好シーイングの土星と環を楽しむ2025/07/10

20250710土星
昨宵は霞が濃かったけれど、夜半前から朝にかけてとても良く晴れました。明け方が近づくとどんどんシーイングが良くなり、観察していた土星はかつて観たことがないくらい止まって見えました。

左画像は今朝3時ごろの撮影です(約38分のデローテーション)。環はまだ本体よりずっと暗いのですが、それでも明るくなったなあとしみじみ感じました。つい2ヶ月前は写真に撮って強引に強調しなければ見えなかったのに。早いもんです。間隙も無理なく写るようになりました。

撮影時における、地球から見た環の傾斜はマイナス4.44°。太陽から見た環の傾斜(=環から見た太陽高度)はマイナス1.17°。マイナスは「環の南面が見える」「南極方向へ向かって測る」というニュアンスですから、面の向きを間違う恐れが無いなら符号無しで話したほうが分かり易いでしょう。(※傾斜が年間最大などと言うのは絶対値が極大と言う意味です。マイナス符号をつける場合は「極小」も含まれます。勘違いしやすいポイントです。)

地球基準の傾斜は一昨日8日朝に今年最大傾斜になりました。これから晩秋に向かって少しずつ寝てしまい、11月24日にはマイナス0.45°と、ほとんど水平に近くなります。いっぽう太陽基準ではどんどん大きくなり、例えば11月24日ならマイナス3.69°。この頃の環は本体と同じくらいまで明るくなっているでしょう。今朝と全く違う「明るくて薄い環」になるのです。

2025年後半・土星の環と環の影
もうひとつ注目していただきたいのは、本体に投影される環の影。現在は環にくっついて見辛いのですが、環の南側と影との間に僅かな隙間があるんです。私の20cm程度の望遠鏡では全く分離しませんが、35〜40cmクラスの大口径で上手に撮っていらっしゃる方はちゃんとこの隙間を捉えていますよ。こればかりは口径の勝ちですね。

右にStellariumによる2ヶ月ごとのシミュレーションを並べてみました。今後この隙間は次第に見えなくなり、9月21日の衝を迎える頃は影と環とが渾然一体、さらに衝のため本体の影も見えませんから、「影無し土星」を楽しめるでしょう。

10月に入ると次第に環の北側へ影が投影されるようになります。年末から来年始めにかけて、明るくなった環とともに北側の影も良く見えるようになります。折りに触れてこの小さな変化をぜひお楽しみください。

【余談】
機材を片づけている最中に、北西から南の空に向かう金星並の明るい人工衛星が見えました。調べると国際宇宙ステーション。先月下旬にやっと打ち上げられたアクシオム4(AXIOM-4)が今ちょうどドッキングしているのですよね。

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