太陽中心がずれる話2020/12/25

太陽系重心と太陽中心
木星と土星の接近観察をまとめたり、あれこれ調べていたら、興味深いtweetを見つけました。伊勢原市立子ども科学館非公認ツイッター「天体感測室」@starfeelroomさんのつぶやきです(本記事末に引用)。

太陽系の天体は太陽の真ん中を固定して運動してるのではなく、互いにバランスを取りながら動き回ってます。したがって太陽自身も動いてしまいます。では「太陽系の中心(重心)」はどこなのか?太陽はどんなふうにズレてしまうのか?…これは少し前にJAXAのジェームズ・オドノヒューさんが作成した解説アニメーションが分かりやすいです。YouTubeで公開されてますからぜひご覧ください。

狩猟に使われるボーラという道具をご存知でしょうか?紐の先におもりを付け、それを複数結んだものです。回転させながら獲物の足めがけて投げつけ、紐を絡ませ動きを封じるんですね。このボーラの回転する様がまさに太陽系を彷彿とさせます。前述の動画では木星と土星というふたつの巨大惑星のみ描いてありますが、実際は全ての惑星、小惑星、衛星や彗星に至るまでバランスの綱引きに参加しているわけです。大小様々なおもりを付けたボーラは、どこを中心にどんなふうに動くのか、という話です。

最初の「天体感測室」さんツイートにもどると、重い木星と土星が同一方向にあるのだから、太陽はその反対にずれてバランスを取っているはずだ、という旨が図とともに記してありました。なるほど言われてみれば確かにそうだよねぇ…と感心したわけです。

で、こういうのは具体的に計算したり作図したほうが理解が進むので、クリスマスそっちのけで作図してみたのが記事冒頭の図でした。同様の図がwikiの「Barycenter」(英語)にもありますが、期間が古いですね。(※あと「Motion of the Solar System's barycenter relative to the Sun」ではなく「Motion of the Solar barycenter relative to the Solar System's barycenter」ではないかと…。)私の図では2020年の1年間を赤紫太線にしてあります。横軸正の向き(春分=0h)を基準に、反時計回りに赤経を当てはめられます。12月の木星&土星は概ね20hの方向なので、この図では5時方向あたり。他の惑星もあるから全くの正反対ではありませんが、太陽は原点に対して巨大惑星たちと逆側に離れていることが分かるでしょう。図の中央、オレンジ領域は太陽の大きさを模しています。つまり現在の太陽中心(重心)は、「太陽系重心」から太陽直径ほども離れているわけですね。これって、衝撃的?

それから(当たり前ですが)バランス綱引きは概ね黄道面に沿って行われます。冒頭図の平面は天の赤道面ですから、太陽中心は図に対して上下方向にも運動し、それは概ね黄道面の向きに沿っていることになります。青線と赤線が上下できれいに分かれているのはこの反映と考えられるでしょう。

太陽系重心と太陽中心の距離
国立天文台「暦計算室 > 暦Wiki」にも同様の図があります。一緒に載っている「太陽から太陽系重心までの距離」の図にも注目してみましょう。こちらはスパンが長すぎて分かりづらいので、冒頭図と同じ1950-2050年の様子を右に示しました。

木星と土星の会合はおおよそ20年周期。今年を基準に20年ごとの距離を見てゆくと、確かに太陽半径(図の0.5ライン)より飛び出る傾向にあるけれど、必ずしも極大ではありませんね。今年はたまたまタイミングが合っていた、ということでしょう。それよりも私は極小タイミングに驚きました。冒頭図でも分かりますが、1980年、2000年、2020年…という年は太陽中心がオレンジ領域の外部にあるのに対し、1970年、1990年、2010年…という年は見事に内部。特に1990年や2030年は太陽重心と太陽系重心とがかなり近くなってる…どれほどの偶然が重なった結果なのだろうかと感心することしきりなのでした。



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