今日の太陽2017/06/09

20170609太陽
昨夜半までは晴れ間があったのですが、夜半からは雲に覆われてしまいました。今日は午前中雲が多かったのですが、昼から快晴に転じました。梅雨入り宣言後、中一日での晴れ間です。

20170609太陽リム
左画像は13:45過ぎの太陽。活動領域12661は中央を越えましたね。所々にダークフィラメントが見えますがリムにはあまりプロミネンスがありません。

すっぱいイチゴの満月夜2017/06/09

20170609_18068月
今夜9日は満月夜。夕空湧いた雲がしつこく残り、22時過ぎの満月の瞬間は雲の中でした。でも1時間ほど待つと雲も途切れ、ちょうど南中を迎えた素晴らしい満月を拝むことができました。左画像は23:35頃の撮影で、太陽黄経差180.68°、撮影高度35.5°、月齢は14.79。低空ではありましたが、色彩が感じられる初夏の満月でした。満月であっても南側(下側)が欠けているのが分かりますね。撮影中に「とても小さいなぁ!」と感じたのですが、後ほど計算したら今年最小の満月だったんですね。(ちなみに今年最大は12月4日の満月です。)

『今回の満月はストロベリームーン』というニュースをあちこちで耳にしました。2016年6月21日の記事に様々な満月の呼称を載せたのですが、年に関係なく6月の満月は「Mead Moon」「Strawberry Moon」「Rose Moon」「Thunder Moon」と言った呼び方があります。

『6月の満月は高くならず、夕日のように赤く見えるからストロベリーなんだよ』といった解説もまことしやかに流れていました。本当でしょうか?月は出没するとき必ず低い所を通るから、日時や月齢に関わらず赤味を帯びた時間が必ずありますからね。満月の呼び名は農事暦のニュアンスを含むので、本来は月が赤いかどうかではなく、苺の収穫期やバラの開花シーズンを表現したのだと思います。ただ「6月の満月は空高くまで登らない」というのは本当のこと。それを解説しましょう。

南北がひっくり返るとややこしいので、ここでは日本など「北半球中緯度」で考えます。南の空を通過する(天頂より南側にある)恒星の高度が最大となるのは空の南北を結ぶ線(子午線)に到達したとき、つまり南中の瞬間。それ以外では必ず南中高度より低くなります。この場合、「最大高度=90度−観察地緯度+天体赤緯」となることが知られています。例えば北緯35°で見た赤緯+20°の天体は高度75°より高くなりません。

現在は月齢に関わらず月の地心赤緯が30°を越えることはなく、従って奄美・沖縄地方を除く日本の大部分で天頂より南側を通ります。空を通過する半日ほどの間に月の公転による赤緯変化がありますが、日周のほうがはるかに速いので恒星と同様に考えて良いでしょう。すなわち、満月の瞬間の赤緯を計算することで「満月がこれ以上高く見えない」という限界を知ることができるのです。

満月時の地心赤緯
そこでプログラムを作って1900年から2100年に起こる満月(全2486回)の赤緯を計算、一年という期間の中でどんな分布になるかグラフにしました。それが右図です。例えばある年の1月4日(年始との日差=3)に赤緯+20°で満月となった場合、座標(3,20)にドットを描く、といった具合。ドットは約50年ごとに色を変えました。前述の公式から、右図の縦軸に「90度−お住まいの緯度」を加えれば、みなさんが住む街で満月が最大何度まで登るかというグラフになります。

図から分かるように、年号に関わらず175日目付近で赤緯が極小、350日目付近で極大という分布になりました。月日に直すと6月下旬と12月中旬ですね。6月下旬前後に起こる満月が年間でいちばん低く、12月中旬前後ではいちばん高くなる傾向が統計的結果でした。またひとつの時期に注目すると約10°の赤緯幅があります。「低い」といわれる6月満月にも、年によって上下差があるわけです。

ストロベリームーンの高度差
ひとつの基準としてさそり座のアンタレス(赤緯約−26.5°)と比べると、近年では2004年から2008年の初夏満月がアンタレス以下の赤緯でした。(※その近くの期間に月がアンタレスを隠す掩蔽現象が何度も起こっています。)今年の6月満月はアンタレスより8°近くも高い赤緯。だからもし「低空で赤い」ことがストロベリームーンの理由だとしたら、今夜の満月は「まだ熟してなくて酸っぱい」はず!?こうした上下変動があるので、恒星掩蔽が起こる時期と起こらない時期とが長い周期でくり返されるのです。

次に赤緯が低くなるのは2023年から2027年ごろ。一例として左にStellariumによる今夜と2025年6月満月の比較星図を載せました。同じストロベリームーンながら、高度差が歴然です。そうそう、くだらない(?)疑問なのですが、6月満月が「ブルームーン」だった場合、月は何色と表現したらいいのでしょうかねぇ…?赤+青でブルーベリー色かな!?(※2007年6月30日が月間重複のブルームーンでした。)

20170609月の南極
【余談】
満月とは全く関係ありませんが…今回の満月の欠けた側、つまり南極側をつぶさに観察すると、南極探検で名を馳せたアムンゼンさんとスコットさんの名を冠したクレーターが見つかりました。撮影時の月面中央緯度(測心)は−5.6°であり、かなり月の南極側をのぞき込んだ状態だったため、ふだん全く見えないアムンゼン・クレーターまで見ることができたのです。これらの話題は2015年8月31日の記事に詳しく書いてあります。ご興味ある方はどうぞ。