まもなく2017年の衝を迎える土星2017/06/13

カッシーニ探査機による土星
惑星探査機「カッシーニ」がファイナルミッションを迎え、度々話題に上っている土星。今週の6月15日夜に衝を迎え、地球からも見ごろとなります。残念なことに日本は梅雨のまっただ中でなかなか晴れてくれませんが、お天気と時間が許せばぜひご覧になってください。(左画像はNASAニュースからの引用でカッシーニによる土星画像。)

衝とは土星・地球・太陽の順にほぼ一直線となる位置関係のこと。衝効果(→参考記事)によって環が明るく見えるなど面白い現象が期待できます。もちろん天然の天体なので余程の偶然でもない限り完全な直線には並びませんが、それでも今年の衝はかなり“良い線”行ってるんです。

2017年・土星の位相角

(A)

各年の衝付近における土星の位相角変化

(B)
右のAグラフは毎年の衝のたびに作図しているもので、太陽−土星−地球がなす角、つまり「位相角」。6月15日を中心にプラスマイナス40日ぶん、各日の0:00JST計算値を結んでいます。極小値は衝の日の0.1373°。この角度って、20cm進んでも0.5mmのシャープペンシルの芯幅程度しかズレていないような「限りなく直線に近い配置」ということです。(※参考:2016年のグラフはこちら。

衝近くでの位相角極小値は年ごとに変化があります。右のBグラフは2015年から今年まで3回の衝付近で、位相角がどんな変化だったか比較したグラフ。今年の極小値は一昨年の6割ほどしかなく、この3年で「もっとも直線的」であることが分かります。つまり、より強い衝効果が期待できるかも知れない、と言うことを意味するわけです。

そうはいっても、なかなか晴れてくれませんね。その上ここ数年は別の理由で土星の観察がし辛いのです。その理由とは…「高度が低い」こと。6月9日のストロベリームーンの記事で言及しましたが、日本付近で南の空を通過する天体は「最大高度=90度−観察地緯度+天体赤緯」という関係があります。すなわち「一箇所で観察する場合は赤緯が高い(天の北極寄り)ほど高度も高い」ということ。あるいは「赤緯が低く(天の南極寄り)て高度不足の天体を見たければ、南の国にでも引っ越してください」とも言えます。

土星の動きと衝の位置
左はステラナビゲーターで2016年年始から2021年年始までの土星位置を示した星図。各年の年始と衝の日は土星マークを付けました(緑文字が衝)。赤線のうち上向きに湾曲している曲線が赤緯の目盛線です。この線に対して下に離れるほど「赤緯が低い(天の南極寄り)」であることを表します。

星図を一望すると今年や来年は土星の位置が近年で最も低くなり、どんなに優秀な望遠鏡でも低空の大気が像を乱してしまうでしょう。しかも2019年頃まで衝は梅雨の期間…。星図に描いてある通り、日本からの土星高度は2018年10月下旬に最も低くなります。探査機カッシーニは今年の衝から約3ヶ月後にファイナルミッションを終え、土星本体に落下して役目を終える予定です。地上からカッシーニは見えませんが、せめて見ごろの土星を眺めつつエールを送りたいものです。

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