冥王星の衛星もずれるStellarium&昨夜の3Iアトラス2025/07/30

20250730冥王星シミュレーション
少し前の天リフ作業配信で冥王星のカロンがアマチュアレベルの望遠鏡で写るかどうか話が出ていて、興味をそそられました。少し古い記事ですがDeep Sky Memoriesさんのチャレンジもすばらしい。

普段から手動での導入にこだわってきた私にとって、14等台の冥王星に望遠鏡を向けることがハードル高いと感じます。今はやぎ座にいるから赤緯は決して高くなく、10年後もまだやぎ座。色ズレ対策は必須かなぁ、うーん…などと考えつつも、昨晩は導入法をあれこれ思い描いてました。

普段遣いのミューロン210による重星撮影で、これまでの最小離角は1″台の半ばが限界でした。例えば右下画像はかに座のζ1星(2021年2月27日撮影)。三重星系で、左上に6.27″離れたC星系は問題なく分離しますが、右の雪だるま状になってるA・B星系は離角1.11″。レイリー・リミットの団子図みたいになっていて、分離してるとは言い難いですね。冥王星とカロンはこの半分。そして、ずっと暗いのです。露出が長くなるぶん、ブレも大きい(PSFの山が低く裾野が広い)でしょう。

20210227_ζ1Cnc
ところでカロンの位置をどうやって確かめるのか、という問題は生じないのでしょうか。先日のTaizoさんによる「Janus(ヤヌス)チャレンジ」と同じ問題です。離角はともかく方向角が分からなければ、楕円に写ってもそれがカロンなのか望遠鏡のブレなのか判別できませんよね。カロンは既に1978年に発見されていましたが、探査機ニュー・ホライズンズが接近して冥王星観測したのはわずか10年前。その成果を解析して天文暦に微調整が加えられたとしても極く最近のことと思われます。(私が知る範囲では2024年に改訂されています。)ちなみに衛星位置が比較的正確と思われるWinJuPOS(惑星観測家ご用達のソフト)では冥王星がメニューにありません。観測する人がいないと思われます。

さっそく最新の冥王星衛星群を記録する天文暦を使って自前計算したものと、Stellariumとを比べてみたのが冒頭のシミュレート画像。サンプルとして本日7月30日0:00JSTから三日間の位置です。赤線軌道はStellariumの表示、黄色点列(6時間間隔)は私の計算。この計算値はJPL-HORIZONSにてダブルチェックしており、少なくとも秒角の1/10の精度で合っています。(※これより小さな精度までHORIZONSで表示できないため確認できません。)全て反時計回りに公転してましたが、ご覧のように各衛星とも最大0.2秒角内外の位置ずれがありますね。『だいたい合ってる』ところが騙されやすいポイント。別にStellariumをディスってる訳じゃなく、がんばって改善して欲しいのです。(使ったことないけれど外部の天文暦を組み込めるようになってるみたいなので、きっと対応は進んでいるのでしょう。)現時点では自分で計算ソフトを作るか、JPL-HORIZONSなど精度が信頼できるwebなどを利用して計算するしかありませんね。

20210920_0330天王星の衛星
カロンはStellariumの表示より内側を回っていて、想定より離角が小さいようです。また地球から見て冥王星に近い時と遠い時があるため、遠い時を狙って撮影するほうが良いかも知れません。カロン以外は全て20等より暗いのでアマチュアでは無理でしょう。なお天王星や海王星の主な衛星はアマチュアの望遠鏡でも問題なく狙えますから試してみてください。左画像は天王星とその衛星のGIF動画です。(→参考:2021年9月20日記事参照。)

さて、昨夜は雲がありましたが、南側は少なかったので天文薄明終了前から3Iアトラスを狙ってみました。前回同様にMAK127での撮影ですが、前回よりも格段に写りが良くなっていました。明るくなった訳ではなく、透明度が良かったのでしょう。下B画像はAladin Liteによる事前点検。飛行ルート近傍に15等以上の恒星がなく、メトカーフ合成しても上書きされない絶好のチャンスだったのも幸いしました。

  • 20250729_3I/ATLAS

    A.7月29日の3I/ATLAS
  • 20250729_3I/ATLAS

    B.事前シミュレート


津波警報2025/07/30

20250730カムチャッカ半島周囲の地震マップ
朝にいきなり津波警報が響いて驚きました。カムチャッカ半島近くで大きな地震が起き、太平洋沿岸各地に警報が出たとのこと。太平洋に面する当地・茨城は警報でした。

左はUSGSによるここ一週間にカムチャッカ半島周囲で起きたマグニチュード1以上の地震。左サイドに出ているマグニチュード8.8が、朝の警報の主です。色分けは経過時間区分で、赤は本日(30日0:00UTC=9:00JST)、オレンジは昨日。

  • 発生時刻:2025-07-29 23:24:50 (UTC)
  • 震央:52.530°N 160.165°E
  • 深さ:20.7km
  • ※USGS発表値なので、気象庁発表と異なる場合があります。


20250730カムチャッカ半島周囲の地震グラフ
右図は時間経過に沿った地震発生分布(23日9:00〜30日12時JSTまで/経度範囲:150-165度・緯度範囲:45-55度の集計)。横軸日付はUTC区切り。図には52回の地震が載っており、その中で本日9:00JST少し前に本震発生、その後も強めの地震が発生してます。

Mag8.8だと東日本大震災並ですから心配です。津波は遅れて何回も来そう。被害が少ないとよいのですが…。

【7月31日追記】
上の地図およびグラフを31日0:00UTC(9:00JST)時点までのデータで作り替えてみました。元と比較するため、差し替えずに新たに追記します。本震直後に3件の大きな地震が加えられています。23日0:00UTC-31日0:00UTの地震回数総計は195回に達しました。

  • 20250731カムチャッカ半島周囲の地震マップ

    A.地震マップ
  • 20250731カムチャッカ半島周囲の地震グラフ

    B.地震グラフ


今日の太陽2025/07/30

20250730太陽
昨夜は宵側でやや雲が流れたものの、夜半前からは安定した晴れ。今日も朝から快晴です。

20250730太陽リム
左は13:00過ぎの太陽。左端やや上リムに新たな黒点が出てきたようです。中央を過ぎた大きなプラージュは活動領域14155・14154・14157付近。太いダークフィラメントも続いてます。右下リムにかなり高いプロミネンスが微かに見えます。昨日昼はまだ低かったので、夕方からよるにかけて吹き飛んだようですね。

気象庁アメダス速報値の本日0時から15時までの集計による夏日地点数は872、真夏日地点数は745、猛暑日地点数は271、酷暑日地点数は3、国内最高気温は兵庫県柏原ポイントの41.2度。この最高気温はこれまでの観測史上最高記録である41.1度(2018年7月23日埼玉・熊谷ポイント/2020年8月17日静岡・浜松ポイント)を更新してしまいました。「日本歴代最高気温の日」が変わってしまいますね。今日は京都・福知山ポイントと兵庫・西脇ポイントでも40度以上を記録ました。

そう言えば昨夜の天体観察開始時(20時)の気温が29度だったことを思い出しました。今年はいったいどれだけ暑くなるやら。