星で視力検査2020/12/09

20201221視力検査
今月の木星と土星の超接近を観察しながら、星空で視力検査みたいな体験をしよう、というおもしろ企画があります(→「惑星で星空視力大実験!!!〜木星・土星"超"大接近観測プロジェクト〜」)。まずは星空に興味を持ってもらうことを第一にしているイベントのようですが、少しだけ踏み込んで「星空の下では人の視力はどのくらい変化(低下)するのか」ということを探る機会でもあるようです。

目の検査などでよく使われるランドルト環検査で、Cの字のような隙間の方向がどちらか判別できる能力は明所視環境下の視力です。これに対して、薄暗い環境(薄明視)や星空観察のような暗がりの環境(暗所視)では視力が変わると言われます。ランドルト環による明所視視力の数値は、隙間の離角を「分角」で表したときの逆数。つまり1分角の隙間が見分けられれば視力1.0になり、2分角なら視力0.5(=1/2)です。

"超"大接近観測プロジェクトサイトのなかに説明されてますが、ここでは「星空視力」を定め、基準視力(明所視視力)から3倍低下したと仮定した数値が書いてあります。実際そうなのかは分かりませんし、対象が惑星のような明るいものと肉眼ぎりぎりの5等台とではまた違うでしょう。個人的には「極端な等級差がある場合、視力低下に影響があるか」に興味があります。

【肉眼二重星/抜粋】
肉眼二重星名称離角(分角)星空視力基準視力
やぎ座
α1・α2
6.350.0520.157
さそり座
ω1・ω2
14.620.0230.068
さそり座
μ1 ・μ2
5.780.0580.173
おうし座
θ1・θ1
5.620.0590.178
おおぐま座
ミザール・アルコル
11.800.0280.085

  • プロジェクトに倣い、星空視力=基準視力÷3としてあります。

それで、言いたいことなんですが…せっかく木星と土星の超接近を観察するなら、すぐ側にある「やぎ座α星」も見てください!!…お気づきの方はいらっしゃると思いますが、明記してある記事や広報を見たことがないから、あえて書いておきます。

やぎ座α星は言わずと知れた数少ない肉眼二重星です。右表に掲載した通り、離角も今回の木星と土星の最接近時とほぼ同じ。等級はα1が4.4等、α2が3.6等。似たような離角に対し、方や1等より明るく、方や3等以下という二種類を比べるのに絶好の機会ではありませんか。なぜここをもっとアピールしないのでしょう?もったいない…。

実は昨日の記事画像にもしっかり写っていますよ。快晴なら、21日当日には当記事冒頭図(Stellariumによるシミュレート)のような位置関係で見えます。翌日もほぼ同じ。やぎ座α星は木星&土星から8°ほどしか離れていません。肉眼で無理だったら双眼鏡で探してみましょう。やぎ座β星も約3′角離れた二重星ですが、片方が6等以下のため望遠鏡が必要です。(β星が肉眼で分離したら相当すごい!)なお昨日記事のデータをもとに調べると、木星土星がやぎ座で会合するケースは緩やかな周期性があり、2080年3月と2934年3月は今回同様α星に近くなります。つまり次に二種類の等級における星空視力比較が可能なのは60年後ということですね。

車の運転免許を取得する視力条件は片目それぞれ0.3以上、両目0.7以上。免許を持っている方は星空視力に換算しても今回の木星土星、やぎ座α星は難なくクリアでしょう。免許で視野角150度以上という項もありますが、夕空に集結している外惑星(西から順に木星、土星、海王星、火星、天王星)は100°角内に収まっていますから、全部いっぺんに見えて当然!?!?