昼間の国際宇宙ステーション月面通過2021/11/01

20211030国際宇宙ステーションの月面通過
10月末から11月初日にかけてぱっとしない天気が続きました。そんなおり届いたのが古くからの星仲間が捉えた「国際宇宙ステーションの月面通過」。しばらくご無沙汰だった人工衛星現象の画像に心が明るくなりました。

ご本人の了解を得て左に掲載します。場所は愛知県で、10月30日9:46過ぎの現象でした。つまり、夜の撮影画像みたいに見えますが本来は青空。西の中空に浮かぶ白い月なのです。(モノクロモードで撮影したとのことでした。なお画像の向きは撮影時そのままにしてあります。)

20211030国際宇宙ステーションの月面通過
中心ライン近くでの観測なのに中心を通らなかったそうです。観測位置情報と当日観測時刻に元期の近い軌道要素から通過位置を計算してみると右図のとおり、ほぼ予報通り飛んでいます。つまり中心ライン予報そのものがずれていたことになります。大雑把な計算では、北へ800mほど移動すればほぼ中心を通ったことでしょう。

月の明るさよりISSのほうがはるかに明るいというのも見どころですね。双眼鏡や望遠鏡による眼視観測なら(動体視力が追いつけば)見えたかも知れません。

月面そのものにも特筆すべきことがあります。実は10月29日から11月2日にかけて、ちょうど月の裏側にあるオリエンタレ盆地(東の海)がこちらを向く最大の秤動でした。特に測心秤動で考えると西空低くなるころ経度秤動がぐっと増すので、この画像でも上やや左寄りリム沿いに大きな凹みのように写っています。ISSもさることながら、私はオリエンタレ盆地の写りに感激してしまいました。

今年の水平月はラストチャンス2021/11/02

20211102-31865月
昨日から今日未明は曇り時々小雨の天気。ところが、まったく期待してなかったのに明け方が近づいてきた頃から少し晴れ間が出てきました。

今週前半はいよいよ今年最後の「明け方の水平月」です。ただし本州の大部分や北海道では9月や10月がピークでしたので、11月初めの月はもう水平に感じないかも知れません。これらの地域では実質的にもう終わっていると言えるでしょう。九州南部から南西諸島にかけてはまだしっかりと水平月を楽しめると思います。

左は今朝5:10過ぎの月。太陽黄経差は約318.65°、撮影高度は約29.8°、月齢26.38。カメラ内蔵の水準器により左右を水平にしてあります。カスプを結ぶ弦の傾斜は-10.66°(マイナスは右下がりの意味)に達しており、もう水平とは感じられません。登ったばかりだったら-7°程度だったのですが…。天気ばかりはどうにもなりませんね。11月1日記事で触れた「オリエンタレ盆地」は秤動が戻りつつありますがまだ何とか見えていますよ。明日は東の海がリムにかかってしまうでしょう。

明後日11月4日なら、当地・茨城県南部では弦傾斜が-5.5°ほどになり、かなり水平に近くなります。すぐ近くには水星も見えるでしょう。九州南端の佐多岬あたりをゼロライン(完全に水平となる地点)が通っていますから、お近くの方はぜひ早起きしてご覧になってください。低空・海面上まで完璧に晴れればまさに「太平洋に水平に浮かぶ月の舟」を見ることができるんですけれどね。なお今日以降三日間とも、奄美大島以南は逆転月になります。

天気に恵まれなかったり起きることができずに見逃してしまっても、また来年8月・9月に起こります。めげずに楽しみに待っていてください。

参考:
横たわる有明月を観よう・Part1(2021/08/31)
横たわる有明月を観よう・Part2(2021/09/01)
いよいよ有明月が横たわってきた!(2021/10/03)
更に水平に近くなった夜明けの月(2021/10/04)
例えようがないほど素晴らしい水平月(2021/10/05)

今日の太陽2021/11/02

20211102太陽
昨夜から今日明け方は曇り時々小雨、のち一時晴れ。朝から午前中いっぱいもやや雲が多い空でしたが、徐々に青空優勢になりました。

20211102太陽リム
左は13:20頃の太陽。またしても黒点を伴う活動領域が増えていました。三日前北半球中央にあった黒点周囲は12892、そして左上に現れていた黒点を伴う12893。この他に継続中の12887、12888、12889、12891があります。

中央やや上の12891は以前から活発でしたが、昨日は10:40JSTごろM1.56クラスのフレア、今日は12:00JSTごろM1.71のフレアが発生し、この画像を撮影した時刻もまだC6クラスを上回るX線フラックスでした。もう少し早く雲が立ち退いでくれたらMクラスを観察できたのに…残念。

左上には細長いプロミネンスが見えます。右上にもやや背の高いものが見えていますね。

やや水平になった月と彗星を楽しむ2021/11/03

20211103-33181月
昨夜は夜半すぎまで晴れたり曇ったり、落ち着いて星が見えないまま時間が過ぎてゆきました。夜半すぎからは徐々に曇り時間が減ったため、後述の彗星たちを撮影できました。

明け方に「水平に近くなった月」を観ようと思っていましたが、4時頃から再び大量の雲。それでもしつこく待機し、雲間から画像を得ることができました。かなりの雲量+低空で不鮮明ながら、丁寧にコンポジットして画質の悪さをカバーすることができました。

左は今朝5:05ごろの月。太陽黄経差は約331.81°、撮影高度は約14.9°、月齢27.37。カメラ内蔵の水準器により左右を水平にしてあります。撮影時の弦傾斜は-8.09°。昨日より「水平らしさ」を少しだけキープできました。ただしよく見ると分かるのですが、肉眼では右側のカスプがもっと上まで見えるのに、カメラを通すと極端に暗くなり右下がりが強調されてしまいます。

弦傾斜は見方で変わる
右は左上画像を反転強調したもの。計算上の弦傾斜(→弦は必ず月の見かけの中心を通る)に対し、特に細い月の場合は肉眼で見た傾斜や画像で表現した傾斜、つまり「見かけ上の弦傾斜(→弦が月中心を通ることはほぼ無い)」は変わってしまうのです。カスプ付近が地形の裏側(影側)を見ている、もともと輝度が低い、といったことに加え、画像として低輝度部分が表現しづらい、PC画面では見えづらいことなどが絡み合っているんですね。地球照がはっきりするくらい露光しないと水平月の良さ(?)は醸し出せないのかも知れません。

月が昇る前に撮影したのはシュヴァスマン・ヴァハマン第1彗星(29P)とチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P)。手間取っていた機器調整の最終段階を兼ねての撮影です。29Pはバースト後にどんどん大きくなり、現在はM97ふくろう星雲くらいになりました。67Pはモニターでもはっきり分かる明るさで、緑色のコマが美しいですね。尾もしっかり伸びています。

  • 20211103シュヴァスマン・ヴァハマン第1彗星(29P)

    シュヴァスマン・ヴァハマン第1彗星(29P)
  • 20211103チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P)

    チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P)