ハアパイ火山噴火の波紋2022/01/26

20220115トンガ噴火(気象衛星ひまわり可視光)
トンガのハアパイ火山噴火から10日あまりが過ぎました。日本まで到達した津波の経緯もいまだはっきりしませんが、スタート地点がこの火山であることや通常の地震による(海を伝わる)津波より早く到達したことなどは事実のようで、これまで私達があまり経験したことのない大規模現象だったのですね。

あちこちで気象衛星ひまわりやGOESが撮影した噴火の衛星画像をご覧になった方も多いでしょう。また、一連の衛星画像を動画にした例も散見されました。左は13:00から16:00まで10分おきに撮影されたひまわり全球画像をGIF動画にしたもの(元画像:NICT)。クリックしてご覧ください(※容量注意:2MB近くあります)。これは可視波長の撮影で、湧き上がる噴煙とともに爆風に伴う衝撃波が伝播する様子も分かります。短時間のうちに雲が濃くなったり薄くなったりしたのですね。離れたところで何十hPaも変わったわけではないのでしょうが、規模の大きさに恐れ入ってしまいます。

一連の動画を何十回も見ているうちに、最初の一波だけの単純なものではなさそうに見えてきました。そこで、可視波長以外の画像を使い、直前(10分前)の画像との差分を取る方法を使って微小な波紋まで検出できないか試みました。幾つか作った中で一番見やすかったバンド9の差分動画を右下に掲載します(元画像:RAMMB)。クリックしてご覧ください(※これも容量注意:2MB近くあります)。

20220115トンガ噴火(気象衛星ひまわりB09)
波紋がだいぶ見やすくなりました。ブログの容量制限があってこれ以上大きく表示できないのが残念ですが、それでも最初の一波だけではなく後続の波紋が幾重も連なっていることが分かるでしょう。主な波紋だけカウントしても10本近くあります。(※差分で変化点を抽出してるわけですから、上昇と下降の2本で一つの波になるのでしょう、多分。)可視光では分かりませんでしたが、ちゃんと火山の向こう側へも向かっていますね。噴火から3時間経っても中心から波が出続けていることに驚かされました。バンド9は中心波長6.9μmで上層・中層の水蒸気量を観測しています。この波紋はバンド8から10まで全てで明確に検出できました。

動画に示した3時間の間でも伝播速度に変化があるかも知れないと思い、試しに15時と16時の第一波位置と思われるところを測ってみました(下A・B画像)。画像中の赤線は火山からの等距離円で、500km間隔です。水色矢印が第一波先端と思われるところ。それぞれの位置まで伝わるのに950km/h、1033km/hでした。だんだん加速したのか、画像の読み取り誤差なのかまでは分かりません。当然方角によっても速度差が生まれるでしょう。続く波紋が一定間隔ではないことも気になる点です。

各波紋の開始時間がみな同じとは限りませんし、火山から各方位へ向かう波が等速で伝播するとも限りません。特に日本と反対方向へ向かった波が一周して大陸側から日本へ伝わる場合は海のない凸凹したユーラシア大陸を延々と渡ってきますから、速度や威力が変わる要因は幾つも考えられるでしょう。大気の状況だってムラだらけですし、なにより地球は自転していますから大気の厚みも一定ではありません。静かな水面に小石を落としてできる綺麗な波紋のようには行かないことくらい素人でも想像つきます。

大気といえば、噴火で放出された汚染物質も気になります。下C図はNOAAサイトからの引用で、噴火日から三日おき24日までの二酸化硫黄分布(南半球のみのトリミング)。火山と同緯度を偏東風(貿易風)にのって西へと移動していることが分かります。昨日の時点で南米大陸まで到達しました。貿易風の特徴だから仕方ないけれど、分布位置が少しずつ北上していることも気になります。今回は火山噴火でしたが、大きな隕石落下でも同様の大気波紋が発生すると思われ、どこへ落下するにしても今回のように海を伝わる以外の要因の津波が発生する可能性もあるでしょう。十分な研究がなされ、次に同様のことが起こったときの知見基盤にしてほしいものです。

  • 220115-1500JST_衝撃波先頭位置

    A.噴火から2時間後
  • 220115-1600JST_衝撃波先頭位置

    B.噴火から3時間後
  • 二酸化硫黄の移動

    C.二酸化硫黄の移動


参考:
ハアパイ火山の噴火と津波のこと(2022/01/17)

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