オリオン宇宙船に検出成功2022/12/09

20221208アルテミス1・オリオン宇宙船
昨夜は満月夜で明るい空でしたが、アルテミス1・オリオン宇宙船の撮影好機でもあったのでチャレンジしてみました。あっさり写ってしまい(左画像)、いささか拍子抜けです。ちなみに、淡い月暈が見えるほど雲が出ていました。

6日のフライバイを終えて地球に帰還する途中のオリオン宇宙船は、月周回軌道を離れ、現在はくじら座の頭付近にいます(下A画像/ステラナビゲーター使用/位置データはJPL-HORIZONS_rev.2022.12.07/日付マーカーは各日0:00JST)。この図は2022年11月17日記事の図の最後の5日間に相当し、2022年11月21日記事のB図の続きになります。6日以降いったん月平均距離より遠くなったあと、4日ほどかけてゆっくり地球に接近して、最後の一日は急速に地球へ落下する訳ですね(下B画像/丸点は各日21:00JSTの距離)。このとき南極側を通る軌道のため、日本から見るとどんどん南下するのです。

状況にもよるけれど、移動天体は基本的に地球に近づくほど明るくなります。ですが見かけの移動速度も速くなるので点像に写すには露出を切り詰めなくてはいけません。撮影機材との折り合いをつけつつチャレンジしなくてはと考えていました。動く天体の撮影は機材の限界等級までは写らないため、神経使いますよね。幸い宇宙船は10日ごろまで地球接近小惑星と同程度の速度で、小惑星ほど黒くもありません。また新月期に月へ向かったときと違って太陽がたっぷり当たる角度で帰還するため、10日夜まではチャレンジする価値があるな考えました。(※11日夜は南に低すぎます。)

一昨日は月が近かったので行いませんでしたが、40°角ほど月が遠ざかった昨夜21:30プラスマイナス20分に撮影してみると、かなり明るい天体が予想位置ぴったりに写っていました。宇宙船基準ではなくメトカーフコンポジットのため宇宙船の非線形の動きが出てしまいましたが(→後述追記参照)、まぎれもなくオリオン宇宙船でしょう。よかったよかった。明るさが分かったので、天気の具合を見つつ今夜以降もチャレンジしたいと思います。12月10日夜なら、おそらく10cm-15cm・F4-6程度の望遠鏡でも写せるんじゃないでしょうか。

  • オリオン宇宙船・測心位置

    A.オリオン宇宙船・測心位置
  • オリオン宇宙船・測心距離

    B.オリオン宇宙船・測心距離


昨夜は満月+火星の衝でしたので、一晩前同様、両天体も観察しました(下画像)。シーイングは前夜より少し落ち着いていたけれど、やはり冬独特の乱れ方でした。

下Cは22:40ごろの撮影で、太陽黄経差は約184.41°、撮影高度は約71.64°、月齢は14.61、満月瞬時からおよそ9.5時間後になります。右側が欠け始まっていますが、以外にも南極側に欠けがたっぷり残っていることに驚かされました。

火星は23:10ごろの撮影で、黄経衝の約8.5時間後、輝面比はほぼ変わらず0.9998。前夜よりコントラスト良く写ったようで、子午線湾がクリアに見えていますね。日々見ていると北極にかかる雲がどんどん形を変えていることが分かります。もうしばらく火星が見やすい時期が続くので、時おり観察しようと思います。

  • 20221208_18441月

    C.8日夜の月
  • 20221208火星

    D.8日夜の火星
  • 20221208火星マップ

    E.火星シミュレート


オリオン宇宙船の小さな動き
【追記】上のオリオン宇宙船の小さな動きが気になったので詳しく調べてみました。何を調べたかと言うと「12月8日21:00と22:00の2点のみの宇宙船位置だけを基準に、均等にずらしながらメトカーフコンポジット」したとき、「実際の宇宙船位置がコンポジット原点に対してどんなズレを生じるか」ということです。

移動天体のスタックに使われるメトカーフ法では、通常最初と最後のコマの天体位置から途中の位置を比例的に導きますので、等速運動ならほぼ一点にスタックされるはず…つまりズレは無いはずです。

実際に1分置きに計算すると、ズレ量は左図のように細長い楕円(?)上を一周する形になりました。(※天の赤道に近いため、直交座標表示です。)もちろん最初と最後のみズレはありませんから原点に一致します。赤経方向のズレ最大量は1秒角もないため原画上でも2ピクセルも無い程度ですが、赤緯方向は8ピクセル内外に及び、無視できない量でした。なぜこんな動きなのかは分かりませんが、1時間を越えない露出時間内でもまっすぐ動いている訳ではないことが分かるでしょう。


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