地球観測衛星ERS-2が大気圏再突入2024/02/22

ERS-2
ESAが運用していた地球観測衛星ERS-2(左画像/ESAサイトから引用)が本日22日未明2:17JST(21日17:17UTC)、北太平洋上空で大気圏に再突入したとのこと。1995年4月に打ち上げられ、2011年に運用終了した衛星ですから、実に十数年デブリとして漂っていたことになります。

いまどき再突入のニュースは珍しくありませんが、昔ならではの大振りな衛星(10mを越える全長、2.5トンを越える重量)、高高度からのリモートセンシング(高度800km)、そして再突入間際の一ヶ月は何度か太陽で強いフレアが起きたことなどから、どんなふうに落ちてくるのか気になっていました。太陽活動は地球を周回する人工衛星の軌道に影響を与えるため、特に大気圏すれすれまで落ちつつある衛星にとっては落下予測を乱す原因になります。もちろん落下デブリだけでなく、運用中の全衛星が影響を受けているのです。

右下図はESAが公開しているもので、運用終了後66回に渡り徐々に高度を下げる作業が行われたようです。運用軌道を“落下”に転換する燃料を持たないロケット外壁などのデブリでこんな芸当はできませんが、再突入まで想定した移動用燃料を残した衛星なら、完全な制御下で「落としたいところへ落とす」ことが期待できます。衛星はかくあるべきと言うお手本のような運用ですね。

ERS-2大気圏再突入
今月頭には高度300km辺りを周回していました(下A図)。約三週間かけて150kmまで落とし、最後は「宇宙船の墓場(Spacecraft cemetery→Wikipedia)」付近へ向かうようなコースに沿ってアラスカとハワイの中間付近で大気圏に突入したもようです。

太陽活動の影響を受けたかどうか、受けたのならどの程度かといった研究はこれからされるのでしょう。とりあえずNOAAが公開している気象衛星GOESによる太陽X線フラックスのjsonデータを使ってグラフ化したもの(今年1月以降、本日昼まで)と、ESAによる再突入予測日時とを組み合わせてみました(下B図)。横軸はUTCです。色分けなど詳細はNOAAサイトのグラフに準じています。

XクラスあるいはM8クラス以上のフレアが度々起こっていますね。単発フレアがどうこうというより、全体的な活動の起伏が予測日時の乱れに同期しているような感じを受けます。もちろん軌道に影響がでるまでにはタイムラグがあるでしょうし、印象で物事を語る訳にもいきませんので、機会があったら実際の軌道変化とX線フラックスの相関がどれほどのものか、解析してみたいと思います。ところで…今朝8:07JSTにもX1.9クラスフレアがあったのですね。落下前なら影響あったかも知れませんが、落下後のフレアでした。関東は雨が降っており、太陽は全く見えません。

  • ERS-2遠地点/近地点高度変化

    A.遠地点/近地点高度変化
  • ERS-2再突入予報日時変化と太陽X線フラックス

    B.再突入予報日時変化と太陽X線フラックス