満月の標準的な大きさを知るには?2019/11/13

20191112_18006月
昨夜、晴れ渡った空に昇る満月は11月の澄んだ空気のなかでとても美しく見えました。ただ、満月時を迎える22時半頃までに薄雲が湧いてしまい、残念ながらベストコンディションではありませんでした。

左は満月を10分ほど過ぎたころわずかな雲間を狙って撮影したもの。太陽黄経差は約180.06°、撮影高度は約65.5°、月齢15.42です。常に薄い雲が覆っている状態だったのでシャープネスがかなり落ちましたが、天気がゆっくり下り坂であったことを考えれば、丸い月を仰げただけでも幸運と言えましょう。

秤動は24時間前の撮影時とさほど変わらず左上が中央に寄る向きで、この満月は上側(月の北極側)がわずかに欠けています。一日経つと影はもう右側(東側)に移り、以降右がどんどん影になってゆきます。

撮影中、この満月はやや小さいと感じました。そう言えばスーパームーンなど「とても大きい満月」や「とても小さい満月」は多くの人が関心を持つのに、「標準の満月」、つまり「地球と月の平均距離に近い場所にある満月」のことは気にも留めませんね。基準になる満月の大きさを知らなければ、大きい、小さいといった状態を本当の意味で味わうことはできないでしょう。誰かがスーパームーンなどと言っていることに踊らされているに過ぎませんね。天文分野に限りませんが、研ぎ澄まされた観察力は“普通”をよく知ることから始まると言えるでしょう。

じゃあ「標準の満月」はいつ見えるのでしょうか?下A図は今年から10年間に起こる全ての満月で距離を計算し、地心平均距離(ここでは384400km)との差をグラフにしたもの。約一年周期で遠くなったり近くなったりしてますね。「標準」として平均距離差をどこまで許すかに寄るのですが、仮にプラスマイナス2000km以内(グラフの黄色部分)ならOKとした場合、この10年間では4回しか実現しませんでした。しかも来月の満月が該当し、その後は5年半近く起こりません。(来月の満月は昼間になってしまうため、その瞬間を見ることはできません。)

「標準の満月」の実現に随分ムラがある様に感じますが、もう少し長期で調べると規則があることが分かるでしょう。下B図は同じグラフを50年間に拡張したもの。各満月時の地心距離には、世紀レベルの緩やかな波ですが明確な周期性があり、「標準の満月」(赤丸)もそれに則って変化しています。たまたま今年から2026年まで隙間が開いてしまってたというわけですね。

来月の満月の瞬間は見えませんが、夜に昇ってきた月はまだ丸いですし、平均距離差もマイナス2400km程度の「標準の満月もどき」。月の標準的な大きさを体得してない方は、来月眺めておいて損はないですよ。(注:これは満月に限った話。違う位相の月の場合は距離が変わってしまいます。来月のお月様はいつ見ても標準…という事ではありませんのでお間違えのない様に。)

  • 標準の月はいつか?

    A.標準の月はいつ?(10年ver.)
  • 標準の月はいつか?

    B.標準の月はいつ?(50年ver.)


【余談】 いうまでも無いですが、本当に厳密な「標準の満月」を議論するなら、観察地・観察時刻で変わってしまう測心距離(観察者から月中心までの距離)で上グラフを描かないと始まりません。ただそれは現実的ではないため、地球の大きさによる距離ズレは無視し、地心距離(地球中心から月中心までの距離)でお話しを進めました。地球半径は6000km以上ありますので、上記の「プラスマイナス2000km(2000km=月平均距離の約0.5%)」という制限はもう少し緩くて良いとも思います。

参考:
月の『真ん中』を見たことありますか?(2019/01/20)
アーカイブ:月の形(黄経差180度以上、216度未満)

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