もうすぐ小惑星Leonaによるベテルギウス掩蔽2023/12/11

20231211ベテルギウスに接近する小惑星Leona
今日朝現在、太陽を周回する小惑星は1338195個発見されています。その多くはここ20年くらいに発見された直径数十m以下のものですが、天文アマチュアが発見に貢献した1980年ごろからの20年間は、小型望遠鏡+フィルムで撮影できるくらいの大きいサイズで占められました。このころはまだ小惑星番号が4桁だった時代。総数が10000個を超えた等というニュースに驚いていましたから、三桁も違う現在を想像もできませんでした。

これだけ多ければ小惑星が遠方の恒星を隠す、いわゆる掩蔽現象(一般には恒星食と言われることが多い)が頻繁に起こっているだろうと容易に想像できるでしょう。実際、年間で何百回もの予報が出されています。たいていはターゲットの恒星が暗いケースが多いけれど、ごく稀に明るめの(…といっても望遠鏡必須)掩蔽もあります。観測経験を持つ方もいらっしゃるでしょう。これもアマチュアの貢献が大きい分野。「面的」に配置した多数の望遠鏡で掩蔽観測することで、その小惑星の形が分かってしまうのですから実にエキサイティングですね。

「2023年12月にオリオン座のベテルギウスが掩蔽される」というニュースを聞いたときは本当に驚きました。明るいにも程があるだろうという事例で、一生に一度のレベルでしょう。HAL研の早水勉さんの資料によれば過去にレグルスやポルックスなどの事例があったようです。黄道に近い恒星はメインベルト小惑星の通り道でもあるため、明るさに関わらず掩蔽される確率が格段に高いというわけですね。

20231212LeonaによるαOri掩蔽図(IOTA)
今回ベテルギウスを隠すのは小惑星Leona(319)。ベテルギウスは「大きさ」を持って見える巨星ですが、偶然にもLeonaを地球から見た視直径もベテルギウスとだいたい同じだそうです。ただしLeonaは別の掩蔽観測で楕円状に見える断面があると分かっているため、自転の状況によっては完全に隠すのか、金環食になるのか、当日観測してみるまで分かりません。日本からは見えないのは残念ですが、中継もあるようなので期待しましょう。現象は明日12日10:08JSTから10:26JSTの間とのこと。(注:時間をかけてゆっくり明滅するのではなく、暗くなるのは数秒間だけです。現象時間に幅があるのは「観測位置によって起こる時間が異なる」と言う意味です。)

昨夜は雲が多かったのですが、夜半過ぎまで少し雲間があったため、ベテルギウスと小惑星Leonaをツーショットで撮影してみました(冒頭画像)。移動軌跡がもっと線状になるまで露出したかったけれど10分あまりで雲に阻まれました。Leona自体は三桁の番号がほのめかす通り、かなり早く(1891年10月)に発見された大きいメインベルト小惑星。現在は14等前半と明るく、10cm台の望遠鏡で難なく写ります。明日の現象を過ぎても数日はベテルギウスとツーショットの撮影が可能でしょう。右上図はIOTAの資料からの引用で、掩蔽予報図です。米国フロリダ南端では東に登ったオリオン座、カスピ海付近では西に沈みつつあるオリオン座で現象が見えます。一瞬だけベテルギウスを失ったオリオン座を見ることになったら一生の記念になるでしょうね。許されるなら現地で見たかったけれど…。

このような予報には極めて正確な小惑星の軌道計算が必要です。小さな天体は単純な楕円軌道を回っているわけではなく、惑星の引力も受けています。互いに刻々と位置を変える惑星と小惑星との力関係を何年も積み重ねて今の位置に存在しているわけですから、気の遠くなる精度の計算と修正、検証が大切です。また、観測者の立つ地球の運動とか時間管理(地球自転のふらつき等)も注意を払う必要があります。この分野で長年地道に活躍しているみなさんに敬意を表します。

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