虹星の正体 ― 2021/10/01
左画像は何だと思いますか?
10月になると天文薄暮終了ごろにぎょしゃ座のカペラが登ってきます。晴れていれば北東の低空にひときわ明るく輝くのですぐ見つけられるでしょう。この画像は強拡大で撮影したカペラなのです。
低空のカペラは瞬きによって様々な色に見えることから「虹星」の異名があります。別にカペラじゃなくても虹星になるのですが、日本くらいの緯度で「肉眼で色変化が見える明るい星」「瞬きが激しい時期に低空に留まる時間が長い」「人間が起きている時間帯に見える」「赤過ぎず青過ぎずバランス良い星」と言った条件を考慮すると、カペラは目に止まりやすい筆頭株として君臨するのでしょう(→関連記事参照)。
左画像はこれでもピントがバッチリ合っています。上空にあれば本来の丸い点像になりますが、このときの撮影高度は約14.7°前後。これだけ低いと大気のプリズム効果で上下方向に色分離してしまうのです。この画像は上方向が天の北方向のため、撮影時は右上が天頂方向、左下が天底(地面)方向。したがってずれる方向も斜めになります。緑光を中心に考えると、青寄りほど上にずれ、赤寄りほど下にずれてます。日出没時の太陽上辺に見える、いわゆる「グリーンフラッシュ」「ブルーフラッシュ」の原因にもなる大気現象ですね。
元々はカペラを動画で撮影したもので、スタックなどしてないひとコマ。本当に興味深いのは元の動画なんです。虹星の所以は「虹色に分離するから」ではなく、「短時間で様々な色に変化するため」なんですから。ここでは異なる露出で撮影した画像を下A・Bとして掲載しました。それぞれ200フレームぶんを同一速度で再生してます。色の比率や像の乱れ、星の位置が目まぐるしく変化しているでしょう?肉眼では全体形状や位置の変化までは分かりませんから、色合い変化だけが目に残り「虹色に瞬いている」と知覚するわけです。(※可能ならこのPC画面を10メートルくらい離れて疑似観察してください。)これが「虹星」の正体ですね。
また、ひとコマあたりの露出をごく短時間にして撮影したB画像に対して、少し長めの露出のA画像のほうが形状や色合いが少し安定します。もっと長くすると更に安定しますが、相反して全体がボケて拡散したり白飛びしてしまいます。どの設定で折り合いをつけるかは光学系や気象条件に左右されますが、月や惑星を鮮明に撮影する条件を見定めるのに大切なポイントですね。動画スタックが当たり前になった時代。悪シーイングがデフォルトの日本では何万フレーム撮影しようが「正解がひとつもない」わけで、丁寧にアラインメントしても雲で彫刻像を仕上げるような話。単純に露出が速ければいいというものではないように思われます。
10月になると天文薄暮終了ごろにぎょしゃ座のカペラが登ってきます。晴れていれば北東の低空にひときわ明るく輝くのですぐ見つけられるでしょう。この画像は強拡大で撮影したカペラなのです。
低空のカペラは瞬きによって様々な色に見えることから「虹星」の異名があります。別にカペラじゃなくても虹星になるのですが、日本くらいの緯度で「肉眼で色変化が見える明るい星」「瞬きが激しい時期に低空に留まる時間が長い」「人間が起きている時間帯に見える」「赤過ぎず青過ぎずバランス良い星」と言った条件を考慮すると、カペラは目に止まりやすい筆頭株として君臨するのでしょう(→関連記事参照)。
左画像はこれでもピントがバッチリ合っています。上空にあれば本来の丸い点像になりますが、このときの撮影高度は約14.7°前後。これだけ低いと大気のプリズム効果で上下方向に色分離してしまうのです。この画像は上方向が天の北方向のため、撮影時は右上が天頂方向、左下が天底(地面)方向。したがってずれる方向も斜めになります。緑光を中心に考えると、青寄りほど上にずれ、赤寄りほど下にずれてます。日出没時の太陽上辺に見える、いわゆる「グリーンフラッシュ」「ブルーフラッシュ」の原因にもなる大気現象ですね。
元々はカペラを動画で撮影したもので、スタックなどしてないひとコマ。本当に興味深いのは元の動画なんです。虹星の所以は「虹色に分離するから」ではなく、「短時間で様々な色に変化するため」なんですから。ここでは異なる露出で撮影した画像を下A・Bとして掲載しました。それぞれ200フレームぶんを同一速度で再生してます。色の比率や像の乱れ、星の位置が目まぐるしく変化しているでしょう?肉眼では全体形状や位置の変化までは分かりませんから、色合い変化だけが目に残り「虹色に瞬いている」と知覚するわけです。(※可能ならこのPC画面を10メートルくらい離れて疑似観察してください。)これが「虹星」の正体ですね。
また、ひとコマあたりの露出をごく短時間にして撮影したB画像に対して、少し長めの露出のA画像のほうが形状や色合いが少し安定します。もっと長くすると更に安定しますが、相反して全体がボケて拡散したり白飛びしてしまいます。どの設定で折り合いをつけるかは光学系や気象条件に左右されますが、月や惑星を鮮明に撮影する条件を見定めるのに大切なポイントですね。動画スタックが当たり前になった時代。悪シーイングがデフォルトの日本では何万フレーム撮影しようが「正解がひとつもない」わけで、丁寧にアラインメントしても雲で彫刻像を仕上げるような話。単純に露出が速ければいいというものではないように思われます。
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A.100ms/フレーム -
B.5ms/フレーム