天気が崩れる前に惑星観察2022/08/20

20220819土星
昨日は快晴のまま夜を迎えましたが、天気はゆっくり下り坂。本日夜には雨になる予報です。夜半前に惑星くらいは観察できるだろうかと仮眠を挟んで22時前から準備。薄雲が空を覆い始めてましたが構わず撮影開始です。

まずは衝を5日過ぎた土星(左画像)。南中直前で気流もやや安定しているようです。衝の日の撮影よりきれいに仕上がりました。土星本体右上と環との間に隙間が見えますね。環に投影された本体の影です。環の左側(天の東側)にこれが見えると言うことは、太陽-地球の延長線上(衝の方向)より西側に土星が移動した証拠。たった5日間なのにこんな違いが見て取れるのです。撮影しませんでしたが、周囲に衛星も四つほど見えました。土星本体が衝と言うことは衛星たちも衝なので、本体からの離角が大きくなって見頃なんですね。

20220819木星
木星も撮影可能な位置に昇っていたのでついでに撮りました。住宅地上空だったせいもあるのか、なんだかもやもやしています。条件を変えて何パターンか撮って強めの画像処理をしましたが、それでも右画像程度。どうにも納得がいきませんが、仕方ない…。大赤斑が良く見えていました。8月中旬現在、大赤斑中心経度は24°前後(System2)でしょうか。木星本体すぐ南にカリストが写っています。

2.5時間ほど休憩を挟み、日付が変わって木星が南中するころ再びトライ。先ほどより薄雲が多くなっていてダメかなぁと思いつつも撮影続行。処理してみると意外に良く写っていました(記事下A画像)。木星左端の輝点はイオ。そしてイオの影が木星に投影されていました。露出がやや長かったので、イオとその影ともに公転でブレています。カリストも左画像からだいぶ移動していますね。

20220819カリストの影
ではカリストの影はもっと前の時間に木星に投影されていたんじゃないかという疑問が湧きますよね?計算してみると、驚くべきことに実は昨日8月19日が「カリストの影が投影される最終日」だったんです。ただし日本から見えない時間帯でした(※左のStellariumシミュレート図参照)。ガリレオ衛星の軌道傾斜はゼロに近いため、木星赤道面上にあると言っても差し支えないレベル。土星の環の傾斜を考えたときと同様に太陽から見た木星中心緯度が一定の範囲以上になると、四大衛星で一番遠いカリストの影は木星本体から外れてしまうわけです。

木星中心緯度の変化
大ざっぱには日心木星中点緯度がプラスマイナス約2.5°以内ならカリストの影が木星本体に引っかかるでしょう。(※実際はカリストの公転軌道傾斜も木星の赤道傾斜角もゼロではないため、この値はふらつきます。)右図は地心と日心とで木星中心緯度を描いたグラフ。今後太陽は木星の北半球側から照らすようになるため、カリストの影は木星南極側を素通りします。しばらくはカリストの影が見えません。次に見え始まるのは2025年5月下旬からです。ちなみに木星にはっきり見える環があったら、約6年周期で環の消失が起こることも右図から分かるでしょう。

木星撮影を終える頃は月の暈が見えるほど雲が出てしまいましたが、構わず火星も撮影(下B画像)。下C図として撮影時刻のStellariumシミュレーション画像も載せておきます。ちょうど子午線湾(アリンの爪/Fastigium Aryn)がクリアに見えていて驚きました。(※「アリン」についてはwikisourceのMars (Lowell)内の第三章[95]の記述に出ています。画像はここ。)今回は北極側の白い雲もしっかり写りました。今年12月1日の地球最接近日には夕刻に東から上った火星にこの模様が見えるはず。

このあと火星に寄り添って輝く月面も観察を…と考えていましたが、急速に広がる雲に追いつかれてしまいました。(本記事内の土星・木星・火星実写画像は全て同一縮尺です。)

  • 20220820木星

    A.木星(イオとその影が通過中)
  • 20220820火星

    B.火星
  • 20220820火星シミュレーション

    C.火星シミュレート


カリストの影が見える時期
【追記:少し深く考察】

カリストの影が木星本体に投影されて観察できる時期をもう少し具体的に考えてみました。まず太陽から見て木星とカリストが一回の公転ごとに離角が一番近くなる瞬間を求めます。(ただしカリストのほうが木星より太陽に近くないと影が映りません。“外合”はこの時点で徐外します。)

次にそれらの日時全てについて、角A(木星中心-太陽-カリストがなす角=太陽から見たカリストと木星中心の離角)および角B(木星の極方向の視半径)を求めます。角Aが最小のタイミングで角Bより小さければ、太陽とカリストを結ぶ線が木星本体を貫くことになるでしょう(右下図)。

カリストの影が投影されるには?(概略図)
実際は光の到達時間やカリストの縁による半影部分の広がりなど色々付随して考えなくてはなりませんが、そのあたりは簡易的にした上で自作プログラムによりグラフを描くと上のようになりました。 縦軸の単位は秒角です。これを見ればいつごろ見やすいか、木星中心付近を影が通過するのはいつか、等といった目処が立ちますね。

影が投影される機会の多いイオ、エウロパ、ガニメデと違って、カリストは公転周期が長くてなかなか影を投影する機会がない上に、機会があっても晴れ間の少ない日本で見える確率は更に少ないです。うまくチャンスを狙って四大衛星全ての影をゲットしてみてください。(注:グラフ下の日付は角Aが最小になる日(JST)ですが、全てのタイミングを書いてあるわけではありません。字が細かくなるので4回に1回の表記です。太陽から見たカリストは平均16日18時間で木星手前で最接近しますから、およそひと月に二回起こります。)


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