金星と地球のツーショット期間はじまる2022/04/14

20220413-2030JST金星
春分や秋分は太陽が地球の赤道面を通過します。だから春分や秋分のプラスマイナス1ヶ月あまりは赤道上空の静止気象衛星ひまわりと地球、太陽がおおよそ直線に並ぶ時期と言えます。そして、この時期付近で太陽近くを回る金星と水星が気象衛星撮像範囲に来るならば、地球と一緒に写ることになるでしょう。

計算上は12日夜頃が金星と地球のツーショット初日でした。探してみると、ちょうど昨夜13日20:30の全球画像南極側にはっきり写っていました(左画像/元画像:NICT/インサート画像は原画等倍)。色収差のように左右方向に各色がぶれていますが、これはRGB撮像時刻のわずかなずれによる位置ずれです。直してしまうことも考えましたが、あえて原画のまま掲載します。なおこの20分後の画像にも右へ通り抜けた金星が写っていました。

20220414-0000JST天体配置
現在の金星は太陽よりも赤緯が南ですが、これから夏に向かって太陽がどんどん北上するとともに金星も北上するため、しばらくは地球とのツーショットを楽しめるでしょう。北極側まで到達し、ツーショット期間の最後を迎えるのは5月26日頃になる見込みです。ぜひ探してみてください。見える時刻は刻々と変わりますからご注意。(※右図はStellariumによる本日4月14日0:00の天体配置。ひまわりは赤緯が天の赤道プラスマイナス約8.6°の範囲を撮影しています。金星が南の縁にかかり始めたことが分かるでしょう。)

逆につい最近ひまわり写野から消えたのは、太陽を挟んで金星の反対側にある水星。4月3日に外合を迎えた後、昨日やっと太陽から東側へ10°ほど離れました。そろそろ夕空でも探すことができるでしょう。

水星と地球のツーショットはなかなか厄介です。そもそも太陽に近すぎて、気象衛星ひまわりの太陽回避撮影(太陽直射を撮影しないよう回避する)の餌食になりがちなのに、ひまわりが撮影可能な光度は太陽近くでしか成立しない二律背反なのです。おまけに日々の動きが早いため、なかなか10分おきの全球撮影に引っかからないのでした。

20220407-2350JST水星
今期は計算上3月17日頃から4月8日頃までツーショット期間でしたが、まさに最終日に水星が写っていました(右画像/元画像:NICT/インサート画像は原画等倍)。背景画像が真っ黒に近いですが、よく見ると極細の地球が写っていますね。縁の一部がオレンジ色になっていますが、実はこのすぐ近くに太陽が隠れており、まさに朝焼けそのもの。つまりこのタイミングは気象衛星が地球によって食(太陽が地球に隠されて衛星に光が当たらない状態)を起こしている瞬間なのでした。

画像は7日23:50撮影で、次の8日0:00画像では太陽光がこぼれた太陽回避撮影(太陽はマスクされている)、更に次の0:10画像でも右に抜けた水星が確認できましたが、これも一部に太陽光マスクがあります。地球自身によって太陽を遮蔽しながら(太陽マスク無し)の惑星ツーショットは滅多に起こらず、両惑星とも無傷だった美しい右画像は奇跡的な一枚と言えましょう。

水星光度の変化
水星の光度変化をおさらいしておきましょう。左図は2020年始めから2024年始めまでの水星光度と、内合・外合のタイミングを自作プログラムで描いたもの。2022年2月8日記事に書いたように昨年から国立天文台の惑星光度計算式が新しくなっているので、新方式に従っています。

内合前後の水星は光る面積が極端に小さくなって、5等以下…時に7等近くまで暗くなります。いっぽう外合近くはマイナス1等を越え、これなら気象衛星に写ってくれるでしょう。気象衛星が写せるかどうかは、外合からどれだけ離れるか(太陽から遠ざかる)と、外合にどれだけ近づくか(光度が増す)とのせめぎ合い、そしてその瞬間をタイミングよく撮影できるかにかかっています。水星は他の惑星に比べ軌道離心率が大きく遠日点と近日点の距離差が大きいため、光度変化もこの影響を受けます。頭で考えるよりかなり複雑な惑星ですね。

蛇足ながら、輝面積の大きさを基準とした「水星の最大光輝」を算出することも可能です。自作プログラムで大雑把に計算すると、本日が該当日のようです。でも左上図を見て分かるように水星は金星の光度変化と異なり、輝面積最大と光度最大が全く一致しません。また、金星最大光輝時の太陽離角や位相が一定範囲に落ち着くのに対し、水星はかなりばらつきます。従って「水星の最大光輝」を求めても意味を成さないことが分かるでしょう。

参考:
移動する静止気象衛星ひまわり(2022/04/05)
アーカイブ:人工衛星が観た地球

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