木星の衛星マルチイベントを見よう ― 2017/05/10
天気が安定しないシーズンとなりました。空を見る者にとって灰色の空は退屈ですが、この時期の雨は野山や農作物にとって貴重なので、晴れてばかりでも困りもの。自然環境はバランスが大事ですね。
晩春の宵空に見えるおとめ座はギリシャ神話に登場する大地と農業の女神デメテル(デーメーテール)がモデルとの説があります。何の因果か、今期おとめ座に輝く木星を司る大神ゼウスとは姉弟であり夫婦でもあります。宵の南空にかかる木星は衝を過ぎてもまだまだ観望好期。たまに晴れた夜に望遠鏡を向けると、気流が安定していて面白いように模様が見えることがあります。
ところで、木星の四大衛星が起こす現象のうち、複数同時に見えるものを「衛星マルチイベント」と勝手に呼んで楽しんでいます。例えば「イオとイオの影が同時に木星面を通過する」といった現象のこと。「衛星のひとつとその影」といった2件同時は度々起こるのですが、「3件以上のマルチイベント」はかなり頻度が低くて貴重です。実は来週から6月にかけて、この「3件以上のマルチイベント」が複数回起こります。記事下の表にまとめたのでご利用ください。(※ただしマルチ対象に大赤斑通過は含んでいませんのであしからず。)
一例として、左上画像はStellariumによる5月15日深夜から16日0時過ぎに起こる「イオ・イオの影・エウロパの影」の木星面同時通過です。既に南西の空低くて解像度良く見ることは難しいかも知れませんが、貴重な現象です。
また右画像は6月9日の「イオ・イオの影・エウロパ・エウロパの影」の、なんと4マルチ!これは滅多に起こりませんね。残念なことに日没前後の時間なのでこれまたハッキリ見ることは叶いませんが、薄暮の中で引き続き3マルチが見えますから、諦めず望遠鏡を向けてみてくださいね。
たくさんの現象が同時に「見える」ことだけがマルチではありません。「同時に見えなくなる」というマルチもあります。例えば左下画像は5月24日「四大衛星のうち3つが木星に重なって見えない(見づらい)ため、木星周囲の衛星がひとつだけとなる」イベントです。これもまたある意味珍しい。「見えなくなってつまらない」とよく言われてしまう現象には、例えば土星の環の消失(約15年に一度)もあります。「見えなくなってすごい」と言われる日食や月食とは大違いですが、この「貴重なつまらなさ」もまた天文現象ならではと言えましょう。 同様の「衛星ひとつだけ」現象は5月31日21:33頃と6月7日23:00頃にも起こります。
衛星現象は天文年鑑や当ブログのアーカイブ「木星の衛星現象一覧」に載せていますが、ここからマルチイベントを拾い出すのは難しいでしょう。そこで些か即席ですが、このアーカイブに追加で「ガリレオ衛星マルチイベント一覧」を掲載しておきましたのでご利用ください。(※こちらには2マルチも全て掲載しました。)ご覧頂くと分かるように、現在はマルチイベントが減少傾向にあります。(来年2018年に日本で見えるものは数件しかありません。)それくらい貴重なものですので、ぜひお見逃しなく。大神と女神の祝福がありますように。
参考:
木星の大赤斑と衛星とその影は同時に見えるかな?(2015/02/12)
晩春の宵空に見えるおとめ座はギリシャ神話に登場する大地と農業の女神デメテル(デーメーテール)がモデルとの説があります。何の因果か、今期おとめ座に輝く木星を司る大神ゼウスとは姉弟であり夫婦でもあります。宵の南空にかかる木星は衝を過ぎてもまだまだ観望好期。たまに晴れた夜に望遠鏡を向けると、気流が安定していて面白いように模様が見えることがあります。
ところで、木星の四大衛星が起こす現象のうち、複数同時に見えるものを「衛星マルチイベント」と勝手に呼んで楽しんでいます。例えば「イオとイオの影が同時に木星面を通過する」といった現象のこと。「衛星のひとつとその影」といった2件同時は度々起こるのですが、「3件以上のマルチイベント」はかなり頻度が低くて貴重です。実は来週から6月にかけて、この「3件以上のマルチイベント」が複数回起こります。記事下の表にまとめたのでご利用ください。(※ただしマルチ対象に大赤斑通過は含んでいませんのであしからず。)
一例として、左上画像はStellariumによる5月15日深夜から16日0時過ぎに起こる「イオ・イオの影・エウロパの影」の木星面同時通過です。既に南西の空低くて解像度良く見ることは難しいかも知れませんが、貴重な現象です。
また右画像は6月9日の「イオ・イオの影・エウロパ・エウロパの影」の、なんと4マルチ!これは滅多に起こりませんね。残念なことに日没前後の時間なのでこれまたハッキリ見ることは叶いませんが、薄暮の中で引き続き3マルチが見えますから、諦めず望遠鏡を向けてみてくださいね。
たくさんの現象が同時に「見える」ことだけがマルチではありません。「同時に見えなくなる」というマルチもあります。例えば左下画像は5月24日「四大衛星のうち3つが木星に重なって見えない(見づらい)ため、木星周囲の衛星がひとつだけとなる」イベントです。これもまたある意味珍しい。「見えなくなってつまらない」とよく言われてしまう現象には、例えば土星の環の消失(約15年に一度)もあります。「見えなくなってすごい」と言われる日食や月食とは大違いですが、この「貴重なつまらなさ」もまた天文現象ならではと言えましょう。 同様の「衛星ひとつだけ」現象は5月31日21:33頃と6月7日23:00頃にも起こります。
衛星現象は天文年鑑や当ブログのアーカイブ「木星の衛星現象一覧」に載せていますが、ここからマルチイベントを拾い出すのは難しいでしょう。そこで些か即席ですが、このアーカイブに追加で「ガリレオ衛星マルチイベント一覧」を掲載しておきましたのでご利用ください。(※こちらには2マルチも全て掲載しました。)ご覧頂くと分かるように、現在はマルチイベントが減少傾向にあります。(来年2018年に日本で見えるものは数件しかありません。)それくらい貴重なものですので、ぜひお見逃しなく。大神と女神の祝福がありますように。
【木星の衛星・3件以上のマルチイベント】
衛星マルチイベント時間帯 | 詳細 |
---|---|
2017/05/15 23:56 から 5/16 0:22 まで | イオ通過(2017/5/15 23:07→2017/5/16 01:17) イオ影通過(2017/5/15 23:56→2017/5/16 02:06) エウロパ影通過(2017/5/15 21:56→2017/5/16 00:22) |
2017/05/23 0:54 から 1:05 まで | イオ通過(2017/5/23 00:54→2017/5/23 03:05) エウロパ通過(2017/5/22 22:38→2017/5/23 01:05) エウロパ影通過(2017/5/23 00:33→2017/5/23 02:59) |
2017/05/23 1:50 から 2:59 まで | イオ通過(2017/5/23 00:54→2017/5/23 03:05) イオ影通過(2017/5/23 01:50→2017/5/23 04:01) エウロパ影通過(2017/5/23 00:33→2017/5/23 02:59) |
2017/06/09 18:36 から 19:07 まで | イオ通過(2017/6/9 17:27→2017/6/9 19:38) イオ影通過(2017/6/9 18:36→2017/6/9 20:47) エウロパ通過(2017/6/9 16:44→2017/6/9 19:13) |
2017/06/09 19:07 から 19:13 まで | イオ通過(2017/6/9 17:27→2017/6/9 19:38) イオ影通過(2017/6/9 18:36→2017/6/9 20:47) エウロパ通過(2017/6/9 16:44→2017/6/9 19:13) エウロパ影通過(2017/6/9 19:07→2017/6/9 21:32) |
2017/06/09 19:13 から 19:38 まで | イオ通過(2017/6/9 17:27→2017/6/9 19:38) イオ影通過(2017/6/9 18:36→2017/6/9 20:47) エウロパ影通過(2017/6/9 19:07→2017/6/9 21:32) |
2017/06/16 20:31 から 21:30 まで | イオ通過(2017/6/16 19:19→2017/6/16 21:30) イオ影通過(2017/6/16 20:31→2017/6/16 22:41) エウロパ通過(2017/6/16 19:14→2017/6/16 21:44) |
2017/06/23 22:25 から 23:22 まで | イオ通過(2017/6/23 21:11→2017/6/23 23:22) イオ影通過(2017/6/23 22:25→2017/6/24 00:36) エウロパ通過(2017/6/23 21:47→2017/6/24 00:17) |
- Guideによる衛星現象時刻を元データとして、プログラムを作って集計しています。結果は複数ソフトで検証しています。
- 計算基準地は当ブログ基準の茨城県つくば市ですが、日本内なら時刻はあまり変わりません。
- 夜に木星が見えることを条件としてますが、日本各地で太陽や木星の出没時間にかなり幅があり、また天体出没をまたいで現象が続くこともあるので、日没3時間前から日出3時間後までピックアップしています。
- 趣味で楽しむ程度の精度です。精密観測には向きません。
参考:
木星の大赤斑と衛星とその影は同時に見えるかな?(2015/02/12)