台風発生無し&空梅雨で関東は水不足2016/06/16

梅の実も熟する梅雨本番。茨城はそれなりに天気の悪い日が続くものの、まとまった雨はなかなか降ってくれません。どうしたことでしょうか。

首都圏の「水瓶」の8割を支える利根川系・荒川系のダムは、相変わらず減り続けているようです。それも並みの減り方ではなく、観測史上最大級の減り方だそうです。おかげで本日9時から利根川の10%取水制限が始まりました。少なからず生活に影響が出るでしょうか。

関東が梅雨入りした6月5日のブログ記事に関東圏のダム状況を掲載しました。同様のフォーマットで今朝の時点で公開されていたデータを下表に掲載します。たった10日程度しか経ってないのですが、利根川水系上流にある8つのダム(矢木沢ダム・奈良俣ダム・藤原ダム・相俣ダム・薗原ダム・下久保ダム・草木ダム・渡良瀬貯水池)の貯水量平均は58%から38%まで減りました。他水系のダムも増えたところはひとつもありません。

【ダムの状況・2016年6月16日調べ】
ダム数貯水量(現状)
(万立方m)
貯水率
(%)
平均値に対する割合
(%)
利根川水系18173553850
利根川水系2
(鬼怒川流域)
4112925280
荒川水系489366091
多摩川水系11597286111
相模川水系3207938197

※全て本日朝に公開されていた6月15日0時時点の速報値です。また多摩川水系のみ6月15日7時現在の速報値です。
特に減り方が激しい利根川上流8ダムについてはこの表だけだと深刻さが分からないので、平均貯水量(平成4年から27年までの平均)と今年2016年の貯水量を、下図のようなグラフにしてみました。(6月18日追記:国土交通省・水文水質データベースに掲載されている貯水量履歴を使って描画し直しました。グラフが途切れているところは8ダムのいずれかで履歴が揃わなかったため空欄としました。利根川ダム統合管理事務所サイトでは同様のグラフが途切れること無く公開されています。)

これを見ると「何かの間違い?」「ダム底の栓が抜けたんじゃないか」と目を疑うほど急な下降線をたどっていますね。平均を下回ったのは5月10日-15日付近で、以来一度も復活することなく減り続けています。調べた限り過去にここまでの傾斜で減った年は見当たらず、このまま雨が降らなければ夏を迎える前に危機的な水不足となるでしょう。ちょっと大雨が降ったくらいでは持ち直しそうにありませんね。

2016年利根川上流8ダム貯水量推移
生活に必要な水だけでなく、ダムは農業用水にも使われています。水が無ければ作物を育てられませんから、夏以降の野菜の出荷量などに大きな影響が出ることも考えられますね。ダムの貯水量が少ないことが直ちに水も飲めなくなる事を意味する訳ではありませんが、少なくとも「夏の渇水期を迎える前に、既に貯水が大幅に減るほど水に恵まれない天候」なのは確かで、それは今も続いています。いったん不足した水は容易に回復しないので、直接的・間接的、多重に私たちを苦しめます。

頼みの綱となりそうな台風も、いまだに発生していません。4月29日の記事にある「台風1号発生の遅さランキング」をご覧頂くと、今日台風1号が発生したとしても1981年以降の記録としてはトップ3。しかも、発生した台風が水不足地域に上陸するとは限りませんから皮算用です。私たちに必要な水は「天の神頼み」に近い状態なのですから。

このような気候変動の原因のひとつと言われているのが「エルニーニョ現象」。名前は良く聞きますね。気象庁サイトの解説によると「太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象」とのこと。また同海域が長期間低くなるのは「ラニーニャ現象」。

エルニーニョで注目される海域はペルー沖の赤道直下、ちょうどガラパゴス諸島付近を含む海域です。ここが暖かいと巡り巡って台風が発生しにくくなるとのこと。また夏は西・北日本で冷夏になりやすいとか、冬は東日本で暖冬になりやすいなどの傾向があります。

エルニーニョ監視域の温度変化
あくまで確率の話ですが、エルニーニョ・ラニーニャの時期の気象傾向は、それぞれ気象庁のここここに解説されています。

右は気象庁がエルニーニョ現象を監視している海域(NINO.3)について、月ごとの観測海水温と基準値との差を1950年1月から今年5月分までグラフ化したもの。水色線は温度差そのもの、また赤線は5ヶ月移動平均値です。この赤線が0.5度(図中の黄色横線)以上になり、かつその期間が6ヶ月以上続いた時を「エルニーニョ現象が起こった状態」と具体的に定められています。(ラニーニャ現象の場合は5ヶ月移動平均値が-0.5度以下・6ヶ月以上。)

グラフを見ると、2014年7月頃に始まったエルニーニョ現象が延々2年近くも続いていたことが分かります。ここ数ヶ月は急速に温度差が下降していますから、今年夏にはエルニーニョが終わりそうなことも分かります。過去にも突出したエルニーニョ期間、例えば1983年前後や1998年前後のグラフ上昇が確認できますが、いずれも前出の「台風1号発生の遅さランキング」表トップ3に入っている年号なのは偶然と思えない……。今夏のエルニーニョ現象終了が台風をどれほど生み出すか(あるいは生み出さないか)分かりませんが、水不足だけは解消してほしいものです。

参考:
まだ梅雨明けてないのに深刻な水不足(2016/06/18)
→※8ダムそれぞれの貯水量と流域雨量のグラフがあります。

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