水平月は今年がラストチャンス ― 2024/07/29
明け方に見える「水平月・逆転月」の数少ないチャンスである8月4日まで残り一週間になりました。詳しく書いておきます。
水平月・逆転月という現象については以前に特集記事を書きました(→「横たわる有明月を観よう・Part1」・「横たわる有明月を観よう・Part2」)。簡単におさらいすると、「新月をはさんで数日前から数日後の期間に、明け方の東天低空または夕方の西天低空に見える細い月が舟のように水平に見えたり、普段は見ることができない傾きに光る(弦の傾斜が逆転する)」という現象です。毎年起こるわけではなく、起こりやすい時期が7、8年ごとに夕方と朝方を行ったり来たりします。明け方に見えるのは今年で最後。2025年からは宵に見える機会が到来します。
比較的珍しい状態ですから偶然出会えれば幸運だけれど、天気との兼ね合いや観察可能時間の短さから言うと、運任せで出会える可能性は限りなく低いでしょう。毎日血眼で月を見ている重症ファンなら別ですが…。
ところで月は昼間の青空でも見える天体ですから、この現象には暗黙の制約が三つあります。「新月の日から離れない」、「太陽が地平下の時間帯に限る」、そして「日本国内限定」。いずれも「日本から見える低空の細い月」という縛りを成立させるためです。観察場所を国外にしたり昼間の時間帯や大きな月齢まで認めてしまうと太陽と月の自由度が大きくなり過ぎ、当たり前の現象になってしまうでしょう。まぁそうしたいなら止めませんが…。日本で暮らす人がカノープスや南十字星をありがたがるように、水平月・逆転月もなかなか見えない国内で見てこそ重みが増すというもの。
今年国内のどこかで水平月が見えそうなのは8月3日、8月4日、9月1日、9月2日、10月1日、10月2日あたり。このうち8月3日、9月1日、10月1日、10月2日は水平になるラインが沖縄あたりまでしか北上せず、それより北では普通の有明月なので省略。よって8月4日と9月2日が今期ラストチャンス。明け方の水平月を見たいなら2037年ごろまで待たなくてはなりません。
それぞれ記事下に月高度が5°および10°のときの弦傾斜マップを掲載しました。地図で0.0のライン上では水平月が見えます。プラス値なら右上がり、マイナス値なら右下がりです。ふつう明け方の細い月は左下が光り、弦傾斜もマイナス20からマイナス40程度なのですが、8月4日と9月2日は本州辺りを0やプラス値のラインが通っていますね。
注意したいのは8月4日の月が太陽のすぐ近くだと言うこと(離角7.5°程度)。実は月高度10°の地図ではもう日出後なのです。右上図の通り水平月のころは太陽の真上に月が離れるため普段よりはずっと探しやすいけれど、8月4日はあまりにも太陽に近く、相当明るい中で超低空の極細月を探さなくてはなりません。観察可能な方は限られると思いますが、前もって月の出位置のアタリを付けたり自動導入などフル活用して1秒でも早く見つけてください。運良く見えれば北海道でも水平月、四国や九州ならあり得ないほど傾斜が逆転した月を拝めます。月の出から40分内外で太陽が昇ってしまうため、水平線が見渡せる環境が望ましいでしょう。夢中で探していてうっかり望遠鏡で太陽を見ないようご注意。
今年はセンタームーンの時期でもあります。秤動図を見るとグラフが中心近くを通る月が何度かありますね。8月以降だと8月8日宵、8月9日午前、9月5日昼ごろ、9月19日朝、10月2日宵、10月16日夜が「月面座標中心と見た目の月中心がほぼ一致する」様に見えます。「昼間で見づらい」「新月期で太陽に近過ぎる」「月中心が光っていない」などの理由で実際の観察や確認が困難なケースも多いですが、可能なら観察してみてください。
水平月・逆転月という現象については以前に特集記事を書きました(→「横たわる有明月を観よう・Part1」・「横たわる有明月を観よう・Part2」)。簡単におさらいすると、「新月をはさんで数日前から数日後の期間に、明け方の東天低空または夕方の西天低空に見える細い月が舟のように水平に見えたり、普段は見ることができない傾きに光る(弦の傾斜が逆転する)」という現象です。毎年起こるわけではなく、起こりやすい時期が7、8年ごとに夕方と朝方を行ったり来たりします。明け方に見えるのは今年で最後。2025年からは宵に見える機会が到来します。
比較的珍しい状態ですから偶然出会えれば幸運だけれど、天気との兼ね合いや観察可能時間の短さから言うと、運任せで出会える可能性は限りなく低いでしょう。毎日血眼で月を見ている重症ファンなら別ですが…。
ところで月は昼間の青空でも見える天体ですから、この現象には暗黙の制約が三つあります。「新月の日から離れない」、「太陽が地平下の時間帯に限る」、そして「日本国内限定」。いずれも「日本から見える低空の細い月」という縛りを成立させるためです。観察場所を国外にしたり昼間の時間帯や大きな月齢まで認めてしまうと太陽と月の自由度が大きくなり過ぎ、当たり前の現象になってしまうでしょう。まぁそうしたいなら止めませんが…。日本で暮らす人がカノープスや南十字星をありがたがるように、水平月・逆転月もなかなか見えない国内で見てこそ重みが増すというもの。
今年国内のどこかで水平月が見えそうなのは8月3日、8月4日、9月1日、9月2日、10月1日、10月2日あたり。このうち8月3日、9月1日、10月1日、10月2日は水平になるラインが沖縄あたりまでしか北上せず、それより北では普通の有明月なので省略。よって8月4日と9月2日が今期ラストチャンス。明け方の水平月を見たいなら2037年ごろまで待たなくてはなりません。
それぞれ記事下に月高度が5°および10°のときの弦傾斜マップを掲載しました。地図で0.0のライン上では水平月が見えます。プラス値なら右上がり、マイナス値なら右下がりです。ふつう明け方の細い月は左下が光り、弦傾斜もマイナス20からマイナス40程度なのですが、8月4日と9月2日は本州辺りを0やプラス値のラインが通っていますね。
注意したいのは8月4日の月が太陽のすぐ近くだと言うこと(離角7.5°程度)。実は月高度10°の地図ではもう日出後なのです。右上図の通り水平月のころは太陽の真上に月が離れるため普段よりはずっと探しやすいけれど、8月4日はあまりにも太陽に近く、相当明るい中で超低空の極細月を探さなくてはなりません。観察可能な方は限られると思いますが、前もって月の出位置のアタリを付けたり自動導入などフル活用して1秒でも早く見つけてください。運良く見えれば北海道でも水平月、四国や九州ならあり得ないほど傾斜が逆転した月を拝めます。月の出から40分内外で太陽が昇ってしまうため、水平線が見渡せる環境が望ましいでしょう。夢中で探していてうっかり望遠鏡で太陽を見ないようご注意。
今年はセンタームーンの時期でもあります。秤動図を見るとグラフが中心近くを通る月が何度かありますね。8月以降だと8月8日宵、8月9日午前、9月5日昼ごろ、9月19日朝、10月2日宵、10月16日夜が「月面座標中心と見た目の月中心がほぼ一致する」様に見えます。「昼間で見づらい」「新月期で太陽に近過ぎる」「月中心が光っていない」などの理由で実際の観察や確認が困難なケースも多いですが、可能なら観察してみてください。
★2024年・水平月マップ
- 上地図は自作プログラムによる概算です。観察の目安としてお使いください。
- 0°のライン上は完全な水平月(計算上のカスプを結ぶ弦傾斜が水平)になるところ。またマイナス数値のラインは弦傾斜が右下がり、プラス数値は右上がりです。
- 日本では多くの場合、夜明けに昇る細い月は地平下の太陽方位角に対し南寄りにあるため左下が照らされています。つまり弦傾斜は右下がりになっていることが普通です。
- 本文中の「弦」とは、右図のように南北カスプを結ぶ線としています。カスプは幾何学的に光が当たる端の位置で、実際に光っているかどうかはケースバイケースです。
- 「弦傾斜」は右図の弦と水平方向とのなす角としています。右図は夕方の例ですが、明け方の極細月も同様に決められます。
- 弦傾斜は月高度によって変化します。