天体追尾の遅速マップを描く ― 2024/08/09
地上から見ている恒星は「一周するのに約86164秒(恒星時)」という決まった速度で日周すると習いますが、厳密にはそうならず、大気差による視位置変化によって速度が変わります。そんな話題を2024年7月27日記事に取り上げました。低空の天体写真を撮った経験がある方なら身に覚えがあるでしょう。
その記事では恒星がどんな速度変化をするのか、赤緯ごと・各種条件ごとにグラフで示しました。実はこの作図プログラムを作る初期段階でグラフではなく「見上げた空のどの位置にどれくらいの遅速があるか」という分布図を半球マッピングの形で示せないか考えていたのですが、かなり敷き居が高くて短時間開発は無理でした。でも諦めずにその後も改良を続け、一応の図版が提示できるまでになったので、あらためて本記事に掲載します。
左上図は「ある天体の視位置が【方位・高度】のペアで分かっているとき、天体のその場所での日周速度は大気差の影響下でどんな値をとるか」を求め、色で分類しながら埋め尽くしたもの。指定観測地から見える空全体を直交座標投影で描画しています。一枚の図のなかに観測地北緯20°、40°、60°の三例をまとめてみました。各図の左右両端が方位角0°(=360°)、上辺は天頂、下辺は高度ゼロ。例えば真東の地平は方位角90°・高度0°の位置です。その他の条件は気温15度、1気圧、恒星位置Epochが2000年元日0:00UTに統一しました。速度に応じた色分けは図内のカラーバーの通りで、バーの数値は「日周一回転に要する秒数」を表します。(※カラーバーの下のほうは上の86000から86500の間を拡大したもの。)念のため書いておくと、次のようになります。
天の北極周囲は色が入り組んでいることから、思いのほか複雑な動きだと分かるでしょう。冬至前後に軽望遠で12時間日周を撮ってみると実測できるかも知れません。(右画像は自己最長の12時間24分25秒日周/180mm+APS-C。)
直感的にもっと分かりやすくするため、左上図と同じ計算結果を使い「天頂中心の正距方位図法」で描き直したのが下図。パソコンの星空シミュレートに慣れている方はこちらのほうが馴染みやすいかも知れません。上が北、真ん中が天頂、左が東です。画像上部の前後ボタンや選択ボックスで5°ずつ観測地緯度を切り替えることができます。(※遅い回線の場合、なかなか切り替わらないことがあります。また画面が小さなPCやタブレットでご覧の方は図全体が入り切らないかも知れません。ごめんなさい。)
あらためて図を比較しながら見てゆくと、予想通りだったり、想像もしなかったことが発見できます。例えば次のようなことです。
実は天の北極と思っている方向も大気差で浮いているので、恒星を使った極軸合わせは手動であれソフト任せであれ、大気差の影響を考慮しない限り「本当の天の北極」に向けていないことになります。そのままガイドするとどうなるのか…考えを進めて行くほど思考が混乱しますね。まぁ実際はあまり影響が無いのかも知れませんけど。
下図は見たい緯度を表示させたあと、図のドラッグドロップやOSの画像保存機能を使えばweb表示より大きな原画等倍でダウンロードできます。自由に使って構いませんから、深い考察で『追尾の沼』に嵌まってくださいませ。
参考:見かけの自転速度に関する記事
大気差を受けた北極星はどう動く?(2024/08/25)
天体追尾の遅速マップを描く(2024/08/09)
天体追尾速度の変化(2024/07/27)
その記事では恒星がどんな速度変化をするのか、赤緯ごと・各種条件ごとにグラフで示しました。実はこの作図プログラムを作る初期段階でグラフではなく「見上げた空のどの位置にどれくらいの遅速があるか」という分布図を半球マッピングの形で示せないか考えていたのですが、かなり敷き居が高くて短時間開発は無理でした。でも諦めずにその後も改良を続け、一応の図版が提示できるまでになったので、あらためて本記事に掲載します。
左上図は「ある天体の視位置が【方位・高度】のペアで分かっているとき、天体のその場所での日周速度は大気差の影響下でどんな値をとるか」を求め、色で分類しながら埋め尽くしたもの。指定観測地から見える空全体を直交座標投影で描画しています。一枚の図のなかに観測地北緯20°、40°、60°の三例をまとめてみました。各図の左右両端が方位角0°(=360°)、上辺は天頂、下辺は高度ゼロ。例えば真東の地平は方位角90°・高度0°の位置です。その他の条件は気温15度、1気圧、恒星位置Epochが2000年元日0:00UTに統一しました。速度に応じた色分けは図内のカラーバーの通りで、バーの数値は「日周一回転に要する秒数」を表します。(※カラーバーの下のほうは上の86000から86500の間を拡大したもの。)念のため書いておくと、次のようになります。
- 大気がなかったら、地上のどの地点から見ても、どの位置の恒星でも、約86164秒の定速で一周する(恒星時追尾)。
- 大気がある場合、空の大部分で日周が遅れる。これにうまく対応するよう考えられたキングスレートは86190秒で一周する速度。
- 数値が大きいほど一周に時間がかかる、つまり日周が遅い。数値が小さいなら速い。
- 恒星時追尾からキングスレートまでは白または明るいグレーで示し、黄色と白が接する境界がちょうど恒星時追尾、濃青色とライトグレーが接する境界がキングスレート追尾になる。
- 黄色→マゼンタ→暗い紫にかけては恒星時より速く日周するエリア。
- 濃青→水色→緑→黄緑にかけてはキングスレートよりも遅く日周するエリア。平均太陽時(約86400秒で一周)は水色あたり。
- 図に薄く描いてある白線グリッドは高度・方位を30°刻みで示したもの。また薄い黒線グリッドは赤道座標系の緯度経度線で、赤経1h・赤緯10°刻み。
- ひとつの恒星に注目すると、空に見えている間は常に速度が変化するため、定速モーターで厳密な追尾は原理的に不可能だと分かる。
- 天頂および地平に接する一部の位置では計算特異点や計算抜けが生じるため、極く一部にエラー表示を含む。ご容赦願いたい。
天の北極周囲は色が入り組んでいることから、思いのほか複雑な動きだと分かるでしょう。冬至前後に軽望遠で12時間日周を撮ってみると実測できるかも知れません。(右画像は自己最長の12時間24分25秒日周/180mm+APS-C。)
直感的にもっと分かりやすくするため、左上図と同じ計算結果を使い「天頂中心の正距方位図法」で描き直したのが下図。パソコンの星空シミュレートに慣れている方はこちらのほうが馴染みやすいかも知れません。上が北、真ん中が天頂、左が東です。画像上部の前後ボタンや選択ボックスで5°ずつ観測地緯度を切り替えることができます。(※遅い回線の場合、なかなか切り替わらないことがあります。また画面が小さなPCやタブレットでご覧の方は図全体が入り切らないかも知れません。ごめんなさい。)
あらためて図を比較しながら見てゆくと、予想通りだったり、想像もしなかったことが発見できます。例えば次のようなことです。
- 北極点から見る恒星は大気差で浮いてはいるけれど、日周速度は恒星時追尾に等しく、空のどこでも変わらない。(真っ白表示。)
- 天頂はキングスレートに近いエリアだが、その分布は点対称にはならない。
- 一番遅いのは子午線上方通過付近の真南低空ではなく、真東や真西の低空。一番早いのは子午線下方通過付近の北空低空。
- 赤道上から見る恒星は天頂付近でほぼキングスレート、天頂以外は全てキングスレートより遅い。
- 天の北極のすぐ上とすぐ下では様相が全く異なる。
実は天の北極と思っている方向も大気差で浮いているので、恒星を使った極軸合わせは手動であれソフト任せであれ、大気差の影響を考慮しない限り「本当の天の北極」に向けていないことになります。そのままガイドするとどうなるのか…考えを進めて行くほど思考が混乱しますね。まぁ実際はあまり影響が無いのかも知れませんけど。
下図は見たい緯度を表示させたあと、図のドラッグドロップやOSの画像保存機能を使えばweb表示より大きな原画等倍でダウンロードできます。自由に使って構いませんから、深い考察で『追尾の沼』に嵌まってくださいませ。
参考:見かけの自転速度に関する記事
大気差を受けた北極星はどう動く?(2024/08/25)
天体追尾の遅速マップを描く(2024/08/09)
天体追尾速度の変化(2024/07/27)
夕空のセンタームーンが美しい ― 2024/08/09
昨夕から今朝にかけて雲の多い時間があったものの、夏らしい星月夜が見える時間もありました。宵の月がとても美しく心奪われました。
左画像は8日19:20頃の撮影で、太陽黄経差は約44.01°、撮影高度は約14.42°、月齢は3.96。まだ薄明が残っている時間でも透明度やシーイングが高いレベルだと締まりが良く写ってくれますね。危難の海や月面南東の四大火口列が姿を現しました。タルンティウスが夜明けを迎えているのが印象的。その左下に光ってるのはセッキあたりでしょうか。豊かの海のリッジも素晴らしい。
フンボルトやフンボルト海、スミス海、縁の海などは見辛い秤動でした。これは秤動が悪いというよりも、この月がちょうどセンタームーンだったからです(2024年5月1日記事参照)。月心と月面中央を結ぶ線がちょうど撮影時刻に日本の北4000kmのところを西進中で、その地点からは秤動がゼロの月が見えたことでしょう。
月面中央が光っていませんから確かめようもありませんが、撮影時の地心秤動は緯度方向-0.898°、経度方向-0.073°、また私の観察場所での測心秤動は緯度方向-0.149°、-0.521°でした。極めて原点に近かったことが分かります。本日9日昼ごろに見える月もまだ月中心が月面座標原点から1°程度しか離れていません。
次回のセンタームーンは9月5日昼ごろの三日月で、この日は金星と並んで見えます。夕方になるほど外れてしまうので、可能なら昼間の空で金星と共に見つけてみましょう。
話変わって6日20時過ぎ、三重県の中村祐二さんがこと座に14.3等の突発天体を発見しました。不安定な天気が続きなかなか確認できませんでしたが、昨夜雲間を縫って撮影しました。
右画像のマーカー位置の星が該当天体のようです。鏡筒が外気に順応しないまま撮影したので少しピントが甘いけれど青白い星のようです。矮新星と思われます。
左画像は8日19:20頃の撮影で、太陽黄経差は約44.01°、撮影高度は約14.42°、月齢は3.96。まだ薄明が残っている時間でも透明度やシーイングが高いレベルだと締まりが良く写ってくれますね。危難の海や月面南東の四大火口列が姿を現しました。タルンティウスが夜明けを迎えているのが印象的。その左下に光ってるのはセッキあたりでしょうか。豊かの海のリッジも素晴らしい。
フンボルトやフンボルト海、スミス海、縁の海などは見辛い秤動でした。これは秤動が悪いというよりも、この月がちょうどセンタームーンだったからです(2024年5月1日記事参照)。月心と月面中央を結ぶ線がちょうど撮影時刻に日本の北4000kmのところを西進中で、その地点からは秤動がゼロの月が見えたことでしょう。
月面中央が光っていませんから確かめようもありませんが、撮影時の地心秤動は緯度方向-0.898°、経度方向-0.073°、また私の観察場所での測心秤動は緯度方向-0.149°、-0.521°でした。極めて原点に近かったことが分かります。本日9日昼ごろに見える月もまだ月中心が月面座標原点から1°程度しか離れていません。
次回のセンタームーンは9月5日昼ごろの三日月で、この日は金星と並んで見えます。夕方になるほど外れてしまうので、可能なら昼間の空で金星と共に見つけてみましょう。
話変わって6日20時過ぎ、三重県の中村祐二さんがこと座に14.3等の突発天体を発見しました。不安定な天気が続きなかなか確認できませんでしたが、昨夜雲間を縫って撮影しました。
右画像のマーカー位置の星が該当天体のようです。鏡筒が外気に順応しないまま撮影したので少しピントが甘いけれど青白い星のようです。矮新星と思われます。
【簡単な検証】
本当にセンタームーンに近かったかどうか、満月期にセンタームーンを迎えた2019年1月21日夜撮影の画像に重ねてみました。左画像をクリックするとGIFアニメで2019年の満月と昨夕の月を交互に表示します。
エンディミオン、危難の海、ラングレヌス、ペタヴィウスあたりのズレを見ていただくと、ほとんど一致していることが分かるでしょう。
本当にセンタームーンに近かったかどうか、満月期にセンタームーンを迎えた2019年1月21日夜撮影の画像に重ねてみました。左画像をクリックするとGIFアニメで2019年の満月と昨夕の月を交互に表示します。
エンディミオン、危難の海、ラングレヌス、ペタヴィウスあたりのズレを見ていただくと、ほとんど一致していることが分かるでしょう。
今日の太陽 ― 2024/08/09
朝から青空優勢で蒸していますが、時々雲が多くなる時間帯もあります。今日も近県でゲリラ豪雨・雷雲領域が発達中。この半月ほどほとんど途切れ無し。いつ当地にやってくるか読めないため望遠鏡を出しっぱなしにできません。今夜も稲光が空を照らすでしょうか。
気象庁アメダス速報値の本日0時から15時までの集計による夏日地点数は902、真夏日地点数は720、猛暑日地点数は234、酷暑日地点数は1、国内最高気温は三重県桑名(クワナ)ポイントの40.4度。出ました、またも40度超え。
左は12:10過ぎの太陽。今日明け方4:35ごろをピークとするX1.31クラスフレアが発生しました。場所は大きな黒点のある活動領域13780ではなく、その右にある黒点列を形成している13777。また左端やや上リム近くに新たな黒点がお目見えです。13780の黒点は太陽観察グラス越しに望遠鏡無しでも確認できました。半暗部は結構暗いので、左のHα画像から感じる大きさの印象よりずっと大きいです。右上の特徴あるプロミネンスも気になりますね。
左は12:10過ぎの太陽。今日明け方4:35ごろをピークとするX1.31クラスフレアが発生しました。場所は大きな黒点のある活動領域13780ではなく、その右にある黒点列を形成している13777。また左端やや上リム近くに新たな黒点がお目見えです。13780の黒点は太陽観察グラス越しに望遠鏡無しでも確認できました。半暗部は結構暗いので、左のHα画像から感じる大きさの印象よりずっと大きいです。右上の特徴あるプロミネンスも気になりますね。







