間もなくメキシコ・北米皆既日食2024/04/06

20240408皆既日食
間もなく新月期を迎えますが、今回は太平洋南東部からメキシコを経て北米を横断する皆既日食が起こります。日本時間では日付が9日に変わってすぐの頃の現象ですが、日本以外では世界時表記で「April 8th,2024」と告知されてますから、日付を間違わないようしましょう。この日食は半月前に起きた半影月食とペアになっています(→2016年3月10日記事参照)。

左は今回の日食図(エクリプスナビゲーターによる)。日食最大地点はメキシコです(だいたい西経104°08′53″・北緯25°17′23″付近)。ピンク線で挟まれた地域で皆既日食になり、そのなかでも特に赤線のところで最長に近い条件で観察できます。それ以外の黄色線内は部分日食となります。ちょうどアメリカの気象衛星GOESシリーズの撮像範囲ですから、時間になれば移動する月影が写るでしょう。余裕があったら当ブログでお伝えします。

ところで静止気象衛星の全球画像は直下点位置から経度・緯度方向ともに概ねプラスマイナス80°あまりの範囲が見えます。例えば気象衛星ひまわりはだいたい東経140.7度、緯度0°の上空にいますから、経度方向は東経60.7°から西経139.7°あたりまで捉えています。それを踏まえて左上の日食図を良く見ると、ハワイやアラスカを通る経度(西経160-140°あたり)でも赤線が少しひっかかっていますね。つまり気象衛星ひまわりの撮像範囲に皆既帯がわずかに入っているのです。ひまわりの全球画像で9日1:40JST-1:50JSTごろのものを見ると地球の赤道東端少し下あたりが微かに暗くなると思われます。見逃しそうなギリギリの条件ですが、ぜひ確認してみてください。右下図はアーカイブ「静止気象衛星による日食月影の可視範囲」に掲載している気象衛星ひまわりの日食月影シミュレーション。暗くなるのはピンク線あたりですよ。(参考:2019年7月3日の日食時に似た見え方と思われます。)

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今回の皆既日食は月がほぼ近地点のころ起こります。近地点通過が8日2:44:39JST、このとき地心-月心距離は約358841.5kmで、概ね24時間後に日食ですから月直径は極めて大きく、太陽が完全に隠される訳です。金環に近い皆既日食と違って「全周ベイリービース」みたいなことは期待できない代わりに、日食継続時間がそこそこ長くなります。2024年3月12日記事で触れましたが、太陽周囲に可視惑星が勢揃いしており、おまけに増光中のポン・ブルックス彗星(12P)もいます。昼間の空で全部見えるでしょうか?

第2接触と第3接触の近くでは太陽が月縁の谷間からこぼれ出す部分的なベイリービースが見えると思われます。このとき下A図のように月縁の地形を把握しておくと、どのようなビース配置になるか予測できます。この図はエクリプスナビゲーターの作図に主なクレーター位置と南北の方向を描き入れたもの。黄色線は黄道、白線は白道で、太陽は黄道に沿って、月は白道に沿って右下から左上に移動します。エンディミオンや危難の海方向のリムは低地のようですね。ラングレヌス-レイタ間の低地は南の海の北部あたりでしょうか。対して月面西側は低地が少ないことが分かります。

今回のサロスNo.は139。サロス139に属する日食は1501年5月に北極から開始し、2763年7月に南極で収束します。下B図としてサロス139に属する全日食図のgif動画をNASA・Eclipseサイトから引用し掲載しました。1988年3月18日(昭和の終わりの前年ですね)の小笠原沖日食orインドネシア日食として知られる皆既日食は同系列のサロスです。国内各地でも「深く欠けた部分日食」が見えましたが、曇りのところも多かったようです。気象庁のサイトに、当時稼働していたひまわり3号(GMS-3)による日食月影画像が載っていますよ。

今回のメキシコ・アメリカは日本から見物に行かれる方も多いでしょう。今のところ現地の大部分が曇りという残念な天気予報ですが、無事見えると良いですね。

  • 20240408皆既日食時の月縁

    A.皆既日食最大位置での月縁
  • 日食・サロス139

    B.サロス139の日食


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