アンペール山の二つ星はふたつじゃなかった!2023/12/21

20231220マギヌス、ヴァルター、シュテフラー
昨夕は月面でいくつかの現象が予報されていましたが、残念なことに月がある南の空だけなぜか雲が取れず、まともな観察は無理でした。それでも何とか記録を残そうと、「マギヌスの魔女(マギヌスRay現象)」および「アンペール山の二つ星」に絞って観察・撮影を行いました。

天頂より北の空は雲ひとつない快星だったので、機材設置と極軸合わせは難なくできました。17:30ごろから約3時間、ほぼ出ずっぱりで雲とにらめっこ。時々やって来る「雲の薄いところ」を撮り繋いでいきました。記事内画像の一部は雲の影響でスタックエラーを起こしているところがありますがご容赦を。

マギヌスRayそのものは観察始め頃から見えていましたが、魔女の顔らしくなってきた(目のあたりまで光が届く)のは20時前後でした。左画像は20:24ごろの撮影、右下画像は左画像からマギヌス付近をトリミングし、右に90°回転させて顔が分かるようにしたもの。周囲のクレーターの様子も分かるよう、輝度レベル調整は最低限にしてあります。

20231220マギヌスの魔女
シーイングは2-3/10程度と良くありませんでした。正直なところ雲越しだからもっとボケボケになるだろうと思っていたのですが、意外に細部まで炙り出せてビックリしました。3:39に上弦、月面X&LOVE地形は既に出そろっています。画像内にはすっかり明るくなったX、L、O、Eが確認できるでしょう。欠け際のクレーターは内部に独特の陰影ができますから、マギヌスだけでなく、周囲の様子もお楽しみください。

秤動は南極側に不利な状態で、日が当たり始めたモレトスが縁に近くて潰れています。満月頃になればもっと縁から離れます。本日21日は日没前後からヘシオドスRay現象が起きますので、晴れている地域でお時間が取れる方は望遠鏡を向けてみてください。ただしヘシオドスそのものは直径50kmに満たないクレーターで影側にあるため探しづらいですから、まずは隣接するピタトゥス(直径約100km)を探してください。

20231220アペニン山脈、蒸気の海、腐敗の沼
昨宵はもう一つ「アンペール山の二つ星」を観察。実のところこちらがメインの目的でした。2023年6月27日記事に書いた通り「北の星と南の星とで時間差が出るか?」を確かめる絶好のチャンスだったことと、「南の星の西側にもうひとつ星が出るかも知れない」ことを確認したかったのです。ここで言う「星」とは月面の暗い欠け際にある高い山の頂のみに日光が当たり、点状に光って見える状態を指します。

ところが思わぬハプニング(良い意味)が起きました。観察し始めの頃は雲で良く見えませんでしたが、18時台には確かに南の星のほうが視認でき、あとから北の星が見えだしました。また「もうひとつの星」は二つ星に先んじて早くから光りだしていました。

左画像は20:12頃撮影した「二つ星+もうひとつの星」を含むアペニン山脈周辺。また右下画像は左画像のトリミングと、17:44頃および18:47頃に撮影した同一範囲を組み写真にしたもの。20:12の赤矢印が二つ星です。18:47の青矢印が予想していた「もうひとつの星」。この時刻には二つ星のうち南側の星が既にうっすら写っていますね。ここまでは予想通りでした。

20231220アンペール山の二つ星付近
驚いたのは早い段階で別のふたつ星(緑矢印)が見えたこと。(注:ただし見つけた時点ですでに背景=山麓が若干明るくなり始めていました。)また20:12の画像で分かるように、オレンジ矢印のところにも星が。これで六つ星になってしまいましたね。更には、明るくなってきた青矢印の星の南西に暗い星がいくつか見え出し、全体がまばらな星団のようになってしまいました。

かなり小さな範囲ですから望遠鏡ありきの話ではありますが、腰を据えてじっくり観察すると、うわべの知識やシミュレーションだけでは決して得られない体験ができるのですね。このあたりはまだまだ面白い現象がひっそり起こっていると思われます。どんどん発掘してゆきましょう。

今日の太陽2023/12/21

20231221太陽
朝から良く晴れています。気温は10度を少し越え、いつもより若干暖かさを覚えました。ただ、昼ごろから少し風が出ています。

20231221太陽リム
左は10:10ごろの太陽。昨日から見えていた左下リム近くの黒点周囲は活動領域13531と採番されました。見えている領域数は14ヶ所。右下にプラージュが明るく見える13519(13516?)付近では、本日14:38をピークとしたM4.25クラスフレアが発生しました。プロミネンス・ダークフィラメントとも好調ですね。