まだ黄砂が来ていない ― 2017/04/23
大陸からやってくる黄砂は3月から4月にピークを迎えますが、なんと今年2017年は「黄砂観測初日」もまだのようです。気象庁の記録が残っている1967年以降の初日最遅日は1972年の4月16日ですから、今日で1週間更新。予報では少なくとも数日は来ないようなので、まだしばらく最遅記録更新が続くでしょうね。
気象庁が黄砂観測をしている全国59地点の観測データが同庁のサイトから公開されています。日数表、のべ日数表もありますが、月まとめなのでピークを探るには分解能がやや足りません。そこで元データから日単位で集計し直し、グラフを描いてみました(左図)。1日1観測地点で黄砂が観測されたら1ポイントと数え、366日ぶんカウントしたものです。飛来量などは分かりませんが、「来たか来てないか」「全国何ヶ所ほど来ていたか」は分かりますね。この集計期間としては概ね4月上旬から中旬にピークがあるようです。もちろん年ごとにばらつく値ですから、あくまで統計上の話。
この集計データからもうひとつ、各数値の極値もまとめてみました(右下表)。早い年は元旦から黄砂が来ていたのですね。ただ、黄砂の統計を年始めで区切ることに意味があるか疑問も残ります。グラフを見ると10月以降年末近くまで観測例があるからです。また梅雨始めから10月頭まで観測が1件もありません。
※無観測期間は前年の観測終日の翌日から年をまたいで当年観測初日の前日までを該当期間として算出しました。(従って前年データがない1967年は含まれません。)なお無観測期間以外はすべて年区切りの集計です。
日本に前線や強い高気圧が停滞する時期は黄砂が来ないと言うことなのでしょうが、それなら黄砂の「年始」を秋始めに設定したほうがいいかも知れません。「秋→冬→春→夏」を1周期として見るなら、また違った感じ方、考え方も生まれると思います。積雪などの統計を年末年始で区切らないよう「寒候年」(前年8月から当年7月まで)を使うのに似ています。(この見方だと、右表「年区切りの観測期間最長記録」は無観測期間を内包するので、あまり意味がない数字だと分かるでしょう。)
2016年最後の観測日は5月8日ですから、もし今年このままゴールデンウィーク終わりまで黄砂が来なかったら、丸一年黄砂が来なかったことになります。既に350日経過しようとしていますから、右表の通り1967年4月-1968年3月の332日間を軽く抜いて最長記録更新中。記事冒頭に書いた最遅記録よりもこちらの記録のほうを注目すべきでしょう。
一般に黄砂は航空機などの視界を悪くしたり、健康に良くない、農作物や家畜被害、洗濯を汚すなどマイナスイメージで扱われますが、台風や洪水などと同様に「自然界に必要な環境撹乱」という見方も少なからずあります。一般に言われる諸悪説はあくまで人間社会的な偏った見方。「黄砂が来なくて良かった」と単純に考えず、今年この状況がもたらす因果の行く末を深く考えてみてはいかがでしょうか。(※その後の黄砂状況は5月6日の記事をご覧ください。)
【参考画像】
下左画像は2013年3月9日夕方の黄砂による無彩色の光環。当地・茨城では霞が少なく空の良い場所で知られる筑波山系から撮りました。この日は全国59地点中30地点で黄砂が観測されています。(※なぜか茨城県水戸市の観測はありませんでした。)下右画像は比較として4日前の2013年3月5日に同じ場所、同じカメラ、同じズーム倍率で撮影したものを掲載しました。太陽が写っている位置は違いますが、黄砂や霞などがない日はこの様に太陽周囲がすっきりと写ります。カメラの場合、レンズのゴースト、ハレーション、露出オーバーなどの要因で下左のように写ることも考えられますが、この日の巨大光環は肉眼でもはっきり見えました。
気象庁が黄砂観測をしている全国59地点の観測データが同庁のサイトから公開されています。日数表、のべ日数表もありますが、月まとめなのでピークを探るには分解能がやや足りません。そこで元データから日単位で集計し直し、グラフを描いてみました(左図)。1日1観測地点で黄砂が観測されたら1ポイントと数え、366日ぶんカウントしたものです。飛来量などは分かりませんが、「来たか来てないか」「全国何ヶ所ほど来ていたか」は分かりますね。この集計期間としては概ね4月上旬から中旬にピークがあるようです。もちろん年ごとにばらつく値ですから、あくまで統計上の話。
この集計データからもうひとつ、各数値の極値もまとめてみました(右下表)。早い年は元旦から黄砂が来ていたのですね。ただ、黄砂の統計を年始めで区切ることに意味があるか疑問も残ります。グラフを見ると10月以降年末近くまで観測例があるからです。また梅雨始めから10月頭まで観測が1件もありません。
【黄砂観測記録・1967-2016年調べ】
年間のべ件数が最小 | 1986年(14件) |
年間のべ件数が最大 | 2002年(727件) |
観測期間が最短 | 2003年(24日間) |
観測期間が最長 | 1976年(353日間) |
※無観測期間が最短 | 2013年(28日間) |
※無観測期間が最長 | 1968年(332日間) |
初日の最早 | 2014年1月1日 |
初日の最遅 | 1972年4月16日 |
終日の最早 | 1987年4月5日 |
終日の最遅 | 1993年12月26日 2009年12月26日 |
2016年最後の観測日は5月8日ですから、もし今年このままゴールデンウィーク終わりまで黄砂が来なかったら、丸一年黄砂が来なかったことになります。既に350日経過しようとしていますから、右表の通り1967年4月-1968年3月の332日間を軽く抜いて最長記録更新中。記事冒頭に書いた最遅記録よりもこちらの記録のほうを注目すべきでしょう。
一般に黄砂は航空機などの視界を悪くしたり、健康に良くない、農作物や家畜被害、洗濯を汚すなどマイナスイメージで扱われますが、台風や洪水などと同様に「自然界に必要な環境撹乱」という見方も少なからずあります。一般に言われる諸悪説はあくまで人間社会的な偏った見方。「黄砂が来なくて良かった」と単純に考えず、今年この状況がもたらす因果の行く末を深く考えてみてはいかがでしょうか。(※その後の黄砂状況は5月6日の記事をご覧ください。)
【参考画像】
下左画像は2013年3月9日夕方の黄砂による無彩色の光環。当地・茨城では霞が少なく空の良い場所で知られる筑波山系から撮りました。この日は全国59地点中30地点で黄砂が観測されています。(※なぜか茨城県水戸市の観測はありませんでした。)下右画像は比較として4日前の2013年3月5日に同じ場所、同じカメラ、同じズーム倍率で撮影したものを掲載しました。太陽が写っている位置は違いますが、黄砂や霞などがない日はこの様に太陽周囲がすっきりと写ります。カメラの場合、レンズのゴースト、ハレーション、露出オーバーなどの要因で下左のように写ることも考えられますが、この日の巨大光環は肉眼でもはっきり見えました。