土星も見てね2025/10/31

20251030土星
世間は彗星の話題で持ちきりですが、「土星の環の準消失」まで一ヶ月を切っているのでぜひ見ておきましょう。

左画像は昨夜の土星。宵は晴れていたので彗星撮影後に急いで準備、いざ撮影開始と思った途端雲に覆われてしまいました。30分後にようやく再開、雲を避けつつ障害物競走的な撮影となりました。シーイングは悪かったけれどそこそこ写ってくれたようです。

土星の環の傾斜は10月15日にマイナス1°より小さくなり(土心緯度換算)、昨夜の時点でマイナス0.625°。約二ヶ月前の8月31日と比べると一目瞭然ですね(下A画像)。太陽光は南面に十分当たっているはずですが、見えている面積が小さいため明るいとは感じません。やはり衝のころのほうが明るくて見やすかったです。土星そのものも結構小さくなりました。もちろんカッシニの間隙は全く分かりません。

傾斜が最小になるのは11月24日18時UT(25日3時JST)ごろのマイナス0.368°(下B図)。24日宵に晴れればいいのですが、今年秋の天候不順を考えるとあまり期待できません。環が細くなる様子は当日だけ見ても分からず、途中経過を知らなければ面白味が半減します。彗星観察のついでに5分間でいいですから、土星に望遠鏡を向けて変化を目に焼き付けてください。環の傾斜がマイナス1°より大きくなるのは来年1月2日から。以降、どんどん環が目立つようになり、「いつもの土星」が戻ってくるでしょう。

  • 土星比較

    A.土星の比較
  • 土星の環の傾斜

    B.土星の環の傾斜


20251030Lemmon彗星(C/2025 A6)
時間は遡り、右画像は昨宵のLemmon彗星(C/2025 A6)。白っぽい空でコントラストが出ませんでしたが、それなりに高さがあったためか光害地から16分露出でこれだけ写ってくれました。尾の方向角が45°近辺なので構図に困りますね。あと何回お目にかかれるでしょうか。

天の川を漂うSWAN彗星2025/10/18

20251017_SWAN彗星(C/2025 R2)
昨夕から今朝にかけて薄雲付きの晴れ。来週にかけても天気が思わしくないため、久しぶりにSWAN彗星(C/2025 R2)を探すことにしました。(我が家からは方角的に宵のLemmon彗星が見えません…。)

彗星はずいぶん高くなり、航海薄暮終了を待ってからでも導入に間に合います。へび座(尾)に位置し、ちょうど天の川のほとりをプカプカ。お馴染みM16・M17に近かったので、一緒に撮影できないかと135mm+APS-Cで撮ってみました(左画像)。光害たっぷりの街中撮影だから光害カットフィルターのみで星雲をしっかり出そうとすると彗星が流れてしまいますが、露出が浅過ぎてもノイジーになるので15分間。東向きに伸びる尾が写っています(※PAは80°くらい)。

本日18日宵のSWAN彗星はM16のすぐ東に輝きます。そして二日後の20日3時ごろ地球に最接近したあと急速に暗くなるでしょう。どうぞお見逃しありませんように。

20251017土星
続いて南中前の土星を観察。シーイングはかなり悪く、なぜか風も強まってきたものの、13日の撮影よりずっと良像になりました。ぼちぼち惑星観察には辛い大気になってきましたよ。

環そのものは衝の頃より少し暗くなったけれど見えなくなるほどではありません。13日は微かに分かった環の耳はほとんど消えました。当然カッシニの間隙は確認できません。いっぽう左脇の下、環に投影された本体の影ははっきりしてきました。環の傾斜が極小を迎えるまで残り40日を切っています。シーイングや天気を考えるともう見ごろを迎えてると言っていいのでぜひ望遠鏡を向けてください。

20251018木星
日付をまたぎ、今度は東に高くなってきた木星に望遠鏡を向けました。ちょうど大赤斑が正面にあって良いタイミングでしたが、シーイングは土星よりも乱れ、散々な像を連発してしまいました。それでも20分オーバーのデローテーションをかけるとスタックエラーが目立たなくなり、それなりに見られる画像になってくれました。左上は北西の背後を通過しているイオです。

【紹介】
13日にも宵空のLemmon彗星画像を提供頂いた秋田の星友NKさんから昨宵に鳥海山でとらえた二彗星画像を頂きました。良いですねぇ、どちらもこれぞ彗星って姿で見惚れます。Lemmon彗星は200mm+APS-Cの画角をはみ出る尾だそうです。イオンテイルのコブやくびれも見えています。SWAN彗星のほうにはこの記事冒頭画像の背景の星が大きく写っていますので、尾がどれくらい伸びているのか正確に測ることができそうです。

  • 20251017NK_Lemmon彗星(C/2025 A6)

    A.17日宵のLemmon彗星
    (C/2025 A6)
  • 20251017NK_SWAN彗星(C/2025 R2)

    B.17日宵のSWAN彗星(C/2025 R2)



夕空に回ったLemmon彗星と環が薄くなった土星2025/10/14

20251013_Lemmon彗星(C/2025 A6)
秋田の星仲間NKさんからLemmon彗星(C/2025 A6)の画像を送っていただきました。撮影は昨夕13日18:20前後。そう、Lemmon彗星はもう夕空に姿を見せ始まっています。

撮影時の高度は6°台で、低空に雲もあったことから苦労されたそうです。それでも立派な尾を確認でき素晴らしいですね。200mm+APS-C画角だから尾が4°くらいは写ってるでしょうか。ヒョロヒョロのびるイオンテイルだけじゃなくダストテイルも広がっているようです。低空過ぎて、メトカーフ合成しても恒星が場所によってバラバラの向きになってしまいました。本来は左方向やや下向き(天の東南東方向)に移動しています。画像上のほうにはNGC3938、NGC4013、NGC4051などが写っており、透明度の高さを物語ってますね。

明け方のLemmon彗星は1日当たり約3°のペースで高度を下げているので、数日したら夕方探したほうが見つけ易くなるでしょう。ただ、南下しているため夕空での高度はあまり高くならず、航海薄暮終了時でもせいぜい20数°。10月最終週の始めごろが高さのピークですから見逃さないようにしてくださいね。SWAN彗星も同時に見えているから大忙し必至。なお11月に入ると明け方に回った恒星間天体3I/ATLASが金星より高く見えるようになるので、これも観察のチャンスです。

20251013土星
関東も昨夕は雲が残ったものの、夜になって予報が外れて快晴になりました。台風の風が夜半過ぎまで残っていたのですが、ずっと土星を観察できなかったので望遠鏡を向けてみました。なんと、衝の頃より明らかに環が暗くなっていました。

風が望遠鏡を揺らし、シーイングも4/10くらいでしたからシャープさを欠いた像ですが、久しぶりの土星に感動。環の「耳の部分」はほぼ見えなくなり、一本棒のようになってしまいました。本体に投影された環の影は完全に環の北側に移動しており、また環に投影された本体の影は左側に移ったので、衝を過ぎたことがあらためて感じられるでしょう。

環の「準消失」(傾斜角極小)は11月24日だから残り40日。はてさてどんな見え方になるのか、こちらも忘れずに観察してくださいね。

もう始まっているカリストの影通過2025/10/03

20251002木星
10月1日・2日と、木星面を衛星の影が通過するイベントがありました。1日は雨が降るような天気だったのでダメ。2日は直前までそこそこ晴れていたので望遠鏡をセットして待ちかまえていましたが、撮影開始すぐに霧が立ちこめ、2000フレームも撮れないまま終了。

ザラザラですが証拠写真として左に掲載します。通過しているのはカリストの影。左側の衛星は木星に近いほうがイオ、遠いほうがカリスト。こんなに遠くから影を落とすなんて笑っちゃいますね。

2022年8月20日記事で、カリストの影は2022年8月19日を最後に投影されない時期に入ったことを書きました。ガリレオ衛星の中でもっとも木星から遠いカリストは、下A・B図のように影が木星の南極側を素通りしてしまってたのです。ようやくこの時期を終えて再投影され始まったのは今年の5月21日でした。でもこの時期は太陽から25°も離れておらず、やがて合になってしまいました。太陽の西側に20°以上離れたのは7月23日。会合周期は16日あまりだから影が見えるのも1ヶ月に2回あるかないかのペース。しかも数回に一回程度しか日本で見えません。ということで昨日の朝は貴重なチャンスだったんです。霧でも見たいぞ、と思った次第。

次のチャンスは以外に早く、日付が10月19日になったころ(※高度がやや低い)。その次は12月8日の明け方(※月がすぐ近くにいる)です。通過位置が少しずつ北に移動し、来年の今ごろは赤道付近に影を落としていることでしょう。そして2028年6月16日を最後に、また見えないシーズンを迎えます。頻繁に影が見えるイオやエウロパと違い、カリストの影通過は貴重なんですよ。

  • カリストの影が見える時期

    A.カリストの影が見える時期
  • カリストの影が投影されるには?(概略図)

    B.カリストの影が投影されるには?