今日はとても遅い伝統的七夕2025/08/29

七夕の星々
本日8月29日は伝統的七夕。月遅れの七夕よりもはるかに遅く、かつてこんなに遅いことは無かったんじゃないか、と思います。ですが、元々は秋まつりだったことを考えればこれが有るべき姿なのかなとも感じたり。

国立天文台の「よくある質問」によると、伝統的七夕の日は現在公に使われていない「太陰太陽暦」による7月7日に近い日として、次のように定義されています。

二十四節気の処暑(しょしょ=太陽黄経が150度になる瞬間)を含む日かそれよりも前で、処暑に最も近い朔(さく=新月)の瞬間を含む日から数えて7日目が「伝統的七夕」の日です。

※注意:旧暦計算は様々なルールがあって複雑なので、単純化したこの定義による伝統的七夕と本来の太陰太陽暦7月7日は異なることがあります。また1968年や2006年など閏7月7日がある年も存在します。


朔の日を0ではなく1から数え始めることに注意してください。現在の処暑は定気法(太陽視黄経が15°の倍数)で決められ、おおむね8月22日から24日ごろです。上の定義に従うと「処暑の日に新月となる年は伝統的七夕の日が一番遅く、処暑+6日ごろ」「処暑の翌日に新月となる年は伝統的七夕の日が一番早く、処暑-1朔望月+6日ごろ」になることが分かるでしょう。新暦では何日になるか計算してみると右下図のように7月末から8月末まで概ね全体に散らばります。

伝統的七夕の日付分布
近年でここまで遅い旧暦七夕は1979年の8月29日、1987年の8月30日、1998年や2017年の8月28日など。久しぶりに感じる遅さです。どうして遅いか、という理由は「上記のルールに従った計算結果だから」としか言えないでしょう。基本的にまんべんなく分布する事なので、遅れてしまう本質的理由はありません。ただ、これを「閏6月が入ったから」と語る方が少なくないことに驚きを覚えます。まことしやかに聞こえますから暦のルールに疎い方なら簡単に信じてしまうかも知れませんね。

例えば1500-2500年間の伝統的七夕が8月29日以降になる年は36回あって、そのうち直前月が閏6月なのは34回、二ヶ月前が閏5月なのは2回。同様に境界を8月25日以降とすれば全139回のうち閏6月が59回、閏5月が67回、閏4月が13回。前倒しにするほど閏月の幅が広がりますが、旧暦1月以降7月までの間に必ず1回閏月が入ることは間違いないでしょう。「閏月が入ったせいで七夕が遅れた」と信じてしまいそうな結果ですが、これはあくまで統計に過ぎず、原因と結果ではありません。

下A図「新暦と旧暦の区切り・2025年半版」を見ながら考えてみてください。前述のように「処暑の日(または直前)に新月の年は伝統的七夕が遅い」のでした(※今年は処暑と新月がぴったり一致)。処暑と新月が重なる年は、1朔望月(平均29.5日)から逆算して「新暦1月終わりごろに新月(旧暦正月)」となります。(例:今年旧暦1月1日は新暦1月29日。)すると、その年の前半にある新月(=旧暦1日)が毎月のように新暦下旬になるはずだから、下旬に出てくる二十四節気(中気)、すなわち「雨水」「春分」…「夏至」「大暑」のどれかが新月を掠める(=旧暦の一ヶ月間に中気が入らないケースが出現する)可能性が極めて高いわけです(天体周期が変わらない限り100%そうなる)。旧暦ルールでは「中気が入らない月を閏月にする」決まりなので、まとめると「伝統的七夕が遅い年はほぼ100%の確率で直前に閏月が入る」ことになります。

今年を例にすると、中気のひとつ「処暑」が旧暦7月初日に入ったので、前月は立秋のみが取り残され、中気を含まない月になってしまいました。このため閏6月になったのです。比較として処暑と新月が全く違う2026年のケースも下B図に掲載しましたので、じっくり比べてみてください。2026年は旧暦月すべてに中気が入っているので閏月はありません。また伝統的七夕は8月19日です。(※詳しく書きませんが、実際の閏月の決め方は幾つもの分岐処理があってかなり複雑。)要するに「旧暦7月までに閏月が入るなら、伝統的七夕が遅くなる」を逆転して「伝統的七夕が遅い年ならば前月までに閏月が入る」でも成り立つのです。つまりは「伝統的七夕が遅い」と「旧暦7月までに閏月が入る」は、旧暦ルールを前提とした等価な結論ということで、どちらかがもう片方の原因という因果関係になりません。

新月が入る“癖”を見抜くことが旧暦理解の第一歩。「今年はやたら下旬に新月期が多いなぁ」とか「あいつ、有給取る日が毎月少しずつ早くなってる…ひょっとして同志か?」なんて思うことありませんか?その感覚、天文屋には大事ですよ。さぁて、ここまで読んでもまだチンプンカンプンな方はフェイクや陰謀論に騙されやすい気質かも?「この高級望遠鏡を買えば運気上昇!金運アップ!コンテスト入選も確実!」みたいな霊感商法?にご注意を。

  • 新暦と旧暦の区切り(2025年)

    A.新暦と旧暦の区切り(2025年)
  • 新暦と旧暦の区切り(2026年)

    B.新暦と旧暦の区切り(2026年)


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