尾を伸ばす西村彗星2023/09/03

20230903西村彗星(C/2023 P1)
明け方の空を飾っている西村彗星(C/2023 P1)が長い尾を伸ばしています。左画像は今日3日明け方の撮影で、プレセペ星団に並んで彗星が見えました。街中の我が家からは街灯と障害物だらけの方向で、この画像も隣家の屋根(下の影)と電線(上の影)の隙間から撮ったもの。

プレセペ星団と言えば、約一ヶ月前に太陽方向にあり、太陽観測衛星SOHOの写野内を通過していました(下A画像/SOHOサイトから引用)。だから奥行きの遠近はともかく、見かけ上は太陽にかなり近いということが感覚的に分かるでしょう。彗星の光度は6等台後半、左画像に写っている尾の長さは約1.6°。

おなじみMichael Jaegerさんの2日撮影画像または動画を見ると単調に真っ直ぐ伸びている訳ではなく、0.5°を超えた辺りで広がりながら大きくカーブし、くびれやコブ、千切れなど濃淡を伴いつつ2.5°ほど伸びている様子が分かります。尾の状態は淡く刻々と変化すると思われ、できるだけ空の条件が良い場所での観察が望ましいことは言うまでもありません。

今週は前線や台風の影響が広範囲に及びそうで、明け方超低空まで晴れるチャンスがなかなかないかも知れません。西村彗星をご覧になりたいなら、一瞬の晴れ間でもすぐ観察できる体制をとっておきましょう。

昨夜から今朝は雲が多く、もともと天体観察は諦めていました。夜半過ぎに空を見ると薄雲越しに月が見えたので、月面なら観察できるかもと望遠鏡を出しました。下B画像は3日01:30過ぎの撮影で、太陽黄経差は約216.71°、撮影高度は約58.96°、月齢は17.29。薄雲越しに撮ったので、原画のコントラストは弱いです。

明暗境界を見るとメッサラはもう真っ暗、エンディミオンはわずかなRayが残っています。危難の海も半分は夜、四大火口列もことごとく闇に呑まれています。レイタ谷がはっきりしました。ジャンセンやアルタイ断崖も影ができ始まっています。これくらいの月相では南部のクレーターやアペニン山脈あたりがのっぺりして面白味が半減してしまうけれど、この状態を知っているからこそ影のある時期が活きるというもの。明るいところもしっかり見ておくと良いと思います。

このあと曇るかと思いきや、薄明開始前ごろ晴れる兆しが感じられので、急きょ西村彗星も観察した次第。慌ただしい夜明けのひとときでした。

  • 太陽観測衛星SOHOに写ったM44

    A.8月3日・SOHO画像
  • 20230903_21671月

    B.3日未明の月


今日の太陽とハロ現象2023/09/03

20230903太陽
今朝まで不安定ながら時々晴れ間を保ってくれた空模様。今夜から明日にかけてまとまった雨になる予報で、朝から雲多めです。雲間が残っているうちに太陽観察を済ませました。午後も日差しが続いたものの、薄くベタッとした雲が取れなくなりました。

20230903太陽リム
左は10時ごろの撮影。目立つ黒点がどんどん減ってしまい、「えっ、第25太陽周期はこれで終わり!?」と思ってしまうほど静穏になりつつあります。花火大会の最後のようです。まぁでもここ三日でMクラスに届いたフレアが3回も起こりましたから活発なのでしょう。右上の明るいプロミネンスは多分活動領域13413付近のもの。南極域の“襟巻き”プロミネンスはひょっとして一周巻いているんでしょうか?下から見てみたい…。

気象庁アメダス速報値の本日0時から15時までの集計による夏日地点数は906、真夏日地点数は658、猛暑日地点数は69。今週まとまった雨が降れば少し涼しくなって水不足も解消されるでしょうか。

20230903幻日
【追記】
日が傾いた頃、台風を思わせる雲の流れの中に明るくて大きい幻日が見えているのを発見しました。太陽左の幻日(右画像/雲の合間に光ってます)だけで、右は適切な雲がなかったからなのか、見えませんでした。またこのとき、ごく淡い環天頂アークも見えていました。デジカメでは写し取れないくらい淡かったので撮影は省略。

リュンカー山が円環状に見えるのはいつ?2023/09/05

20230403リュンカー山
月面北西部に位置するリュンカー山は背の低い地形で、全体はいわゆる盾状火山のような様相です。細かく見ると20個ほどのドーム状地形が折り重なってできているようです。高さが無いため影ができにくく、明暗境界近くにならないと地球から良く見えません。以前に2019年6月28日記事で「一般的な地形なら概ね月面太陽高度20°以下、高度差の少ないリッジや低い山なら10°以下が凹凸陰影がはっきりして見やすい」と結論しました。実際に撮影された多くのリュンカー山画像を調べると5°から10°付近に集中しているようです。

左は2023年4月3日撮影の画像から切り出したもので、リュンカー山における太陽高度は約3.19°。やや影が多いものの、凸凹がよく見えていますね。ところが同年8月28日に撮影した画像では山と言うよりクレーターのように写っていて、同じ地形とはにわかに信じ難い見え方でした(右下画像)。このときの太陽高度は約0.77°。明暗境界ギリギリと言ったところです。では、リュンカー山がこのような円環状に見える太陽高度条件はどのあたりなのでしょうか?

20230828リュンカー山
これを確かめるため、自作プログラムによる陰影シミュレートを行ってみました。太陽高度0.0°、0.5°、1.0°、1.5°、および3.0°のCG画像を下A..E図として掲載します。これを見ると太陽が水平方向から当たっている状態でも円環状に光っていますね。(※ただしとても暗いでしょう。シミュレート図は輝度をかなり上げています。)1.0°あたりではもう円環内に光が入ってきています。実際、右の8月28日画像でも良く見れば円環内がうっすら光っていて、ちょうどRay現象のようになっています。これは山地の稜線が閉じておらず、円環ではなく「C字型」のように東側が空いている(低い)からです。個人的には「潰れたクロワッサン」と思ってます。

リュンカー山周囲には複雑なリンクルリッジや谷もあるので、それらを観察する際もこの太陽高度の目安が役に立つでしょう。今後2024年末までに起こる太陽高度0°の日時は2023年10月26日23:56、2024年1月23日21:06、3月22日23:01、5月20日20:47、9月15日18:54、11月13日23:34(日本経緯度原点で月高度20°以上のケースのみ)。この日時から約2.5時間は太陽高度1°未満です。縁に近い地形ですからなるべく秤動の良い機会を狙うことも大切でしょう。

なお下弦側でリュンカー山が欠け際に近くなるのは夜明けに登る細い月なので、見える機会そのものが少なく、もし上記条件に合致しても月高度がとても低いでしょう。それでもよければ2023年10月12日、2023年12月10日、2024年12月28日などに観察してみてください。下弦側でも円環になるのか興味津々…。

  • リュンカー山・太陽高度0.0度

    A.太陽高度0.0度
  • リュンカー山・太陽高度0.5度

    B.太陽高度0.5度
  • リュンカー山・太陽高度1.0度

    C.太陽高度1.0度


  • リュンカー山・太陽高度1.5度

    D.太陽高度1.5度
  • リュンカー山・太陽高度3.0度

    E.太陽高度3.0度


明け方の雲間に月ひかる2023/09/05

20230905_24420月
昨日は日中まとまった雨が降り、同じ県内に記録的短時間大雨情報が発令されたほどでした。午後はゆっくり回復に向かったものの、夜になっても雲が多く残り、夜半ごろ登ってきた月も朧でした。日付が変わり明け方が近づくと雲が薄くなり、月と木星がきれいに並んで見えました。月の回りには光環が三重にかかり、例えようも無い美しさ。

東の空が若干白んできたころ雲間が来そうだったので、急きょ望遠鏡を用意。左は5日04:10頃の撮影で、太陽黄経差は約244.20°、撮影高度は約70.63°、月齢は19.40。極薄い雲が残りシーイングが悪かったものの観察には問題なし。アルタイ断崖がとてもダイナミックですねぇ。あまりお目にかかれない下弦側のラモントも良く見えています。ピッコロミニが真っ暗ですが、その南で縁だけ光るスティボリウスの回りが、なんだか大きなクレーターのように見えました。

南部を見ているとあっという間に時間が経ってしまいます。いつの間にか空が明るくなり、次の雲がやって来て月を覆ってしまいました。