちましたが、大揺れはやや少なかったです。ただ、宵から夜に向かって大幅に気温が下がり、子午線通過も相まってピントが狂いました。

コペルニクスはちょうど明暗境界にあって、内部が真っ暗。22時前には五つ+αの点が出揃い、だいたい計算通りに進行してくれました。左画像は22:00撮影画像。黄色の点線円がQuincunxです。また21:30から30分おきに22:30まで撮影した三枚を下A・B・C画像に並べました。周囲に余分な光点があるけれど、ちょっとひしゃげた五点形が少しずつ現れる様子が分かるでしょう。真ん中がずれているところは大目に見てくださいね。開始ごろは特に西側(影側)がかなり暗く、露出をのばすか感度を上げないと気付けません。下A画像は一見揃ってないように見えますが、最後のひとつ(北西の角)も光り始めていますよ。

20240319雨の海付近
元々こにはゲイ・リュサックから西へのびるカルパチア山脈があり凸凹の多い地形です。だから太陽光が射し込むとあちこちの山頂が一斉に光り出し、点の大きさも広がっていく見え方になります。近年は「月面N地形」が少しずつ浸透してきましたが、Quincunxは下D画像(2022/5/10撮影)のとおり、月面Nや月面Iの一部も入っています。月面のQuincunxは少なくとも十年以上前から知られていたようです。

今回の観察を元に補正して計算すると、向こう3年ほどの間にQuincunxが見え始める日時は次の通り。月高度が極端に低いケースは省きます。(上弦側のみ書き出していますが下弦側でも似た見え方をする可能性があるため今後検証するつもりです。)
2024年5月17日21:30・7月15日19:24・9月12日18:36・11月10日21:12・2025年04月07日18:51・2025年11月29日19:51・2026年12月18日18:23

カルパチア山脈だけでなく、コペルニクスの南にも極く小さな点状の山並みが連なっており、お皿に盛っていた米粒をぶちまけてしまったような、あるいは手おけから滴る水滴のように見えます。南北共に小さな点がらわらわ光り出す様子がとても面白い月相でした。それから撮っているときは気付かなかったのですが、右下にグルイテュイゼンの月面都市が写り込んでいました。欠け際から離れてしまったので影が薄いけれど、まだ葉脈模様が感じられますね。

コペルニクスとプラトーに挟まれた雨の海も日が当たり始めていました(右上画像)。背の低いリンクルリッジもそこそこ見えています。欠け際近くに溶岩流が写っていますね。プラトーの西にある直線山列も明暗境界で、影が多過ぎてスカスカに見えました。もう少しシーイングが良いと良かったのですが…。

  • 20240319_2130_Quincunx

    A.21:30
  • 20240319_2200_Quincunx

    B.22:00
  • 20240319_2230_Quincunx

    C.22:30
  • 20220510月面NとQuincunxの位置

    D.月面NとQuincunxの位置


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