電子捕獲型超新星がついに特定されました2021/06/29

20180307_SN2018zd(NGC2146)
3年あまり前の2018年3月2.486日(UT)に板垣公一さんがNGC2146に発見したSN2018zdが「電子捕獲型超新星」であると分かったそうです。このタイプの超新星は質量の小さな恒星の最期(白色矮星)と、質量の大きな恒星の最期(爆縮崩壊型超新星)の『境界』に位置するものとして特徴的な振る舞いを見せ、今後注目を浴びそうです。

これまで電子捕獲型超新星の候補として挙げられていたのは、M1(かに星雲/下A画像)のもととなった1054年の超新星のみとのこと。つまり、近代的観測機器が発達した以降では今回が初めてになります。もちろん宇宙全体でどれくらいの頻度で発生するか、崩壊過程で実際に起っていることの追求等は今後のテーマになるでしょう。 今回発見された電子捕獲型超新星候補SN2018zdの詳細については、論文が掲載されたNature Astronomyをご覧いただくか、概要を解説している各機関のページ(京都大学東京大学国立天文台)などをお読みください。

個人的に最もエキサイトしたのは論文内容そのものよりも、私にとって他でもない身近な超新星観測者/捜索者である板垣公一さんや野口敏秀さんの発見や観測がこの新境地を開くきっかけになっているという事実。特に、同じ天文同好会である(の)さん、こと、野口さんから連絡をもらって自分自身もSN2018zdを初期から撮影できたということは、何にも代えがたい体験なのです。

冒頭画像は2018年3月6日夜中近くに撮影したもので、光度最大になる直前です。下B・Cに、野口さんご本人からお借りしたSN2018zdの初期画像や光度測定図を掲載しました。一見して普通のTypeIIに見えるのですが、恒星進化の分かれ目になる超新星だなんて思いもよりませんでした。機械化・AI化・組織化が進む天体発見の現場で、今もなお最先端を切り開く日本のアマチュア天文家の存在は驚きと感動を与え、長期に渡る地道な努力の大切さや人間の可能性を教えてくれます。同時代に生きることができて本当に良かったと感じます。

  • 20171026_M1_かに星雲

    A.M1(かに星雲)
  • 20180302_SN2018zd

    B.野口氏によるSN2018zdの
    最初の光度測定画像
  • SN2018zd光度曲線

    C.野口氏によるSN2018zd光度曲線