人生でもっとも近い新月 ― 2023/01/22
昨夕日没後の空に金星と土星が仲良く並んでいました。左はまだ薄暮がたっぷり残る21日17:40ごろの撮影で、一番明るいのが金星、二番目が土星、背景はやぎ座の星々。両惑星は肉眼で容易に分かり、撮影時離角は約1.808°でした。二日後の23日宵には36′角まで接近します。また本日22日は新月で、23日の二惑星接近には月も加わり、最高に美しい眺めになるでしょう。
ただ、今週は天気が心配。強い寒波が訪れる予報も出てますし、好天悪天の周期も全国的に小刻みのようです。実は左画像撮影時も直前まで雲が多く、ようやく雲が切れて撮影できたと思ったら10分後に全天が薄雲に覆われてしまったり…。春先みたいになかなか安定しませんね。何にせよ、無事ふたつの惑星会合を楽しめてラッキーでした。
ところで本日22日の新月について、経済誌Forbesにコラムが載っていました(日本語版・英語版)。「992年ぶりに地球に大接近した新月」だと言うのです。今回の正確な新月瞬時は22日5:53:15JSTですが、毎年12、13回やってくる新月瞬時を過去に遡って調べたら、トップクラスに近かったと言う訳ですね。現代に生きている人にとって、正に「一生で最も近い新月」となることでしょう。(見ることはほぼ不可能ですが…。)
金子みすゞさんは『星とたんぽぽ』のなかでそう詠みました。普段の生活でお月様の存在を意識することは少なく、新月ともなれば天文ファンですら「月が無いことを喜ぶ」ほど。でも本当に月が無かったら地球環境や軌道は今と全く違っていたでしょう。私は新月に対しても、そこ居てくれることに深く感謝したいと思うのです。
閑話休題、前出コラムのソースになったTimeanddate.comの記事はここにあるようですが、残念ながら具体的な長期比較データが載っていませんでした。そこでプログラムを作って計算してみたのが記事末の表です。西暦1年2月から3000年末までにおこる37104回全ての新月瞬時で距離リストを作って、地球に近い順に50位まで掲載しました。これは近地点距離の比較ではありませんのでご注意。(※地心距離による計算です。測心距離ではありません。)
月の朔望周期は楕円軌道を回る月の遠近周期と独立していますから、軌道のどこで新月や満月を迎えるかによって見かけの大きさが変わります。今月の新月は直近の近地点通過1月22日5:50:46JSTと2.5分程しか違わず、地心距離も356000km台でした。右図は今年一年の朔望タイミングと地心距離の関係を図化したもの。青線が上がった極大瞬時が遠地点通過、下がった極小瞬時が近地点通過に相当します。今月は新月のタイミングとグラフ極小が見事に一致していると分かるでしょう。
下表から分かる通り、過去に今回より近かったのは1030年12月4日の新月でした。また次に今回より近くなるチャンスは2368年1月21日のようです。表を見ると12月や1月に多いと錯覚しそうですが、最遠リストにも12月や1月はたくさん見つかりますから、「冬期の新月は必ず近い」とは言えません。月の運動は大変複雑で、絵に描いたような“理想的な楕円軌道”にはならないのです。国立天文台の暦wiki「月の運動は複雑」などの項をぜひ御一読ください。
ただ、今週は天気が心配。強い寒波が訪れる予報も出てますし、好天悪天の周期も全国的に小刻みのようです。実は左画像撮影時も直前まで雲が多く、ようやく雲が切れて撮影できたと思ったら10分後に全天が薄雲に覆われてしまったり…。春先みたいになかなか安定しませんね。何にせよ、無事ふたつの惑星会合を楽しめてラッキーでした。
ところで本日22日の新月について、経済誌Forbesにコラムが載っていました(日本語版・英語版)。「992年ぶりに地球に大接近した新月」だと言うのです。今回の正確な新月瞬時は22日5:53:15JSTですが、毎年12、13回やってくる新月瞬時を過去に遡って調べたら、トップクラスに近かったと言う訳ですね。現代に生きている人にとって、正に「一生で最も近い新月」となることでしょう。(見ることはほぼ不可能ですが…。)
夜がくるまでしずんでる、
昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
金子みすゞさんは『星とたんぽぽ』のなかでそう詠みました。普段の生活でお月様の存在を意識することは少なく、新月ともなれば天文ファンですら「月が無いことを喜ぶ」ほど。でも本当に月が無かったら地球環境や軌道は今と全く違っていたでしょう。私は新月に対しても、そこ居てくれることに深く感謝したいと思うのです。
閑話休題、前出コラムのソースになったTimeanddate.comの記事はここにあるようですが、残念ながら具体的な長期比較データが載っていませんでした。そこでプログラムを作って計算してみたのが記事末の表です。西暦1年2月から3000年末までにおこる37104回全ての新月瞬時で距離リストを作って、地球に近い順に50位まで掲載しました。これは近地点距離の比較ではありませんのでご注意。(※地心距離による計算です。測心距離ではありません。)
月の朔望周期は楕円軌道を回る月の遠近周期と独立していますから、軌道のどこで新月や満月を迎えるかによって見かけの大きさが変わります。今月の新月は直近の近地点通過1月22日5:50:46JSTと2.5分程しか違わず、地心距離も356000km台でした。右図は今年一年の朔望タイミングと地心距離の関係を図化したもの。青線が上がった極大瞬時が遠地点通過、下がった極小瞬時が近地点通過に相当します。今月は新月のタイミングとグラフ極小が見事に一致していると分かるでしょう。
下表から分かる通り、過去に今回より近かったのは1030年12月4日の新月でした。また次に今回より近くなるチャンスは2368年1月21日のようです。表を見ると12月や1月に多いと錯覚しそうですが、最遠リストにも12月や1月はたくさん見つかりますから、「冬期の新月は必ず近い」とは言えません。月の運動は大変複雑で、絵に描いたような“理想的な楕円軌道”にはならないのです。国立天文台の暦wiki「月の運動は複雑」などの項をぜひ御一読ください。
【新月瞬時の地心月距離】
※西暦1年2月から3000年末までの、地心月距離が近い新月トップ50位の一覧です。
順位 | 日時 (JST) | 地心月距離 (km) | 地心太陽月離角 (°) | 直前月齢 |
---|---|---|---|---|
1 | 0685-12-05 07:30:22 | 356545.140 | 5.90984 | 29.43598 |
2 | 0340-12-07 07:56:14 | 356545.447 | 4.12925 | 29.44241 |
3 | 0703-12-17 16:23:34 | 356555.616 | 5.28237 | 29.44214 |
4 | 0358-12-18 16:49:37 | 356556.912 | 4.57392 | 29.44673 |
5 | 2368-01-21 05:45:06 | 356559.180 | 4.17224 | 29.43823 |
6 | 1030-12-04 07:08:49 | 356562.711 | 4.03249 | 29.42918 |
7 | 2023-01-22 05:53:15 | 356569.121 | 5.85559 | 29.44191 |
8 | 1048-12-14 16:01:10 | 356572.064 | 4.50510 | 29.43749 |
9 | 2163-12-25 23:41:44 | 356574.517 | 4.45466 | 29.43418 |
10 | 2508-12-23 23:33:45 | 356575.646 | 5.47742 | 29.42450 |
11 | 2713-01-19 05:37:52 | 356576.254 | 5.77272 | 29.43465 |
12 | 2005-01-10 21:02:49 | 356576.737 | 5.28414 | 29.44012 |
13 | 0013-12-19 17:19:11 | 356576.756 | 5.08807 | 29.45035 |
14 | 2731-01-30 14:29:36 | 356578.334 | 5.14553 | 29.43772 |
15 | 2145-12-14 14:51:38 | 356581.250 | 4.53068 | 29.42405 |
16 | 1800-12-16 15:01:01 | 356584.601 | 5.00616 | 29.43504 |
17 | 0136-11-11 02:00:30 | 356584.979 | 4.43574 | 29.43304 |
18 | 2386-01-31 14:36:05 | 356586.431 | 4.77948 | 29.43958 |
19 | 0889-12-30 13:28:09 | 356586.739 | 5.29918 | 29.43991 |
20 | 2350-01-09 20:53:11 | 356586.916 | 4.58358 | 29.43459 |
21 | 0908-01-11 22:18:09 | 356587.574 | 5.20715 | 29.43950 |
22 | 0667-11-24 22:37:46 | 356590.317 | 5.20981 | 29.42728 |
23 | 1660-01-12 21:16:09 | 356591.976 | 4.30681 | 29.44509 |
24 | 0481-11-09 01:37:28 | 356592.675 | 5.28311 | 29.42152 |
25 | 0322-11-26 23:03:12 | 356593.772 | 4.69507 | 29.43595 |
26 | 0545-01-01 13:51:39 | 356593.920 | 4.56872 | 29.44031 |
27 | 0563-01-12 22:39:09 | 356595.110 | 4.53433 | 29.43771 |
28 | 1818-12-27 23:53:12 | 356595.267 | 5.24423 | 29.44336 |
29 | 1678-01-23 06:06:01 | 356597.347 | 3.95515 | 29.44512 |
30 | 2853-12-21 23:32:46 | 356598.648 | 4.50501 | 29.41529 |
31 | 1375-12-02 06:52:18 | 356598.769 | 5.47668 | 29.42287 |
32 | 2872-01-02 08:21:50 | 356598.958 | 4.11567 | 29.42614 |
33 | 1253-01-08 22:00:57 | 356599.253 | 4.02776 | 29.44105 |
34 | 1393-12-12 15:42:51 | 356601.024 | 4.85391 | 29.43274 |
35 | 2527-01-04 08:25:18 | 356601.122 | 5.85614 | 29.43393 |
36 | 1455-12-18 15:13:20 | 356601.622 | 3.91849 | 29.44508 |
37 | 2490-12-12 14:46:35 | 356603.113 | 5.38775 | 29.41342 |
38 | 0154-11-22 10:53:05 | 356603.177 | 3.80447 | 29.44341 |
39 | 1234-12-29 13:09:29 | 356603.845 | 4.08210 | 29.43948 |
40 | 1012-11-22 22:17:51 | 356610.667 | 4.62752 | 29.41881 |
41 | 0499-11-20 10:27:20 | 356615.047 | 5.82831 | 29.43377 |
42 | 0826-11-08 01:18:25 | 356615.777 | 4.75675 | 29.40992 |
43 | 2041-02-01 14:42:57 | 356616.294 | 5.18573 | 29.44106 |
44 | 1598-01-07 21:47:32 | 356623.044 | 4.38226 | 29.44262 |
45 | 0218-01-14 23:01:48 | 356623.193 | 5.27765 | 29.43575 |
46 | 0118-10-31 17:12:09 | 356625.787 | 3.98769 | 29.42054 |
47 | 1473-12-29 00:06:50 | 356626.106 | 3.76980 | 29.45161 |
48 | 2182-01-05 08:34:06 | 356626.421 | 4.21901 | 29.44158 |
49 | 1315-01-14 21:30:47 | 356627.344 | 4.75725 | 29.44945 |
50 | 0200-01-03 14:17:26 | 356627.537 | 5.53272 | 29.44057 |
- 自作プログラムによる計算です(使用暦表:JPL-DE431t)。
- 距離はメートルより細かい部分を四捨五入しています。
- 直前月齢とは新月瞬時1秒前の月齢です。直前の新月から1公転回り終えるのに何日かかったか分かります。