雲間の細月と土星2023/06/21

20230620_02527月
昨夕から今朝にかけ断片的に晴れたものの、終始薄雲が取れませんでした。そんな中、久しぶりに細い月に出会えました。

左は20日19:20頃の撮影で、太陽黄経差は約25.27°、撮影高度は約16.32°、月齢は2.24。一日前にも晴れ間があったので待機したものの日没近くから皆曇。それだけに昨夕の月は感激も一入です。ただ、すぐ下方に薄雲が湧いて次第に拡大しつつあったため、市民薄暮終了前から大慌ての撮影でした。

画像を見ると右やや下側から照らされているように感じます。月の弦が真っ直ぐ立っておらず、構図を間違えたようにも思えるでしょう。でもこの画像は間違いなく月の自転軸を垂直にしてあります。実際の太陽は月赤道面の北側、月面緯度1.329°方向から照らしており、数値だけ見てふつうに考えたら右上から照らされると勘違いしてしまいそうです。でも月赤道面が向こう側へ倒れている…つまり緯度秤動が南に大きく傾いているため、この画像のように見えるのです。照明と立体物の関係を頭の中に想像(創造?)できないと難しいですね。

経度秤動は比較的小さいので裏側が見やすいほどではありませんが、ガウスやフンボルトなどしっかり見えています。ガウスの手前、ハーンに大きな穴が空いてると錯覚してしまいましたが、これはセンターピークの影でした。フンボルトから北東に伸びるフンボルト・チェーン・クレーターらしき影が見えるような気がしますが、定かではありません。迫る雲の影響もあってシーイングが悪すぎました。フンボルトの左上、「C」のように見えるのはフィリップスD。CなのにDとはこれいかに!?フンボルトの左下にはルジャンドルやアダムスが続きますが、アダムスはクレーター内がまだ夜、縁だけ所々点々と光っているのが印象的。

20230621土星
南のカスプ付近、南極域にも距離を置いて光点が確認できます。裏側から照らされているにも関わらず反対側の地球から視認できるなんて、相当突出した地形なのでしょう。ぜひ特定してみてください。

夜中に晴れ間があったら色々観たいと望遠鏡を出しっぱなしにしておきましたが、安定した晴れ間は訪れず終い。せっかくなので隣家から昇った土星を撮影しようと準備したら、あっという間に雲量8割…。右はわずかな雲間から撮影した土星です。大きな揺らぎは無かったものの、細かなシーイングの乱れは収まりませんでした。登ったばかりの木星も数分で雲にかき消されました。

今年は「ぎりぎり夏至」2023/06/21

夏至の日付変化
本日は2023年の夏至。でも太陽系のどこかがほんの少し違っていたら、明日になっていたかも知れません。

2022年3月21日記事で、二十四節気(瞬時)が日付境界にとても近い「ぎりぎり二十四節気」というのをご紹介したことがあります。地球が太陽を1年かけて周回する360°を15°ずつ区切り、到達日時を計算したのが計算上の二十四節気瞬時。公転は様々な影響を受けてふらつきが生じるため、同じ節気でも毎年日付や時刻が変化します。

左上図は1800年から2200年までの夏至を計算してグラフにしたもの。縦軸が年と月を取り去った「日時(JST)」を表します。(時刻は小数換算。例えば1日12:00:00なら1.5、23日19:48:00なら23.825。)この範囲での夏至瞬時は20日以上・24日未満に収まっていますね。細かいギザギザは閏日挿入による変化です。

今年の夏至瞬時は21日23:57:49(※あくまで個人計算)です。22日になるまで残り2分11秒しかありません。図を見ると似たようなことが1903年にも起こっており、このときはわずかに日をまたいで23日0:04:15でした。これだけ細かく上下してるのですから、二十四節気のどれかがギリギリになる事態は少なからず起こるでしょう。個人的な最大の関心は「2030年の雨水」。 計算上の瞬時は2月18日23:59:56ですから、秒の桁を切り捨てるか、四捨五入するかで日付が変わってしまいます。その頃までに閏秒がどうなっているかによっても変わるでしょう。国立天文台がどう判断するか楽しみ。

参考:
日出没・暦関連の記事(ブログ内)
ユーティリティ「太陽と月の時刻表/夜空の時刻表」