アルテミスII・オリオン宇宙船を撮影 ― 2026/04/08

20260408アルテミスII・オリオン宇宙船
昨夜は夜半前まで小雨がぱらつく天気でしたが、予報通り日付が変わると共に急速に晴れ上がりました。これならアルテミスIIのオリオン宇宙船を写せるかも知れないと、急いで準備。2:15からと2:45からの二回に分けて15分露光。月が9°東にあったけれど、思いっきりゲインを上げました。両方とも予想位置ぴったり。冬のような透明度が良かったのでしょう。2022年のアルテミス1も撮影できてたので、両方そろって記録に残すことができました。

左画像は2:45からの露光のほうです。南中近くでしたがアンタレスよりも高度が低く、途中で近くの街路樹に隠されるなどのトラブルもありました。まだ遠いですから暗いのは当たり前ですが、厄介なのは移動天体であること。しかも彗星のように「1時間程度なら直線運動で代用できる」というわけではないため、いわゆるメトカーフ合成に失敗することも多いのです。今回は動きが遅いところを狙ったため、若干の調整のみで誤魔化すことができました。そもそもシーイングが悪過ぎて星像が肥大してます。

20260408_24341月
今夜(8日夜〜9日未明)もまださそり座を飛んでいて撮影可能です。地球に近くなって明るくなるはずですが、高度は更に低く、モーションも大きく複雑になりますからチャレンジする方はご注意を。

もちろん月も撮っておきました。右は3:30過ぎの撮影で、太陽黄経差は約243.41°、撮影高度は約24.84°、月齢は19.72。こちらも酷いシーイングでしたが、なんとか仕上げてみました。東の海、見えない時期ですねぇ…。月世界への招待の東田さんによると、この春から夏にかけてオリエンタレ・ベイスンが見ごろを迎えるとのことで、これまた楽しみが増えました。(※来年はもっと見やすくなります。)

続けて、東の街路樹から出てきたパンスターズ彗星(C/2025 R3)を撮影(下A画像)。時間がなくて機材はそのままです。30分露出したところで夜が明けました。こちらは更に星がブクブクですね。ピントはバッチリ合わせたので、ぼけてるのはシーイングのせいです。想像以上に明るく、彗星核が白飛びしました。尾が複雑で面白い。でも月を撮るような望遠鏡ですから全容までは分かりません。今夜も撮れるかな?

実はこのパンスターズ彗星も先日のMAPS彗星のように太陽観測衛星SOHO・LASCO-C3写野を通ります。下B図は自作の予報図で、日時はUTですから日本時間で4月24日未明ごろから見え始まるでしょう。ちなみにC2カメラやSTEREOカメラには写りません。(※SWANにはだいぶ前から写ってます。)この彗星は太陽から離れたところを通るので消滅することはないでしょう。これも楽しみですね。

  • 20260408パンスターズ彗星(C/2025 R3)

    A.パンスターズ彗星(C/2025 R3)
  • パンスターズ彗星(C/2025 R3)in SOHO_LASCO-C3

    B.SOHOの写野を通ります


人類最遠に達したオリオン宇宙船 ― 2026/04/07

20260407-0600JST月の裏側
本日ついにアポロ13号の記録を抜いて人類最遠まで到達したアルテミス2のクルー。NASAの中継を楽しんでいます。アナウンスの単位や時刻がマイルや米国東部時間なのが惜しいところ。頭の中でぱっと換算できない…。

もっと月面中継があるかと思いましたが、機体に付けられた監視カメラの映像しかありません。今のところ月面そのものの詳細は分からず仕舞い。きっと後日たくさんの画像が公開されるでしょう。

監視カメラに写っている月は不鮮明ながらも濃淡があり、月より遠い側に回り込んだオリオン宇宙船から見える「月の裏側」の目立つ地形なら見て取れます。月面図や裏側が分かる月面アプリと一緒に観ていると実に面白いものです。左上図は「VIRTUAL MOON ATLAS」による今朝6:00JSTの月面裏側(※右半分は地球からも見えます)。中継の月面とだいたい同じ向きです。大雑把な地形を書き込んでみました。

中継では東の海とグリマルディの暗さがやたら目立ってましたが、アリスタルコスやレンツ、ビルギウスなど輝度の高いところもはっきり分かりますね。晴れていれば表側を眺めながらと思いましたが、残念ながら関東はどんより曇っています。

アルテミス2・オリオン宇宙船の飛行位置
ところでフライトプランを見ていたら、ブラックアウトがあることに気付きました。今回は無いものと勝手に思ってましたが、月に隠れる時間があるのですね。ということで、現時点で最新の軌道情報で図化したのが右です。7:35〜8:10JSTあたりで隠れるようです。(※ただしこの図は地心計算ですから、実際のブラックアウト時刻は交信する地上センター位置で計算しなくては意味がありません。)

二日前の軌道情報と比べて全体的に1分あまり先行しており、状況に合わせてどんどん計算し直す必要がありそうです。こういうチャレンジを裏で支えている計算クルーにも感謝を述べたいですね。無事帰ってくるまでが旅行。残り半分、安全な旅を続けてもらいたいです。

アルテミス2・オリオン宇宙船から見た夜の地球 ― 2026/04/05

アルテミス2から見た夜の地球
2日に打ち上げられたアルテミス2・オリオン宇宙船は順調に飛行を続けているようです。宇宙船の窓越しにクルーが撮影した地球の画像が話題になっています(左画像/NASAブログ・アルテミス2のページより引用)。

一見すると気象衛星が撮影した真昼側の全球みたいに見えますが、これは夜側なのだそうです。その証拠に地球右下が明るくなって、間もなく朝を迎える…つまり地球の向こう側に太陽が隠れている位置関係と言うことです。明るく見えるのは撮影者の背中側に満月が輝いているからですね。地球照ならぬ、月照?

地球に写っている地形と周囲の星をたよりに、“人力”プレートソルブしてみました。下A画像にマーカー入りを掲載します。まず地球左寄りの赤茶けた陸地はどうみてもサハラ砂漠で、下側にジブラルタル海峡をはさんでスペイン・ポルトガルが写っていることから間違いないでしょう。街明かりも見えますね。ということは中央の海が大西洋、右側の大陸は南アメリカということになります。つまり上が南極、下が北極の写真ですね。

方向が分かり、太陽の居場所が分かれば、近くの明るい星を特定できます。残念ながら金星しか写ってませんが、地球に隠れた位置に土星、火星、水星もいるはず。そしてMAPS彗星も隠れています。黄道光が地球から右下へのびているので、ここまで分かれば恒星の特定は簡単です。

オリオン宇宙船までの距離と、月と宇宙船間の距離も計算してみました(下B図/JPL-HORISONZ+自作プログラムによる)。打ち上げ直後から帰還近くまで計画通りならこのようになるはずです。昨日4日6:20JSTごろ月平均距離の半分に到達、6日15:30JSTには月平均距離に達します。また同日21:40には月からの距離が40000kmを切り、正念場を迎えることでしょう。アルテミス1では無人のオリオン宇宙船が有人可能宇宙船として最遠となる約432210kmを記録しました。今回これを越えることはありませんが、計算上は最遠で413155.7km(7日8:10前後)に達し、アポロ13号の有人最遠400171kmを越えそうです。

  • アルテミス2から見た夜の地球

    A.アルテミス2から見た夜の地球
  • アルテミス2の距離

    B.アルテミス2の距離


アルテミス2始動 ― 2026/04/03

アルテミス2計画
昨日4月2日朝(日本時間)に打ち上げられたSLSロケットは轟音と共に青空へ吸い込まれました。いよいよアルテミス2計画が実働します。

世間では「アポロ以来53年ぶりの有人月飛行」「史上最遠」などのコピーが出回っています。もちろんそうなのですが、無人飛行として実施されたアルテミス1の成功があってこそ。計画全体の土台の部分もきちんと広報してるメディアがとても少なかったのが残念でした。

3日現在はまだ地球を周回しています。今日未明はいて座辺りを飛行しており(下A図/いて座付近)、晴天が多かった国内でも観測成功例がありました。問題が起きなければ今夜はもう月へ向かう往路に入ります(下B図/さそり座頭部付近)。下図は東京から見た測心計算なので、視点移動(地球自転)が反映され、飛行経路が「バネを伸ばした形」のようになります。

昨夜の満月はスピカ近くでしたから、今後は黄緯がどんどん下がり、さそり座やいて座辺りでオリオン宇宙船とエンカウントすることが理解できるでしょう。安全を考えればできるだけ近地点で月周回に入るほうがいいと思うのですが、今回は4月7日17:26JSTが遠地点通過。太陽フレアも頻発してますから、すぐ帰れないのは心配。

6〜7日ごろ月周回を果たしたのち、復路に入って地球へ戻ります。もし月を見ることがあれば「あそこに四人のクルーが行ってるんだなぁ」とエールを送ってあげてください。月周回前後はアマチュアレベルの望遠鏡で見ることはできないけれど、往路や復路の地球に近いタイミングなら観察可能です。(ただし移動天体ですからテクニックが必要ですよ。)ぜひチャレンジしてみてください。どこに見えるかはJPL-HORIZONSで「Artemis II」を指定すれば、ご希望の日時・観測地で算出してくれます。

  • アルテミス2の飛行位置(東京での測心計算)

    A.4月3日
  • アルテミス2の飛行位置(東京での測心計算)

    B.4月4日〜4月5日


参考:(※アルテミス1のときの記録です)
オリオン宇宙船に検出成功(2022/12/09)
オリオン宇宙船検出、二夜目(2022/12/10)
オリオン宇宙船検出、三夜目(2022/12/11)