シーズン終了間際に見えたガリレオ衛星相互食2021/08/24

20210823木星衛星食
昨夜、日付が変わる真夜中をまたいで木星の衛星相互食がありました。うまい具合に一時的な晴れ間があったため、観察してみました。

衛星の相互食というのは複数の衛星を持つ惑星系で起こり、ひとつの衛星が別の衛星を隠したり(掩蔽)、ひとつの衛星の影が別の衛星を陰らせたり(食)する現象です。「衛星の軌道面がほぼ揃っていること」と「衛星軌道面に地球や太陽があること」といった複数条件が必要になるためなかなか珍しく、アマチュアが地球から観察可能なのは実質的にガリレオ衛星のみでしょう。(→別視点:火星探査車キュリオシティから見たフォボスによるダイモスの掩蔽…これも広い意味では衛星相互食。)もちろん他の衛星では起こらないと言っているのではなく、アマチュアレベルで観察可否のお話。例えば日本から見える例としては2024年11月16日20:50から20:53にかけておこる土星の衛星ミマスによるテティスの部分食(金環食??/右下図・Stellariumによる作図)。でも土星本体に近く、観察しようにも土星の光に埋もれてしまうでしょう。小さく暗い衛星ではこうした見づらいケースがほとんどです。

同じ仕組みの似た現象としては「土星の環の消失」がありますね。環が消える(見えなくなる)原因とガリレオ衛星相互食の要因を比べてみてください。(ヒント:掩蔽→観察者から見て、隠すものと隠されるものが一直線になる必要がある。食→光源から見て、隠すものと隠されるものが一直線になる必要がある。)

20211116-205100JST土星の衛星相互食
ガリレオ衛星相互食は木星公転周期のおよそ半分のサイクルで起こります。前回は2014年秋から2015年にかけて見ることができました。今回は今年はじめから11月ごろまでです。(※ただし9月以降の予報はほとんど減光しないものばかりですから観察は困難でしょう。)次回は2026年5月から2027年8月まで予報されています。必ずしも見やすいものばかりではないため、実際に見ようと思ってもなかなか思うようにいきません。ひとシーズン何十件もの予報のうち好条件のケースが天気に恵まれ数回見えれば大成功でしょう。予報も未来の衛星運動を高い精度で計算する力が要求され、いくつか予報表を比較するとズレていることが多いのです。地球のどこから観察するかによっても予報が変化するので、そういう違いも含めて予報値を解釈し、観察に挑む必要があるでしょう。

昨夜のガリレオ衛星配置は冒頭実写画像の通りでした。このうち西寄りのガニメデの影がエウロパにさしかかり、約1等級減光するというもの。平たく言うと部分月食に相当し、23日23:52から24日0:05まで(食の最大は23:58)予報されていました。同時にイオが木星本体に重なり、更にはイオの影も本体を通過し始めるタイミング。一粒で二度美味しい!

宵のうち薄雲が多かったのですが、22時頃から南の空の雲がはけてくれたので急いで観察準備。最小限のセッティングで撮影を開始しました。23:50から24:16(=0:16)まで2分おきに撮影し、エウロパの減光やイオの影を楽しむことができました。24:06までのショットを手動アニメーションにしたので下に掲載しておきます。暗くなるエウロパが分かるでしょうか?木星の自転も猛烈に速いですね!二日前にはガニメデの影がエウロパを皆既月食し、さらに掩蔽もしてしまう珍現象があったのですがどんより曇り空でダメでした。今回も日付が変わってすぐ雲が広がり始め、撮影後は完全に見えなくなりました。余談ですが、0:08の撮影中に我が家近くを震源とする地震が発生し、モニター像がぴょんぴょんはねてしまいました…。

木星は20日に衝を迎えたばかりなのでとても観察しやすいです。衛星相互食はもうシーズン終了ですが、衛星と本体との食や掩蔽は今後しばらく続きます。ぜひ望遠鏡を向けてみてください。





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