木星の衛星を幾つ写せるかな?「ヒマリア編」2018/04/19

20180419ヒマリア
昨夜から今朝にかけて透明度が悪かったものの、一応晴れ間が断続的に続きました。幾つか超新星の出ている銀河を撮影しましたが、写りが悪かったり雲に邪魔されたり、はたまた建物に隠れてしまったり散々…。ブログにアップできるほどの成果は残せませんでした。代わりに、明け方間際に撮影した木星の衛星について記しておきます。

諸般の事情で数年前に機材を一新し軽量化を図りましたが、思いのほか暗い星も写せるようになりました。そうなると欲が出るもので、今まで望遠鏡を向けたこともないようなターゲットに挑戦するようになったのです。そのひとつに「木星の四大衛星以外の衛星を写す」という目標があります。ご存じのように木星には小型望遠鏡でも良く見える四つの衛星、別名「ガリレオ衛星」があります。でもそれ以外に多数の衛星が発見されており、今日時点では少なくとも69個リストアップされています。もちろんガリレオ衛星のようにはっきり見えるものはひとつもありませんが、いくつかは私の望遠鏡でギリギリ写る17等台より明るいものがあるのです。

今年の木星シーズンを控え何度か挑戦していたのですが、昨夜やっとひとつ写すことができました。それが左上画像の「第6衛星ヒマリア」です。この画像は2分×23枚の画像を衛星位置基準でコンポジットしてあります。約15等星の衛星ヒマリアは点像になっていますが、代わりに周囲の恒星は動いていますね。この「動き」にはもちろん衛星の木星公転も入っていますが、もっぱら木星系(木星と衛星全体)の太陽公転+視点である地球の移動によるものです。なお撮影範囲は右下星図(ステラナビゲーター使用)の矩形位置。木星からかなり離れています。

20180419ヒマリア撮影範囲
今回は久々に「複数ソースによるダブルチェック」という社会人スキルの重要性を思い知りました。今までの挑戦でなかなか写らなかった最大の理由は「四大衛星以外の衛星位置を正確に表示できる星図ソフトが少ない」ということです。私がひと昔前のハード&ソフトを使っているせいかも知れませんが、表示されていても間違った位置だったため写らないという苦い思いを何度も経験しました。あらためて別の星図ソフトで確認すると、位置が全く違っていたのです。

どの星図が正確なのか、どれも間違っているんじゃないか、何を持って正確さの担保とするのか、軌道要素などの修正方法はないのだろうか…等と不安になり、NASAのJPL-HORIZONSなどを何度も行き来しながら確かめていきました。結局私の手持ちで正確な位置表示ができたのはWindowsソフトのひとつ「Guide」だけです。と言っても確認できたのはまだ今回のヒマリアだけですが…。

201804木星衛星位置
それから、暗い衛星ほど空の透明度・大気の揺らぎ・光害の少なさなどの条件が大事になりますが、さらに前述のように「木星との離角」も大切です。実は暗い衛星を撮影する最大の敵(?)が木星自身の強烈な光なのでした。木星のすぐ側で長時間シャッターを開けっ放しにすると、強烈なゴーストやフレアが発生し、暗い星がかき消されてしまうのです。以前に火星の衛星を撮影したとき散々苦労しましたが、木星はもっと明るいです。この理由から、第5衛星アマルティアは明るいのに写せない(イオよりも木星に近い)という状況です。

四大衛星のうち木星に一番近いイオと一番遠いカリスト、そしてヒマリアの木星に対する赤経差(天の東西差)をグラフにしたのが左上図。これは全くの偶然だったのですが、ヒマリアは今の時期ちょうど木星から一番遠いところにいたので、あまり苦労せず写せたのでした。でも最初の画像を良く見ると右上にゴースト斑が出ていますよ。

挑戦はまだ始まったばかり。はてさて、あと幾つ撮影できるでしょうか?余裕のある方はぜひ挑戦してください。


参考:
木星の衛星を幾つ写せるかな?「パシファエ編」(2018/04/23)
木星の衛星を幾つ写せるかな?「エララ編」(2018/04/21)

今日の太陽2018/04/19

20180419太陽
久しぶりに太陽が撮影できる時間帯に日が差しました。13日以来ですね。でも雲が度々飛来して安定した撮影はできませんでした。

20180419太陽リム
左は10時過ぎの撮影。少し雲がかかっています。NOAAによれば活動領域12704は右上付近にあり、近くには12705も発生したようですが、この画像でははっきりしません。それよりも左端に小さく明るいフレアが出ているのが気になります。右リムもあちこちにかなりの数のプロミネンスが見えています。