衝を迎える木星2023/11/03

20231103木星
昨夜から今朝にかけて良く晴れ、夜半過ぎ頃までは総合的にかなり良いシーイングに恵まれました。狙うはもちろん木星。衝直前のタイミングとなります。

左画像は撮影中心タイムが3日0:05の木星。左上はイオです。前夜に木星前面を通過してたのに、もう裏側へ回って通り過ぎていました。もう初冬に近いですから時々やってくる大きな揺らぎは仕方ありませんが、全体的にかなり細かいところまで見えていました。今期の衝は以下の通りです。

    【木星メモ・2023年の衝付近】
  • 黄経衝の瞬時:11月3日 14:02:26 JST
  • 赤経衝の瞬時:11月3日 23:48:07 JST
  • 地球最接近:11月2日 06:00:38 JST、3.98236796 AU
  • 位相角最小の瞬時:11月3日 13:54:01 JST、0.28157305°


今夜晴れてくれれば申し分なし。はてさていかがでしょうか?


【追記】
木星撮影から少し時間をおいて月面も観察。やはりこの時間は若干シーイングが悪くなりますね。色々撮ったなかから2シーン(4枚)掲載。

下A・C画像は静かの海西部付近。ラモントが目立ち始めたので、これが引き立つように処理しました。たくさんのリッジが走っていますが、よく見るとラモントから放射状の向き、ラモントを包み込むような向き、そしてラモントとは全く関係なさそうな向きの三種類あることが分かります。また、光条という程ではありませんが、ラモントを覆うようにアルベドが大きく(明るく)なっていることも見て取れます。少なくとも表面の地質が外周とは少し違っているのですね。ヒパチア谷やソシゲネス谷、そして左端に見切れてしまいましたがアリアデウス谷も見えています。背の低いドーム地形であるアラゴーα、アラゴーβも見えてきました。

A画像下側にはテオフィルスとキリルスのコンビ。このコンビからアルタイ断崖にかけて写したのが下B・D画像。ピッコロミニはすっかり暗くなってしまいました。神酒の海に半分沈むフラカストリウスも、もう少し経ったらRay現象を起こしそう。画像左辺からアルタイ断崖にかけて長いチェーンクレーターが見えています。「月世界への招待」サイトの東田さんによると、上弦側では一部が切り取り線(破線)に見えるとのこと(→観察日記参照。)私はチェーンクレーターそのままでも「切手の縁にあるような目打(めうち=ミシン目のように空けられた小さな穴)」にそっくりと感じるので、日照具合に関わらず切り取り線に見えてしまいます。

ちょっと面白いなと感じたのは神酒の海中央が少し凹んで見えたこと。これが本当に凹んでいるのか、地面がそう錯覚させるような色合いなのかは分かりません。ちょうどシラー・ズッキウス・ベイスンのような感じでしょうかね?(※英語版wiki神酒の海のページ下にあるTopographic map of the same areaを見ると、ごくわずかにへこんでいる部分があるようにも見え、画像の凹みの位置にも対応してます。)テオフィルスは「月面グー」になっていますが、ここまで拡大するとあまりグーらしくありません。もう少し遠目に(小さく)見たほうが分かりやすいのでしょうね。

  • 20231103ラモント、テオフィルス

    A.ラモント付近
  • 20231103テオフィルス、フラカストリウス、アルタイ断崖

    B.アルタイ断崖付近


  • 20231103ラモント、ヒギヌス谷

    C.ラモント付近
  • 20231103テオフィルス、フラカストリウス、アルタイ断崖

    D.アルタイ断崖付近


今日の太陽と、まだまだ続く黒潮大蛇行2023/11/03

20231103太陽
朝からよく晴れています。午後は汗ばむくらいに暖かくなりました。気象庁アメダス速報値の本日0時から15時までの集計による夏日地点数は357、なんと、真夏日地点数は3(いずれも沖縄・石垣島、下地島、鏡原の各ポイント)。もっとも北寄りの夏日地点は青森県野辺地ポイントなどで25.4度。

20231103太陽リム
左は10時過ぎの太陽。左リムにはまだ採番されていない次の黒点たちが顔を出していました。順調ですねぇ。いくつかダークフィラメントの一部がプロミネンスとして見えています。左上リムには糸のように細いプロミネンスが(一応?)ループを描いています。

20231102-2100JST
ところで昨夜は穏やかな快星夜でしたが、日本付近にあまり雲がなかったので海面温度を見るのに良い機会と思い、気象衛星ひまわりのバンド7画像を左に引用しました(2日21:00JSTの画像/画像元:RAMMB/画像処理・地図等は筆者)。紀伊半島沖や四国沖に周囲より暗い(=海面温度が低い)地域が舌状に広がっていることが分かりますね。これが黒潮大蛇行です。

今年3月1日記事にも書きましたが、歴代最長となった今回は、10月が終わった時点で実に6年3ヶ月が過ぎ、6年4ヶ月目に突入しました。こんなに長いと日本近海の海の生態系が変わってしまいそう。いったいいつまで続くのか…。

無事に衝を過ぎた木星2023/11/04

20231103夜・木星
木星が今期の衝を迎えました。昨夜から今日未明も晴れて、安定した空で巨大惑星を観察することができました。

左画像は3日23:43ごろの撮影。黄経衝から10時間近く経ち、また赤経衝直前の姿です。手前を通過中なのはガニメデ。5時間ほど前にはイオの通過も見られました。なお2022年8月20日記事に書いた通り、2025年5月まではカリストの影は木星本体に投影されません。現在影が見えるのはイオ・エウロパ・ガニメデだけです。

11月2日に撮影したイオ+イオの影の通過と比べると、どちらも衛星と衛星の影がくっつくほど観察者視線に揃っていますが、今回のほうがわずかに影が衛星の左(東)に寄っていることが分かります。つまり地球・木星を結ぶ直線に対して太陽が西から照らすようになったと言うことです。来年2024年5月19日に合を迎えるまで、木星は(地球から見て)西にいる太陽に向かって近づいて行くことになります。これに伴い、南中する時刻も次第に早まります。

今まで木星本体の影も木星の西側が多かったのですが、衝以降は東側が陰ってくることになりますね。また、撮影はほぼ南中時に行ったのですが、太陽の南中からほぼ12時間後でした。このことも衝の時期にみられる特徴です。明るい、大きいといったことだけでなく、衝ならではの特徴を幾つ見つけられるか試してみてください。ともあれ、無事に晴れて衝の木星を観察できたことは大きな収穫でした。衝を迎えることは誕生日のようなものですからね。

【追記】
時間をおいて未明に撮影した月面から2シーン掲載。夕方から結露がすごく、空の透明度も大きく落ちていたため、明け方が近づくほど霧に覆われる可能性があったのですが、ギリギリまで待って高度を稼ぎました。

下A画像は晴れの海やその南側付近。中川昇さんのブログによれば3日23時ごろは欠け際にラモントが見えていたとのことですが、この画像を撮影したのは4日2:20ごろ。ラモントはもう西側のリンクルリッジのみでした。すぐ近くのアラゴーα&βは見やすいですね。アラゴ付近の別のドーム群やバレンタイン・ドーム、マニリウス西にある10個以上のドーム群なども確認できます。谷も多いですね。ヒギヌス、アリアデウス、トリスネッカー、ボスコヴィッチ、ソシゲネス、メネラウス、スルピキウス・ガルス、ハドレー、リッター、ヒパチアなどなど。晴れの海は肝心のスミノルフ尾根が影になりましたが、まだ見えているアサーラ尾根やフォン・コッタ尾根などまだ見えています。

下B画像はまだ影があまり出ていない中央火口列付近。凸凹感が足りませんが、こういうときこそ観る目、探す目を養ったらいいと思います。月面X地形はもう見えてますね。画像左には大きな黒猫ちゃんもこっちを見てます。直線壁が光りだしました。

デービーやミュラーなどのチェーンクレーター(クレーターチェーンまたは連鎖クレーターとも)見つかります。昨日の記事にも出たアブルフェーダーのチェーンはこの画像のもう少し東。プトレマイオスBも既に見えていますね。その下、アルフォンススの暗斑はもう少し経つと目立たなくなるでしょう。画像左下、ピタトスでは来週11月7日明け方にRay現象が見えるかも知れません。隣り合わせのヘシオドスRayは上弦側で、ピタトスRayは下弦側で、それぞれ同じ隙間を太陽が通って起きる珍しいペアのRay現象なのです。

案の定、撮影中に月が見えなくなるほどの霧に覆われたけれど、少し待ったらまた晴れて、トータル1時間ほどお月見ができました。もちろん機材も作業机も服もびしょびしょ。

  • 20231104晴れの海、ユリウス・カエサル、ドランブル

    A.晴れの海付近
  • 20231104中央火口列

    B.中央火口列付近


今日の太陽2023/11/04

20231104太陽
明け方に時々霧に覆われました。当地だけでなく関東各地で霧が発生したようで、朝の衛星画像にも写っていました。朝がきてからも少し霞んでいましたが、ゆっくり回復。ただ、明日から明後日にかけて少し崩れそうな予報のため、昼からは巻雲が全天を覆っています。天気はやや下り坂。気象庁アメダス速報値の本日0時から15時までの集計による夏日地点数は217、真夏日地点数は5。昨日「11月の日最高気温」を更新した地点が304もあったのには呆れました。

20231104太陽リム
左は9:50ごろの太陽。昨日から見えていた左端やや下リム近くの小黒点群付近は活動領域13480と採番されました。そのすぐ南側のリムに立派なプロミネンスが見えます。他にも各方向に出てますね。ダークフィラメントも相変わらずよく伸びています。光球がやや暗く、霞の影響が出ていました。