124年間で最も早い春分2020/03/20

春分の日付変化
小学生のころ「立春」と「春分」の違いが全く分からなかった私は、何度も言い間違いをしては怒られていました。なぜ立春は休みにならないのに、春分は休みなのだろうと不思議でした。二十四節気という言葉も意味も知らなかった時期です。大人になっても「ピンと来ない」という方は一定数いるんじゃないかと思います。

早いもので、今年も春分がやってきました。今年の春分は過去124年で最も早い日時です。だからといって春が早い訳ではありません。ほんの数日内の比較ですから季節に影響は無いでしょう。数字遊びと思ってください。

原則として「太陽が春分点に到達した瞬時」を含む日を「春分の日」と言うわけですが、春分の瞬時は毎年変わるため、年によって日が変わります。後述しますが、今年の立春や節分のころ「日付が変わるかどうか」という話題が飛び交ったことを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。

春分日時の変化はwiki等にある一覧表の数字を眺めるよりグラフ化したほうが分かりやすいため、時刻を小数にした上で日付変化を図化してみました(左上図)。自作プログラムによる概算ですから、国立天文台が発表する公的発表値と比べ僅かながら差があることをご了承ください。縦軸は日付ですが、小数は時刻を表します。例えば12:00:00なら0.5、19:48:00なら0.825といった具合です。毎年瞬時のグラフですから線で結ぶ必要はないのですが、結んだほうが時系列を追いやすいため描きました。

4年ごとにギザギザと上下しているのは閏日による変化。もし閏補正をしなければ、二十四節気は全て毎年少しずつ遅れてゆきます(このグラフでは上にシフトします)。閏年の春分は「直前に挿入された閏日」によってほぼ4年前まで早まり(グラフが下にずれ)、大きなずれが生じないようにしてあるわけです。

ところが良く見ると、4年前ピッタリに戻るのではなく、ほんの少し…時間にして40分程度早くなってしまうんです。補正しすぎなのですね。このためギザギザ全体は右下がりになってゆきます。これもいずれ補正しなくてはなりません。そこで、閏日挿入は次の様なややこしいルールが定めてあります。このルールのおかげで数千年経っても二十四節気の日付は安定します。

  • 西暦年が4で割り切れる年は閏年。
  • ただし西暦年が100で割り切れる年は平年。
  • ただし西暦年が400で割り切れる年は閏年。

つまり、西暦1700年、1800年、1900年、2100年は4で割り切れても閏年にならず、西暦2000年は100で割り切れても閏年になったわけ。日本時間の場合、春分の日は1世紀ちょっと前の1903年に「3月22日が加わり、20日が外れる」ようになりました。以降は少しずつ早まって、今年を迎えたのです。グラフを見れば、今年の春分瞬時より早かったのは1896年まで遡らないと出てこないことが分かるでしょう。もっと長期のグラフは下A図のようになります。閏補正の100年サイクルと400年サイクルが分かりやすいですね。

前述した立春も見てみましょう。今年2月に話題になったのは「2021年の立春の日は3日か?4日か?」「2021年の節分(立春前日)は2日か?3日か?」ということでした。これは国立天文台が毎年2月最初の官報で翌年の暦要項を発表し、正式な暦として決まるからですね。下A図と同期間の立春の変化を下B図として描きました。2021年の立春は3日と4日の境界に引っかかっており、どっちになるんだろう?というのが事の発端です。暦の補正は閏日だけでなく、閏秒などもあり、また先々の太陽や地球の動向は観測しないと分かりません。ここに出したグラフなどは現在の理論を将来まで延長した一例に過ぎず、将来にわたって計算通りに行くという保証もありません。そんなこんなで皆が今年2月の暦要項発表に注目していたのでした。春分のグラフとちょっと違うのは、4年変化のパターンが1年ぶんずれているところ。これは「立春は閏日挿入の前」「春分は閏日挿入の後」という違いが分かれば理解できるでしょう。

もうひとつ大事なのは、暦が政治的意図が絡んで決められているという事実。例えば、私は小学校で「体育の日は1964年東京オリンピック開会式の日」と教わりました。以来10月10日は不動の祝日と思っていたのです。ところが2000年から10月第2月曜日になってショックを受けました。更に、今年からは名前も「スポーツの日」に変わってしまうとのこと。同様に「春分の日」も、将来は春分瞬時に関係なく「3月第3月曜日を『春の日』とする」などと変わってしまう可能性もあるでしょう。二十四節気そのものは祝日に関係なく決まりますが、万が一にも天文的な基本の祝日が暦の中に無くなってしまうのは、休めるかどうかにかかわらず好ましくないなぁと個人的に思っています。

  • 春分の日付変化

    A.春分の日付変化(長期)
  • 立春の日付変化

    B.立春の日付変化(長期)


参考:
「124年ぶり」の2月2日節分にはもっと上があるよ(2021/01/24)
日出没・暦関連の記事(ブログ内)

今日の太陽2020/03/20

200320太陽
昨夜は宵のうち晴れて星がきれいでしたが、風が強すぎて何もできません。日をまたぐ前に本降りの雨となりました。今日明け方には雨も止んで、かなり明るくなった空に月と惑星たちが並んでいました。そのまま快晴と思いきや、また急に雨…。どうにも不安定です。9時過ぎには青空が戻りました。風は昨日より強く、昼前後は風速9m/s越えです。

200320太陽リム
左は10時前の太陽。活動領域はありません。昨日も見えていた左上の弱い磁場領域、今日は一段と弱くなってしまったようです。これとは別に左端やや上に明るい領域が見えます。端過ぎてよく分かりませんが、S極先行のようです。

プロミネンスは左上と右下のものが今日も残っていました。観察中は気が付きませんでしたが、右やや上リムにも浅い角度で出ていますね。

今日は花粉光環が全く見えず、どちらかというと黄砂光環のような砂埃による光芒が太陽を包んでいました。視程はそんなに落ちてないのですが…強風のせいでしょうか。