Lemmon彗星とスターリンク・ダンス ― 2025/11/01
秋田の星友NKさんから10月30日に撮影したLemmon彗星(C/2025 A6)の原画が大量に送られてきました。2025年10月27日記事に書いた「日本海からそそり立つ彗星の尾」を狙ってくれたそうですが、残念ながら低空の雲に阻まれたとのこと。
一連の画像を拝見すると面白いことに気付きました。低空撮影のため例のごとくたくさんの衛星コンステレーションが写り込むのですが、明らかに明るい衛星が多かったのです。あ、これは正に「スターリンク・ダンス」じゃないですか。彗星が雲に飲まれるまでの75分あまりに撮影された全画像を比較明合成すると左画像のようになりました(55mm+APS-C)。どこに何が写ってるかは記事下A画像をご覧ください。青い筋はDTC(Direct to Cell)タイプのスターリンクですね。
前出記事を書いたときは気にも留めませんでしたが、「彗星の尾がそそり立つ」→「太陽が彗星の真下にいる」→「彗星周囲がスターリンク・ダンスの発生条件に一致」という図式が成り立ちます。星ナビ2024年3月号にあったようにスターリンク・ダンスの発生条件とは以下の通りです。(※実際に測ってみるとこれより広い範囲で見えてます。)
NKさんが撮影された秋田県で考えると下B図のようになります(Stellariumによるシミュレーション)。彗星周囲が見事にスターリンク・ダンス位置と被っていることが分かりますね。細かく見るとスターリンク・ダンスの位置は徐々に変化しており、また彗星が低空になるほど明るいフラッシュが彗星近くに見えてます。
雪国では太陽の上下に「ダイヤモンドダストによる太陽柱」(下C画像/wikiコモンズより)が見られますが、これと似た状況なんですよね。衛星の太陽電池パネルやボディがダイヤモンドダストにおける氷片の役割をして、太陽上方に差しかかったときだけ明るく光る(フラッシュ)、言うなれば『宇宙規模の太陽柱』なわけです。彗星だって太陽光によって発光してますから、奇跡のコラボといったら大げさでしょうか。画像を拝見するまでは気付けなかった視点なので、NKさんに深く感謝。
誤解が無いように書いておくと、記事冒頭画像は天の北が右方向です。したがって水平線は左上から右下の向きに広がっていて、画像左下からせり上がってくるようにフレームインしてます。画像を左回りに50°くらい回転すれば上下左右が地平座標と一致するでしょう。合成にあたり、中央を含む同高度の位置の恒星で位置合わせしたので、画像の右上と左下の恒星は大気差で伸びていますね。この伸びてる方向が「上下の向き」。そしてスターリンク・ダンスはこの上下方向に沿って分布しています。彗星位置は総露出75分間の移動に大気差が加わるため、かなり複雑な曲線になっています。10°を下回るような彗星撮影では通常のメトカーフ合成でこの大気差の非線形な動きが相殺し切れないため、うまくいかないことがありますからご注意。
NKさんは雲が多くて失敗だったと嘆いておられましたが、こんな面白画像を拝見できただけでも私は大満足。彗星と太陽が縦並びになるこの日でなければ撮影できなかったでしょう。試写で撮った画像(右上画像)が唯一彗星らしく写ったとのこと。関東人にはなかなかお目にかかれない「海に沈みゆく天体」が拝める環境にあるだけでも羨ましいと思います。ということで、たなぼた的(?)なLemmon彗星とスターリンク・ダンスの競演でした。
参考:
石垣島天文台でのスターリンク・ダンス(2024/07/12)
スターリンク・ダンスをとらえる(2024/03/11)
一連の画像を拝見すると面白いことに気付きました。低空撮影のため例のごとくたくさんの衛星コンステレーションが写り込むのですが、明らかに明るい衛星が多かったのです。あ、これは正に「スターリンク・ダンス」じゃないですか。彗星が雲に飲まれるまでの75分あまりに撮影された全画像を比較明合成すると左画像のようになりました(55mm+APS-C)。どこに何が写ってるかは記事下A画像をご覧ください。青い筋はDTC(Direct to Cell)タイプのスターリンクですね。
前出記事を書いたときは気にも留めませんでしたが、「彗星の尾がそそり立つ」→「太陽が彗星の真下にいる」→「彗星周囲がスターリンク・ダンスの発生条件に一致」という図式が成り立ちます。星ナビ2024年3月号にあったようにスターリンク・ダンスの発生条件とは以下の通りです。(※実際に測ってみるとこれより広い範囲で見えてます。)
- 太陽高度が地平下30°から45°付近にあるときに起きやすい。
- スターリンクのフラッシュは太陽の上方、45°から50°付近で明るく見える。
NKさんが撮影された秋田県で考えると下B図のようになります(Stellariumによるシミュレーション)。彗星周囲が見事にスターリンク・ダンス位置と被っていることが分かりますね。細かく見るとスターリンク・ダンスの位置は徐々に変化しており、また彗星が低空になるほど明るいフラッシュが彗星近くに見えてます。
雪国では太陽の上下に「ダイヤモンドダストによる太陽柱」(下C画像/wikiコモンズより)が見られますが、これと似た状況なんですよね。衛星の太陽電池パネルやボディがダイヤモンドダストにおける氷片の役割をして、太陽上方に差しかかったときだけ明るく光る(フラッシュ)、言うなれば『宇宙規模の太陽柱』なわけです。彗星だって太陽光によって発光してますから、奇跡のコラボといったら大げさでしょうか。画像を拝見するまでは気付けなかった視点なので、NKさんに深く感謝。
誤解が無いように書いておくと、記事冒頭画像は天の北が右方向です。したがって水平線は左上から右下の向きに広がっていて、画像左下からせり上がってくるようにフレームインしてます。画像を左回りに50°くらい回転すれば上下左右が地平座標と一致するでしょう。合成にあたり、中央を含む同高度の位置の恒星で位置合わせしたので、画像の右上と左下の恒星は大気差で伸びていますね。この伸びてる方向が「上下の向き」。そしてスターリンク・ダンスはこの上下方向に沿って分布しています。彗星位置は総露出75分間の移動に大気差が加わるため、かなり複雑な曲線になっています。10°を下回るような彗星撮影では通常のメトカーフ合成でこの大気差の非線形な動きが相殺し切れないため、うまくいかないことがありますからご注意。
NKさんは雲が多くて失敗だったと嘆いておられましたが、こんな面白画像を拝見できただけでも私は大満足。彗星と太陽が縦並びになるこの日でなければ撮影できなかったでしょう。試写で撮った画像(右上画像)が唯一彗星らしく写ったとのこと。関東人にはなかなかお目にかかれない「海に沈みゆく天体」が拝める環境にあるだけでも羨ましいと思います。ということで、たなぼた的(?)なLemmon彗星とスターリンク・ダンスの競演でした。
参考:
石垣島天文台でのスターリンク・ダンス(2024/07/12)
スターリンク・ダンスをとらえる(2024/03/11)




