レナード彗星がM3に大接近、月も火星に大接近2021/12/03

20211203レナード彗星(C/2021 A1)
夜明けの空に彩りを添えるレナード彗星(C/2021 A1)は、今日を挟む前後数日にかけて球状星団M3に接近しています。

左は今日明け方の様子。とても雲が多くて半分諦めていたのですが、薄明開始前ごろから雲間が多くなってきたため、隙間を狙って10分程度撮影できました。どちらもファインダーで見える明るさですね。撮影時の両天体離角は約50′でした。

両天体が最接近するのは本日13時頃。彗星が球状星団範囲内に入り込んでしまうため、その時刻に夜明けを迎えるヨーロッパなどで大盛りあがりでしょう。(→参考追記:SpaceWeatherギャラリーに投稿されたベテラン彗星観測者Michael Jaeger氏の作品。)日本では明日明け方に彗星がM3の2°弱ほど東南東へ移動した様子を見ることができます。小型双眼鏡を使える方はしっかり固定して探してみてくださいね。視野内に並んでいますよ。

20211203月と火星の接近
明け方明るくなる頃には、細くなった月が火星を伴って登ってきました。これも雲が少なくなったおかげで見ることができました(右画像)。撮影時の両天体離角は約1.5°です。

このあと月が火星を隠す「火星食」が起こります。我が家からは立地が悪くて見えるかどうか微妙なところ。天気は良さそうです。(追記:赤道儀を出せない状況だったので、手持ち双眼鏡では月すら探し出せませんでした。)

それにしても9月や10月の水平月からずいぶん弦傾斜が出てきましたね。この画像撮影時の太陽離角は約19.6°、弦傾斜は約-26.7°(マイナス値は右下がり)でした。

いっぽうの火星ですが、少し前に「太陽と合になった(方向が重なった)ため、誤動作を避ける目的で火星探査機パーサヴィアランスの通信を遮断した」とニュースになったのを思い出します。あれから二ヶ月ほど経って明け方の空に見えるようになったんですね。今ちょうどアンタレスが合を迎えていますが(→今日の太陽参照)、年末年始は火星とアンタレスの「赤い星競演」を楽しめるでしょう。来年2月には明け方に回った金星と並び、同2月5日・6日はM22に大接近(おおよそ2年周期)します。更に4月5日には土星に20′角まで大接近しますが、いずれも低空での現象です。

今日の太陽2021/12/03

20211203太陽
昨宵に雨が降った後、雲量5割から9割を行ったり来たりで今日未明まで推移しました。明け方には雲が少なくなり、レナード彗星や月と火星の接近を楽しむことができました。朝からはよく晴れています。

20211203太陽リム
左は10時過ぎの太陽。活動領域五ヶ所のうち、黒点が確認できるのは右下リム近くの12898と中央右上の12902のみ。ただ、右下にはプラージュのような、あるいは弱いフレアのような明るい部分が見えます。目立つプロミネンスは減ってしまいましたね。

4日後の12月7日には二十四節気の「大雪」を迎えます。季節のめぐりが早いですねぇ…。

20211130-2318_SOHO-LASCO-C3
11月末ごろさそり座頭部が太陽観測衛星SOHOのLASCO-C3カメラに写っていました(右画像)。今後は次第に明け方の空に移り、初日の出直前の空にさそり座が発見できるでしょう。

その数日前、今年の12月28日には火星とアンタレスが約4.5°まで接近しますので、早起きの方は南東低空を探してみてください。

ダイヤ富士やグリーンフラッシュが見えました2021/12/03

20211203夕景
今夕は私の住居の近所でダイヤモンド富士が見える日。街中ですから障害物が多くて見通しは悪いけれど、貴重な晴れ間です。空に誘われカメラを片手に歩いてゆきました。

だいぶ早く到着、カメラの準備などを終えてもまだ現象開始まで15分ありました。小中学生の下校時間らしくこどもたちにも説明してあげたかったけれど、下校ルールに厳しい街なのでぐっと我慢。「声かけ事案」になってしまってはいけませんからね。現場に残ったのはダイヤ富士を知ってると思われるおじいちゃん一人だけでした。地元の沢山の人に見てもらえないのは本当にもったいない…。

そうこうしてる内に時間です。下A画像はもう始まっていますが、下B画像を見ないと分からないでしょう。肉眼ではかなり眩しく、完全に沈んだ後しか富士山の存在に気付けませんでした。

  • 20211203ダイヤ富士

    A.ダイヤ富士(1)
  • 20211203ダイヤ富士

    B.ダイヤ富士(2)
  • 20211203ダイヤ富士

    C.ダイヤ富士(3)
  • 20211203ダイヤ富士

    D.ダイヤ富士(4)


日が没すると急に暗くなり始めます。例えば構図を変えず1分おきくらいに写真を撮ると、露出補正や絞り変更がどんどん必要になることが分かるでしょう。太陽は富士山に対して右下へ向かったので、富士山から左上に向かって自身の影が伸びます(下F画像)。影ができるのは何も富士山に限ったことではなく、地上のあらゆるものが影の一部になります。それこそが東の空を暗くする「地球影」に他なりません。文学的に言うなら「夜の帳」。わたしたち自身が「夜のひとかけら」になるのです。

今日はもうひとつ収穫がありました。グリーンフラッシュが見えたのです。今夕のように太陽があまり減光せずギラギラしたまま沈むのは、本来なら大気で散乱してしまう緑や青の短波長成分がある程度残っている証拠。つまりグリーンフラッシュが見える可能性が格段に高くなるんです。逆にオレンジや赤だけの暗い夕日では絶対にグリーンフラッシュが出ません。

ダイヤ富士を連写で撮っていたため最後の瞬間の書き込みが間に合わないと思われましたが、帰宅後に確かめると太陽が富士山に消える直前の2コマにグリーンフラッシュが確認できました。下G・H画像はある程度見やすいように調整してありますが、撮って出しでも分かるくらい緑の光が見えました。茨城から見ると火口右端の出っ張りが白山岳と思われます。このグリーンフラッシュは白山岳によって「日食のベイリービーズ」状態になってますね。

誤解しないでいただきたいのは、グリーンフラッシュは「富士山や水平線に隠されないと起きない」訳ではありません。富士山より高い空で何も隠れていなくても見えるときはあるのです。一般的にそのような太陽を見ても眩しすぎて確認できない、というだけの話。2021年10月1日の記事に、高度15°弱の虹星カペラ強拡大画像があります。高度15°でも星像3、4個分くらい色ズレが生じてますね。同じことは太陽だろうが月や惑星だろうが起きるわけで、白飛びしないような眩しくない観察方法があるなら、水平線上でなくてもグリーンフラッシュ(=緑の色ズレ)は確認できます。また、遠くのビルや家の屋根に隠される瞬間だって出現してることもあるでしょう。「肉眼で太陽を見ちゃいけない」から、わたしたちが見逃しているだけ。ハワイやグアムの海岸に行かなくても、日本の日常で見える現象です。

  • 20211203夕景

    E.日没後
  • 20211203富士山の影

    F.富士山の影
  • 20211203グリーンフラッシュ

    G.グリーンフラッシュ(1)
  • 20211203グリーンフラッシュ

    H.グリーンフラッシュ(2)


尾が長くなったレナード彗星2021/12/04

20211204レナード彗星(C/2021 A1)
昨夜から今朝はよく晴れてくれたものの湿気が多く、透明度はかなり落ちひどい結露でした。それでもレナード彗星(C/2021 A1)はよく見えるだろうと明け方に撮影準備。尾の長さが気になるため、いつもよりさらに広角で狙いました。

左は4:50からの撮影で、おおよそ5°×3°の範囲です。昨日接近していた球状星団M3を後に、更に一歩太陽に向かって東進していました。10日前は127″/hほどの速さでしたが、今朝は435″/hで、3.4倍も速くなっています。

20211204レナード彗星(C/2021 A1)
尾の長さを観るため、あらためて彗星基準コンポジットし、白黒反転高コントラスト処理してみました(右画像)。途中で折れ曲がったような尾が画面端まで届いています。この範囲だけなら約2.5°でしょうか。光害のないところで見ればもっと淡く伸びる部分まで写ることでしょう。なお計算上の尾の方向角は315°を過ぎています(方向角:天の北方向から反時計回りに測る。)つまり右斜め上45°よりも北寄りということで、今後は縦構図のほうが収まりよくなります。

5cm双眼鏡でも1°未満の尾が感じられるようになりました。ただし十分に目を闇に慣らさなくてはいけません。M3よりもずいぶん大きいことも分かります。東の視界が狭いため、我が家から追えるのはうまく行ってもあと4、5日。街中観察者の多くが同様の状況でしょう。早いものです。