最大光輝を迎えた金星と5グループのこと2025/02/16

20250215金星
金星は昨日15日に最大光輝を迎えました。以前にも取り上げましたが、現在の「最大光度」は主に2通りの計算が出回っています。ひとつは「輝面積が最大になる日時」、もうひとつは「計算光度式が極大になる日時」。また、計算光度式も2022年ごろから改訂された新方式の他に、いまだに旧方式のままのものも散見されて混乱を招いています。

国立天文台や天文年鑑の発表値は「輝面積最大」に基づくもので、かつて最大光輝と呼ばれていたもの。当サイトでは区別がつくように今も光輝と光度を分けて使っています。光輝は古い言い方だと言う訳ではなく、そもそもの定義が違うのです。

今期の最大光輝瞬時は2月15日8:30:53JSTごろで-4.863等でした。また2月19日21:47ごろになっている表記は「計算光度式極大」に基づいており、-4.873等です。旧方式での極大は2月16日18:07ごろで、-4.636等などとなっているでしょう(2022年2月8日記事参照)。アストロアーツサイトの現象カレンダーは前回まで旧方式極大でしたが、ようやく今回からは輝面積最大・新方式になったようです。どなたかが指摘したのかな?

左上画像は昨夕撮影したもの。少し風があったためベランダ撮影です。昼間から良く見えていました。また、下A画像は一緒に撮影した土星。まだ薄暮が明るい時間ですが高度は13°しかなく、ファインダーでやっと見える程度。低空に薄雲もあってボケボケでした。環がすっかり細くなりましたが、まだそれなりに傾斜があります。

ところで、2月の宵空で金星が最大光輝を迎えるのは2017年や2009年にも起こっています。偶然ではなく、金星と地球との会合周期は短期間で見ると高々五つのパターンに分けられてしまうからです(国立天文台・暦Wikiの記事参照)。分かり易いように、各最大光輝をその年の1月1日から何日経ったか計算し、円グラフにプロットしてみたのが下B図。綺麗に分かれましたね。次回は2033年ですよ。この5グループは少しずつドリフトしながら、隣のグループへと遷移します。同様の5グループ分けは最大離角、内合、外合、宵空や明け空に描く移動パターンなどにも見られますから調べてみてください。

  • 20250215土星

    A.15日の土星
  • 20250215金星最大光輝の時期変化

    B.金星最大光輝の時期変化


参考:
ゆっくりやって来た金星外合(2022/10/22)
今季初の宵の明星を確認(2021/04/26)
とても太陽に近かった金星の内合(2020/06/05)


久しぶりに仰ぐ月2025/02/12

20250212_16928月
昨夜から今朝にかけて、本当に久しぶりに風が収まった静かな夜になりました。と言っても暗くなるまで狂ったように風が吹いていたため、宵空の金星や木星は観察できず。夜半に天頂を越した火星と月を眺めました。近くのアメダスによる10日の最低気温は-5.2度、11日は-5.4度、そして昨夜(今朝方)はついに-7.2度。当地では滅多に出ない低温でした。

左画像は12日1時頃の撮影で、太陽黄経差は約169.28°、撮影高度は約61.76°、月齢は13.14。満月の約22時間前です。12日夜の天気は悪い予報のため、前夜の月が拝めて良かった…。

酔ってしまいそうなシーイングでしたが、久しぶりの月にときめき、隅から隅まで眺めました。南側が良く見え、バイイが堂々としていますね。南の海もかなり奥まで見えています。グリマルディの近くにはすっかり明るくなった月面A地形が見えています。ダーウィンのドームがぽこっと浮き出ていてベストタイミングでした。

20250212火星
左は12日になったばかりのころ撮影した火星。視直径は12.7″角を下回り、私の貧弱な望遠鏡では模様の描写が難しくなってきました。ちょうど大シルチスが正面、左際に子午線湾が朝を迎えています。子午線湾が正面の頃に見たかったけれど毎晩のように強風で望遠鏡を出せなかったのが残念。

火星はカストルとポルックスを二分する線に近づいており、一週間後あたりには火星を頂角としたとんがり帽子の二等辺三角形になるでしょう。穏やかな夜があるといいな。

宵空の細月と環が細くなった土星2025/02/01

20250131_02402月
週末に向かって天気が下り坂のようですが、昨夕はまだ快晴でした。ただ、日中台風のように吹いていた風が少し残っていて、屋外へ望遠鏡を設置しても振動するばかり。仕方がないので屋内の窓際に望遠鏡を組み立て、風を避けつつ月惑星を観察しました。

左画像は31日17:30頃の撮影で、太陽黄経差は約24.02°、撮影高度は約14.97°、月齢は1.83。前日よりずっと高く、日没前から見えていました。時間に余裕があるので長焦点で全球撮影もできるのは嬉しい。とは言え冬のシーイングのため画質は押して知るべし。秤動も見易いほどは振れていません。ひとまずのっぺりとしたフンボルト海やガウス、リムぎりぎりのフンボルトなど確認できました。

黄道がかなり立ってきましたが撮影時の月はまだ水平に程遠く、低くなるほど水平感が増しました。来月、再来月と新月後の月が面白いほど水平になってゆくのでぜひ比べてみてください。

ときおり風が窓をごとごと揺らしていたけれど、月の上に光る土星と金星も観察しました。実はここ数日様々な望遠鏡やセッティングで土星の様子を撮っていたのですが、ことごとく風や悪シーイングにやられてしまってました。「これは本当に星を見てるのか?」と思うような酷い有り様で、スタックすら不可能。そうこうしているうちに土星高度はどんどん低くなっています。結局昨宵に軽微な望遠鏡でさくっと撮った土星や金星が一番良い写りでした(下A・B画像)。

本日2月1日は月による土星の掩蔽(昼間、日本の一部)、3月には合と環の消失が立て続けにやってきます。土星の拡大撮影が可能なのはあと二週間くらいでしょうか。消失前、もう一回だけでもいいから好シーイング下でやせ細った環を眺めたいものです。

  • 20250131土星

    A.1月31日の土星
  • 20250131金星

    B.1月31日の金星


昨夜の木星と火星2025/01/26

20250125木星
昨夜から今朝は良く晴れました。前夜の雨がまだ地面に残っていたので湿気が心配でしたが、透明度はあまり落ちていません。ただ、明け方はそこそこ霜に包まれました。

このところ暖かな夜が多かったけれど、今朝方はしっかり零下。そのせいか上空もすっかり冬に逆戻りのようで、シーイングは酷いものでした。隙間時間に木星と火星を撮ったものの、モニターでは細部の模様が全く見えず、丸いはずの外周もブヨブヨ。

木星は赤道帯の模様など壊滅的です。大赤斑の中の渦も見えません。NTZの明るい点は大赤斑の経度を越しました。18日の撮影では大赤斑の90°ほど手前でした。どこまで進むのでしょうか?

20250125火星
火星は右端に子午線湾(アリンの爪)が見えてきました。酷い大気の割に模様がそこそこ写ってくれたものの、縁のスタックエラーが酷いです。アラインメントポイントを毎回ずらす設定なのに、動画ごと同じ場所でアーティファクトが出てます。自然現象上はあり得ないことなので、どうにもスタックソフトのロジックが怪しい。

恒星でピント合わせの時に気が付いたのですが、シーイングが悪いときって、ピントがズレる時間が多いんですよね。変形(位置ズレ)も気になるけれど、ピントが前後する影響は深刻。これはスタックじゃ救えません。暖冬の傾向とのことだけれど、しばらくは冬と春とが行ったり来たりするでしょう。なんとか良い空に巡り合いたいものです。