新旧の平年値で累積を比較する2021/05/20

平年値変化・累積降水量
当ブログの2021年3月28日記事に書いたように、昨日5月19日から気象庁が使う「平年値」が更新されました。10年ごとに行われているものだから気象関係者には当たり前のことなのでしょうが、「初めて聞いた」という方も少なくないでしょう。前出リンクに書いた通り、気象庁では平年値を「西暦年の1の位が1の年から続く30年間の平均値をもって平年値とし、10年ごとに更新」します。今年2021年は該当年。基準が変わるということは、「平年より高く…」とか「平年を下回る…」などと言われていたものが「平年並み」になる可能性があるということ。

3月28日記事では気温と降水量について、平年値がどう変わったかを「1年間の日毎」に対比してみました。このとき時間の都合でできなかった「年間を日毎に累積」する比較を本記事でやってみました。どういうことかと言うと、例えば「年間の総降水量は、2010年平年値と今年からの2020年平年値とでどう違うのか」といった比較です。日々の値の比較ですと「微小値の比較」で分かりづらいことも、日々の値を足して累積すれば明確な差が生まれる場合があるでしょう。

まず降水量の累積比較が左上図。当ブログ基点の茨城県つくば市の平年値で比べました。途中でくっついたり離れたりするものの、最終的に41.9mmも今回の平年値が上回りました。この間、前回平年値を下回ったのは1月2日から11日の10日間のみ。しかも0.5mm未満です。たかだか41.9mmと思うことなかれ。当地では梅雨時期なら約8日間、晴れの多い冬期なら約3週間ほどの降水量に匹敵するんです。

平年値変化・累積日照時間
細かく見ると、梅雨時期と9-10月の長雨・台風時期にグラフの乖離が目立ちますね。また、一旦離れたグラフが8月に再びくっつくと言うことは、「この期間は極端に降水が減った」ことを意味します。3月28日記事の二番目のグラフを見れば一目瞭然。「梅雨が長い」「秋雨も長い」「夏暑いのに雨降らない」など実感としても感じます。これが一時的なものではなく、平年値にはっきり現れていることが重要ポイント。

お次は日照時間(右上図)と全天日射量(左下図)。似たような語呂ですが、前者は「雲に遮られることなく太陽が照りつける時間」、後者は「地表が太陽から受けるエネルギー」ですから、相関はあっても意味が違います。夏に1時間晴れても冬に1時間晴れても日照時間は同じだけれど、全天日射量は冬のほうがずっと小さいですね。

どちらのグラフも一度もくっつくこと無く離れてしまい、日照時間は102.4時間、全天日射量は99.9MJ/m2も2020年平年値が上回りました。降水量のように、時期による偏りは感じられません。雨が多くなっているのにどういうこと!?無い知恵を絞って考えたところ、怖い結論に達しました。日照に関係ない時間、つまり夜間の雨が多くなってるんじゃないかと…。もしそうなら、天体観察が好きな人にとって耐え難い状況です。

平年値変化・累積全天日射量
ちょっと脱線しますが、2020年1月27日記事で、星仲間のかすてんさんによる夜間の『星天日』記録を用いて簡単な集計を試みたことがありました。このとき、「明らかに夜の晴天率が下がった」ことは分かりませんでしたが、「昼と夜の天気が連続しない」という傾向は分かりました。

昼の日照時間に相当するような「夜の星照時間」の記録があればよいのですが、どこを探してもありません。でも、例えば降水の統計を時間帯に区切って集計すれば「いつ雨が降ったか」という足がかりになるかも知れません。

そこで、大変面倒ですが、つくば市におけるアメダス降水データを時間単位でダウンロードし、6時間ごと4つの時間帯に分けて集計、これを年単位で1981年から2020年までグラフにしてみました(右下図)。昼夜区切りは季節とともに変わりますから本来は定刻時間帯で区切ることができませんが、ここでは大雑把に「6時から18時まで」を昼(棒グラフの暖色系)、それ以外を夜(同・寒色系)としてお考えください。

時間降水率
これを見る限り、年ごとに変動はあるものの、「近年は夜に雨が降るよう時間帯がシフトした傾向はない」ことが分かるでしょう。平年値統計の30年でもまとめて比較しましたが、1981-2010年平均では昼:48.86%・夜:51.14%、1991-2020年平均では昼:49.23%・夜:50.77%で、大きく変わったとは思えません。区切りを細かくしても同様でした。

それなら、日照が増えつつも雨が多くなるカラクリはどこにあるのでしょうか?昼夜で差がないなら、一度に降る量が多くなったと素直に考えるべきでしょうか?もっと深く探る必要がありそう。平年値、奥が深い…。