今日の金星は○○の明星? ― 2017/03/21
春分を過ぎました。これから太陽は夏に向かって空高くを目指すでしょう。一方で、23日に内合(赤経内合)を迎える金星は人知れず姿を見せなくなりました。(※黄道座標基準の黄経内合の場合は25日です。)
宵空に輝く金星は「宵の明星」、明け方の空の場合は「明けの明星」と呼ばれることはご存じでしょう。そして太陽−金星−地球がならぶ内合を境に入れ替わる…ほとんどの方はそう考えていらっしゃると思います。では今日の金星は「宵の明星」と「明けの明星」のどちらですか?…内合前ということを知っていれば「まだ宵の明星です」と回答できますね。ところが…これ、半分正解、半分間違いなんです。
ステラナビゲーターによる星図を使って説明しましょう。左上図は今日21日日没時の金星位置。薄紫のマス目は5°おきの高度・方位、薄ピンクのマス目は赤道座標系の経緯線です。太陽や星々の日周運動は天の赤道と平行な向きに動き、また天の北極方向と書かれた線を右上に向かうと、北極星近くで日周運動の中心となる「天の北極」にたどり着きます。昨日の春分の瞬間に太陽は天の赤道を通過、今日は少しだけ離れていることが分かるでしょう。そして地平線に太陽のてっぺんが消える瞬間、まだ金星は少し高い位置にいますね。間違いなく宵の明星であることが分かります。
じゃあ半日遡って、日の出直前も見てみましょう。右下図がそうです。こちらは東の空なので、天の北極方向が左上となりますよ。おや?金星が見えているではありませんか!かなり低空ですが太陽よりは高く、こちらの図だけ見ると今日の金星は明けの明星ということになります。これはいったいどういうことでしょうか??
あらためて「日没の瞬間に地平より上の金星を宵の明星、日出の瞬間に地平より上の金星を明けの明星」と定義しておきましょう。このとき、実は「内合付近では宵の明星と明けの明星のどちらか片方に定まらない」のです。もう少し踏み込んで言うと、「宵の明星と明けの明星のどちらにも属する」場合と「どちらも見えない」場合に分かれます。内合に限らず、外合も同様です。
不慣れな方には少し難しいですが、赤道座標系で考えるとすっきりします。左図は今月3月15日から31日まで太陽と金星の位置を赤道座標系で描いたもの。この図では天の北極が上方向になります。前出の図の中に描いてある天の赤道を真横向きにしていますから、自ずと地平線が斜めに傾くことが想像できますね。しかも傾き方は明け方と夕方とで逆向きになりますし、日々太陽は天球を動くので、朝夕の地平もそれに合わせて移動することになるでしょう。(※この図は朝夕の太陽を12時の位置で代表させていますが、厳密には前後に少しずれます。)
図の中で日出時の地平線と日没時の地平線との間(青矢印の範囲)に金星がいると、「朝夕のどちらも見える」ことになります。地平線に合わせてみなさんの頭を傾ければ、前出の図と同様になってることがすぐ理解できるでしょう。従って、今月17日から26日は朝夕どちらも見える期間なのです。また、黄色矢印の間にある場合は朝夕どちらも見えません。これは「彗星が見えない」ひとつの理由(2017/01/17)という記事でも扱っていますから、ぜひお読みください。まとめると「太陽の北側を通る合の場合は宵の明星と明けの明星のどちらにも属する」「太陽の南側を通る合の場合は朝夕どちらも見えない」わけですね。ただしこれは日本での話。南半球では逆転しますからご注意。
「合の瞬間に宵の明星と明けの明星とが切り替わる」という思い込みは実物の空を観察してみることで解消するでしょう。私はシミュレーションではなく実際の空で見てみたいと思い、十数年ほど前から何度もチャレンジしてきました。見晴らしや天気の都合もあって、いまだに同日の朝夕いっぺんに見えたことはありません。(片方だけならあります。)東西の超低空まで見晴らしよい空に恵まれている方、ここ数日の間に晴れたらぜひ挑戦してください。
参考:
金星は内合を過ぎた?過ぎてない?(2015/08/15)…前回の内合は朝夕どちらも見えないケースでした
宵空に輝く金星は「宵の明星」、明け方の空の場合は「明けの明星」と呼ばれることはご存じでしょう。そして太陽−金星−地球がならぶ内合を境に入れ替わる…ほとんどの方はそう考えていらっしゃると思います。では今日の金星は「宵の明星」と「明けの明星」のどちらですか?…内合前ということを知っていれば「まだ宵の明星です」と回答できますね。ところが…これ、半分正解、半分間違いなんです。
ステラナビゲーターによる星図を使って説明しましょう。左上図は今日21日日没時の金星位置。薄紫のマス目は5°おきの高度・方位、薄ピンクのマス目は赤道座標系の経緯線です。太陽や星々の日周運動は天の赤道と平行な向きに動き、また天の北極方向と書かれた線を右上に向かうと、北極星近くで日周運動の中心となる「天の北極」にたどり着きます。昨日の春分の瞬間に太陽は天の赤道を通過、今日は少しだけ離れていることが分かるでしょう。そして地平線に太陽のてっぺんが消える瞬間、まだ金星は少し高い位置にいますね。間違いなく宵の明星であることが分かります。
じゃあ半日遡って、日の出直前も見てみましょう。右下図がそうです。こちらは東の空なので、天の北極方向が左上となりますよ。おや?金星が見えているではありませんか!かなり低空ですが太陽よりは高く、こちらの図だけ見ると今日の金星は明けの明星ということになります。これはいったいどういうことでしょうか??
あらためて「日没の瞬間に地平より上の金星を宵の明星、日出の瞬間に地平より上の金星を明けの明星」と定義しておきましょう。このとき、実は「内合付近では宵の明星と明けの明星のどちらか片方に定まらない」のです。もう少し踏み込んで言うと、「宵の明星と明けの明星のどちらにも属する」場合と「どちらも見えない」場合に分かれます。内合に限らず、外合も同様です。
不慣れな方には少し難しいですが、赤道座標系で考えるとすっきりします。左図は今月3月15日から31日まで太陽と金星の位置を赤道座標系で描いたもの。この図では天の北極が上方向になります。前出の図の中に描いてある天の赤道を真横向きにしていますから、自ずと地平線が斜めに傾くことが想像できますね。しかも傾き方は明け方と夕方とで逆向きになりますし、日々太陽は天球を動くので、朝夕の地平もそれに合わせて移動することになるでしょう。(※この図は朝夕の太陽を12時の位置で代表させていますが、厳密には前後に少しずれます。)
図の中で日出時の地平線と日没時の地平線との間(青矢印の範囲)に金星がいると、「朝夕のどちらも見える」ことになります。地平線に合わせてみなさんの頭を傾ければ、前出の図と同様になってることがすぐ理解できるでしょう。従って、今月17日から26日は朝夕どちらも見える期間なのです。また、黄色矢印の間にある場合は朝夕どちらも見えません。これは「彗星が見えない」ひとつの理由(2017/01/17)という記事でも扱っていますから、ぜひお読みください。まとめると「太陽の北側を通る合の場合は宵の明星と明けの明星のどちらにも属する」「太陽の南側を通る合の場合は朝夕どちらも見えない」わけですね。ただしこれは日本での話。南半球では逆転しますからご注意。
「合の瞬間に宵の明星と明けの明星とが切り替わる」という思い込みは実物の空を観察してみることで解消するでしょう。私はシミュレーションではなく実際の空で見てみたいと思い、十数年ほど前から何度もチャレンジしてきました。見晴らしや天気の都合もあって、いまだに同日の朝夕いっぺんに見えたことはありません。(片方だけならあります。)東西の超低空まで見晴らしよい空に恵まれている方、ここ数日の間に晴れたらぜひ挑戦してください。
【補足】
惑星は天の黄道からあまり離れないため機会は少ないですが、太陽から北側にかなり離れた天体なら朝夕共に労せず見えることはよく知られています。天の北極を中心に一定範囲内にある「周極星」は朝晩どころか一晩中見えますし、北寄りのコースを進行する彗星・小惑星などは朝晩共に観察できることがあります。2017/03/10の記事に登場したヘール・ボップ彗星は20年前の3月、正にそんな状態でした。
惑星は天の黄道からあまり離れないため機会は少ないですが、太陽から北側にかなり離れた天体なら朝夕共に労せず見えることはよく知られています。天の北極を中心に一定範囲内にある「周極星」は朝晩どころか一晩中見えますし、北寄りのコースを進行する彗星・小惑星などは朝晩共に観察できることがあります。2017/03/10の記事に登場したヘール・ボップ彗星は20年前の3月、正にそんな状態でした。
参考:
金星は内合を過ぎた?過ぎてない?(2015/08/15)…前回の内合は朝夕どちらも見えないケースでした