土星の環の傾きが最大になりました2017/10/17

20130719探査機カッシーニによる土星と地球
2017年の夏は日本の空で土星が低くパッとしませんでしたが、探査機カッシーニのおかげで毎日のように土星の話題を目にしました。左画像はNASAサイトからの引用で、4年前の7月に探査機カッシーニが撮影した土星と地球(矢印の星)のツーショット。生きている内にこんな映像を見ようとは思いもしませんでした。私たちは逆の立場、つまり地球の上から土星を見ているのですね。

実は今日、その土星の環が地球から最も開いて見えます。土星の環は存在感ある直径と比較して、厚みがほとんどありません。真横から見ると見えなくなるほど。幸い土星の自転軸は地球並みに傾いており(約26.73°)、土星の1公転・約30年の中で地球から環が見えないのはほんの数日。大部分の日は環がきちんと見え、なかでも最大に傾く(開く)日が今日というわけです。「最大に傾く」という状況を右下図で考えると、赤矢印で示した角度が土星の北極方向(プラス)に最大となるとき、および南極方向(マイナス)に最大となるときの2種類があります。

20171017土星の環が最大に傾く
ところで、ほとんどの天文解説書には「環が最大」あるいは「消失」するのは土星公転の半分、つまり約15年に一度の周期で起こると書かれています。ですが、それほど単純ではありません。なぜなら視点である地球が1年周期で公転するからです。土星公転面がわずかながら地球公転面に対して傾いていることも原因になるでしょう。

一例として2017年に地球から見た環の傾きがどのように変化したか、具体的に計算してグラフにしました(下A図)。前述の土星自転軸傾斜角を中心に、微少ながら4月半ばに下がり10月半ばに上がっています。このような年変動(正確には会合周期ごとの変動)が内在するのです。期間を拡張して今年中心に前後計30年間、つまり2002年から2032年まで計算すると下B図のようでした。15年で極小から極大、また15年で極大から極小、という単純な増減ではありませんね。A図はB図の小刻みな振動の一部を拡大したものでした。今日は今年のピークだけでなく、この30年でもっとも北側から土星を眺めることになります。

土星は11月上旬くらいまで、日没後暗くなる前の南西低く輝いています。もし晴れたら眺めてくださいね。

  • 土星の環の傾き・2017年

    (A)
  • 土星の環の傾き・30年間

    (B)


【環の傾きを示す中央緯度とはどこの角度?】

回転楕円体の緯度
地球から見た土星中心(中点)に相当する位置を「土星表面に設定した緯度」で表したものを中央緯度などと呼びます。上の図で赤矢印の「環の傾き」はこの緯度のことなのですが、では惑星の緯度ってどこを測った角度なのでしょうか?完全球体ではない惑星の緯度は注意が必要です。一般に惑星は球体ではなく回転楕円体で近似されるので、表面に立ったときの法線は両極と赤道以外は惑星中心を通りません。だから表面の水平垂直を基準にした緯度(惑理緯度/地球なら地理緯度)と、惑星中心から赤道面に対して測った緯度(惑心緯度/地球なら地心緯度)は少し異なるのです(右図参照)。

地図で地形や天体模様などを示す緯度と言ったら特に断らない限り惑理緯度で表しますが、対して当記事で「環の傾き」としたのは惑心緯度のこと。木星や土星などの「つぶれ具合」が大きな惑星では2つの緯度差が大きくなるので注意深く使い分けなくてはならないでしょう。国立天文台サイトの暦計算室・惑星の自転軸で土星の中央緯度を計算してみると、上のグラフより少し大きな値となります。暦計算室サイトで示されているのが惑理緯度だからです。双方の緯度は三角関数を使った変換式で相互変換できます。

普段私たちが「天頂」と指さす方向、錘を吊した向き、水準器を使って分かる水平方向、北極星を使って合わせた天の北の仰角、太陽南中高度から測った緯度、GPSの数値、地図で読み取っている緯度経度……。様々な数値はいったい何を示しているのか、右上図でもう一度整理してみてください。ついでに言うなら、幾何学的な楕円体中心と重力中心が一致するとは限りませんし、地軸が公転軌道(楕円)上を通っているとも限りません。間違った思い込みをしていませんか?