押し寄せる雲間に月を観察2023/11/26

20231125アリスタルコス、マリウス、ケプラー
昨夜は木星と月が揃って登った頃はよく晴れていましたが、高くなると共に天気が下ってきました。シーイングは前夜より幾分良かったけれど、やはり冬の乱れた状態なので大差ありません。4シーン撮影したところで雲に隠れてしまいました。2枚掲載します。

左画像は前夜に少し見えだしたアリスタルコスから南方にかけて。少しプリンツ谷が取り出せましたがマリウス谷は一部しか分離せず。ドーム地形がたくさん見えました。約1朔望月前と比べて少し月齢が進んだ状態のため、ドームの陰影が弱くなってます。ライナー・ガンマが欠け際に見え始まりました。秤動が不利なので狭まっています。

右下画像は南半球、シッカルトやシラーあたり。月齢が進み、ヒッパルス谷の明暗は弱くなりました。右上角、キースも満月期はこんなに見辛いのですね。

ひと晩前のコペルニクスやエラトステネスで言及しましたが、シッカルトの内部もアルベドの異なる大柄な模様があります。カラーで撮ると色が違うので、組成が異なるのでしょう。画像右下、月の縁にバイイ内部のごく一部が星のように見え始まっていました。ここから南極辺りまで別レイアウトで撮りたかったのですが、雲がやって来てジ・エンド。

20231125シッカルト、シラー、ハインツェル
シッカルトの南側にワルゲンティンが写っています。欠け際で光が弱いので、これを明るく処理してみたのが下A画像。解像度が低くて申し訳有りませんが、クレーター内の東側から南側にかけて独特の(鉤爪状の?)陰影が出ていますね。内部を走るリッジの影も見えています。「月世界への招待」サイトの東田さんの日記で、2023年10月12日記事にこの不自然な影について興味深い記述があります。下A画像をよくよくみると、クレーター東壁からの影は一般的な「立ち並ぶ木々のシルエット」のようになっておらず、途中で途切れて、その先でふたたび影を為しています。常識的に考えて影が飛び飛びになることはあり得ないので、途切れて舌状に光っているところにごく低いリッジまたは丘があるのだろうと考える訳です。

私の画像では月齢が足りなくて影が多いですが、東田さんの画像や、元記事となったLPODの画像ではかなりクネクネ入り組んだ影が見られます。まさにバットマンのマーク。どうしてこんな妙な影になるのか、どういう条件なら見えるのかを探るため、少し前に細かくシミュレートしたことがありました。ワルゲンティン指定位置から見た太陽高度が概ね1.4°から1.5°にあるときにこのような影になると分かりました(下B画像)。ただし高緯度ですから、月面での太陽方位も影響がある気がします。

昨夜の撮影時刻では約1.31°でしたから、少し影が多かったという事実と合致します。雲が無くてもう30分ほど遅く撮っていたら条件に合っていたでしょう。とはいえ、秤動もシーイングも悪い環境では解像しなかったかも知れませんね。次の好条件は来年2024年1月23日23:21ごろ、4月21日20:20ごろ、6月19日21:43ごろ…と続きますので、また観察したいと思います。

  • 20231125ワルゲンティン

    A.25日夜のワルゲンティン
  • ワルゲンティン陰影シミュレート・上弦側1.40度

    B.陰影シミュレート(1.40°)


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