夜明け前に黄道光を見よう2017/10/14

20131010黄道光と天の川
10月半ばを迎えると、明け方東の空にしし座が高く昇るようになります。今年は秋雨が続いてあまり晴れてませんが、当地・茨城の平均的傾向は10月半ばに晴れの出現率が5割を越え始め、以降高い晴天率が3月下旬まで続きます。

しし座が夜明けの東を飾るころ楽しみにしているのが「薄明直前の黄道光」。黄道面、つまり地球軌道面に沿って広がる太陽系微粒子の発光現象です。左は4年前の2013年10月10日明け方に撮影した黄道光と天の川。少し霧が出ていましたが、天頂に届くほど立派な黄道光が見え、涙が出るほど感動したことを覚えています。低空の人工灯が見苦しい画像ですが、上空では黄道光がおうし座付近まで伸び、天の川とX型に交差する「グランドクロス」と呼ばれる状態になっています。どこにどんな星座があるかは右下の説明画像をどうぞ。

黄道光は極めて淡いので、光害が少ない環境、透明度の良い空、そして月明かりのない条件が揃わなくてはなりません。また太陽に近いほど微粒子は明るいのですが、薄明薄暮の時間は見えなくなります。従って黄道光を見るのに最も適した時間は「天文薄明開始時の東の空」か「天文薄暮終了時の西空」ということになるでしょう。

20131010黄道光と天の川
ところがここまで条件を狭めてもまだ絞りきれません。実は見やすい時期、見にくい時期というのがあります。ひとつの地で観察するとき、天の赤道位置は月日が経っても変化しませんが、黄道は月日どころか時刻によっても位置がどんどん変わります。星座の中に引かれた線そのものが変わるのではなく、日周の極軸と黄道の極軸が異なることによる見かけの変化ですね。

天文薄明開始時の東を考えてみましょう。大雑把に春夏秋冬を調べると、秋の明け方の黄道は地平線に対して急角度で立ち上がっていることが分かります(下A図)。反対に春は傾斜が緩やかですね(下B図)。宵の場合は季節が概ね逆になります。地平に対する黄道の傾斜が小さいと黄道光は低くなってしまい、低空の霞や光害の影響を受けて見えなくなってしまうでしょう。だから、角度が大きくなる時期を注意深く探す必要があるのです。

かくして冒頭の話につながります。夜明けにしし座が登り、関東で冬型の気候が始まるこの時期は、まさしく黄道光観察の最適期なのでした。しし座の1等星レグルスは黄道に一番近い1等星としても知られます。山奥や孤島でもない限り、黄道光が良く見えると言う場所は国内で限られるでしょう。見えるという場所でも上記のように季節と空の条件、天候がピタリ一致する日は年間にそう多くないと思います。だからこそチャレンジし甲斐があるというもの。

参考までに、天文薄明開始時/天文薄暮終了時における地平と黄道の関係(A・B図の扇型で示した角度や方位)が年間でどんな変化をするか、プログラムを作ってグラフにしたのが下のC・D・E図。地理的な比較ができるよう茨城県つくば市、沖縄県那覇市、北海道札幌市それぞれで計算しました。多くの天文解説では黄道の傾斜ばかり注目して見やすさを判断してますが、光害方向に重なってしまうなどの理由で、傾斜よりも方位が重要な場合だってあるかも知れません。みなさんの観察や考察の参考にしてください。(※沖縄では黄道がほぼ垂直にそそり立つ時期があるんですね!→正確には北回帰線上=北緯約23.4°より低緯度側で垂直となる日が現れます。)

  • 秋の明け方の黄道

    A.秋の明け方の黄道
  • 春の明け方の黄道

    B.春の明け方の黄道


  • 地平線に対する黄道の年変化(那覇)

    C.沖縄県
  • 地平線に対する黄道の年変化(つくば)

    D.茨城県
  • 地平線に対する黄道の年変化(札幌)

    E.北海道


  • 星図はステラナビゲーターで作図しました。Aは10月20日の天文薄明開始時刻、Bは4月20日の天文薄暮終了時刻を例にしています。
  • グラフは地平線と黄道の交点に注目したものです。明け方の場合は東側の交点、宵の場合は西側の交点です。交点は反対の方角にもうひとつありますのでご注意。
  • グラフ左縦軸は地平に対する黄道の傾斜(立ち上がり角)、つまりは黄道面と地平面が作る角度のことです。南側から測るので、東側と西側とでは測る向きが逆になります。
  • グラフ右縦軸は地平と黄道の交点の方位に注目し、明け方の場合は真東との方位差(0°=真東)、宵の場合は真西との方位差(0°=真西)を表します。どちらも北を正方向にしました。
  • グラフは2017年の計算結果ですが、他の年でもほぼ同じです。


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