美しい月や彗星たち2023/01/26

20230125_04918月
昨夕から少しずつ風が収まってきました。25日18時時点で玄関先の気温がマイナス2度。どうりで寒いはずです。薄暮の中に綺麗な月が浮かんでいたので、望遠鏡を向けてみました。

左は25日18:10過ぎの撮影で、太陽黄経差は約49.18°、撮影高度は約29.18°、月齢は3.51。シーイングが乱れていましたが透明度は高く、年間トップクラスに感じました。なかなかこの月齢未満を拡大撮影できない(望遠鏡を西側に設置し辛い)のですが、かなり南寄りに見えていたため、うまい具合に建物と樹木の隙間から撮影できました。

フンボルト海や縁の海、スミス海がまた大きく見えるシーズンが巡ってきましたね。危難の海も丸みを帯びています。豊かの海のリンクルリッジがえぐい。こんなに起伏があるのかと驚かされます。スミス海南東部の月縁に位置するヒラヤマ・クレーターが見やすくなる時期は1月27日から29日ごろ(2022年5月11日記事参照)。天気が不安定ですが、月縁地形に挑戦したい方は眺めてみましょう。なお一日の中で地上から月の東部(北極方向を上にしたとき右側)が見やすいのは午前中の早い時間(月が東の空にある時間帯)です。各種秤動のうち日周秤動が大きく影響するのです。上弦前のヒラヤマを見る場合は青空の中になってしまうのですが、それでも構わない場合は午前中の観察もありですね。

南側カスプ付近に山頂またはクレーター壁の一部が光って見えるところが二ヶ所ありました。美しい月を見ていると時が経つのを忘れます。

少し時間をおいて、彗星と小惑星を計三つ撮影。ひとつは光度のピークを迎えたZTF彗星(C/2020 V2)。周極星になっているので一晩中見えますが、高度の高い宵側での観察がいいでしょう。肉眼彗星として話題のZTF彗星(C/2022 E3)とは北極星を挟んで反対側。こちらは11等くらいです。当初撮影を予定してなくて(風よけのため)望遠鏡を建物に寄せて設置したため、撮影途中で隠れてしまいました。コマ数が少なく、画質は荒いです。

二週間ほど前にも撮影した小惑星98943 (2001 CC21)にも望遠鏡を向けました。こちらもあと一週間ほどで光度がピークですね。はやぶさ2#拡張ミッション応援・恒星掩蔽観測キャンペーンは3月ごろまで続くようです。

しめはやはりZTF彗星(C/2022 E3)。ずいぶん北に寄って、早い時間に撮影できるようになりました。尾の向きがどんどん変わるためフレーミングが南に寄ってしまいました。動きが速くアンチテイルも長いので、もっと焦点距離が短いほうが良さそうですね。2月に入ると宵空側に回ってきますから観察スケジュールをがらっと変える必要があるでしょう。なかなか忙しい彗星界隈です。

  • 20230125_ZTF彗星(C/2020 V2)

    A.25日夜のZTF彗星(C/2020 V2)
  • 20230125_小惑星98943 (2001 CC21)

    B.25日夜の小惑星98943 (2001 CC21)
  • 20230126_ZTF彗星(C/2022 E3)

    C.26日未明のZTF彗星(C/2022 E3)


ZTF彗星(C/2022 E3)・尾の向き
【2023.1.27付記】
いかに肉眼彗星とは言え、現在のZTF彗星(C/2022 E3)程度では市街地など光害が多い場所での撮影・観察の際に尾がはっきり見えるわけではありません。私のように勘(?)を頼りに構図を決める必要に迫られる方も多いでしょう。尾の向きを見誤らないよう、計算してみました(左図)。

これは「太陽と反対方向にのびる計算上の尾」の見た目の向き(天の北方向から反時計回りにはかった方向角:Position Angle)ですので、実際の尾とは少し異なると思いますが、目安になります。ただしこれは太陽引力の影響を受けにくいイオンテイルの向きです。(ダストテイルは引力で扇状に大きく広がったりカーブしますので、左図のような簡易計算では推し量れません。)

イオンテイルが目立ち始めた2022年12月は北方向から若干西に傾いた方向でしたので、PA=330°前後でグラフ通りです。今年1月中旬は北西方向・斜め45°あたりでしたからPA=300°+αで、これもグラフと合ってますね。下旬に入って急激に回転し始め、フレーミングに戸惑うことが多くなりました。真西(PA=270°)は1月27日、真南(PA=180°)は1月31日、真東(PA=90°)は2月9日あたりです。地球最接近を挟むこの期間は急激な変化ですのでご注意を。また長時間のメトカーフ合成では頭部が一致しても尾の方位角が変わってしまうため注意が必要です。


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