宵空を飾る期間限定の「みつご座」2023/05/07

20230504みつご座と金星
夕空の金星が高度を増しています。その行き先にはふたご座のカストルとポルックス。良く見ると、元々そこにいたかのように火星も並んでいます。ポルックスが1.2等、カストルが1.9等、火星は1.4等。同じような明るさの星が仲良く集う様子は、まるで「みつご座」みたい。あるいは紅一点と考えれば、あだち充さんの漫画「タッチ」に登場する三人の主人公たちを彷彿とさせます。

左画像は5月4日の宵に撮影したもの。まだ背景は薄暮が残っていた時間ですが、光害も酷かったため均一に均した上でできるだけ微光星を取り出してみました。どこになにが写っているかは右下画像をご覧ください。薄く星座線と星座絵を重ねてあります(ステラナビゲーター使用)。

「このまま火星が移動して、ポルックス・カストル間とポルックス・火星間との離角が一致したら、みつご座らしいかも!」と考えて計算してみたら面白いことが分かりました。1900年から2100年まで計算したうち離角差1°以内に限定すると、火星以外の惑星では全く起こらないのです。また火星でもこの201年間で19回(地心計算)しか起こりません(記事末表参照)。

20230504みつご座と金星
今年は5月9日10時ごろにポルックス・火星間が5.00°、ポルックス・カストル間が4.51°となって、2008年以来ひさしぶりに二等辺三角形っぽくなるでしょう。これを期間限定の三つ子の星座として愛でるのも一興ではないでしょうか。

もうひとつ、横並びに直線状となったときをみつご座と見なす方法も考えられますね。これは2年弱の周期で頻発しますが、ポルックス・火星間が8°近くになってしまうこともあるので、離角7.0°以下に限定して下表に掲載しました。今年は5月18日2時ごろピッタリ一直線になります。2時では沈んでいますから、前後の日の宵に確認しましょう。

今週から来週にかけては宵空を見上げ、三つ子ちゃんの様子を気にしてあげてください。金星もどんどん近づいてきますよ。

【三天体が二等辺三角形に近い】
日時(JST)離角差(°)
1913年11月12日 11:070.62
1914年4月14日 18:11-0.06
1929年4月28日 15:290.29
1944年5月9日 12:360.51
1946年4月3日 13:31-0.40
1961年4月21日 11:030.13
1976年5月3日 17:210.40
1992年11月4日 8:380.83
1993年4月12日 16:15-0.11
2008年4月27日 6:210.27
2023年5月9日 9:590.50
2025年3月31日 6:54-0.50
2039年11月30日 16:490.32
2040年4月19日 18:540.09
2055年5月3日 11:220.38
2070年5月13日 20:100.58
2071年10月31日 21:450.94
2072年4月10日 11:37-0.17
2087年4月26日 19:490.24
【三天体が一直線に近い】
日時(JST)離角(°)
1914年4月24日 17:016.34
1929年5月7日 15:526.74
1944年5月18日 3:547.00
1946年1月10日 14:033.43
1946年4月15日 1:125.97
1961年4月30日 21:016.55
1976年5月12日 12:506.87
1978年2月9日 18:213.26
1978年3月31日 1:405.30
1992年11月23日 3:316.18
1992年12月12日 0:454.95
1993年4月22日 21:016.28
2008年5月6日 8:346.71
2023年5月18日 2:066.98
2025年1月17日 14:023.24
2025年4月12日 12:335.87
2040年4月29日 8:196.51
2055年5月12日 8:096.85
2057年2月19日 2:423.49
2057年3月25日 1:585.01
2071年11月15日 13:496.67
2071年12月24日 23:054.20
2072年4月20日 23:316.22
2087年5月6日 0:126.68

  • 「二等辺三角形に近い」ほうではポルックス・カストル間離角とポルックス・火星間離角との差が1°内で最小になる日時を計算しました。ポルックス・火星間が長い場合を正の数値とします。
  • 「一直線に近い」ほうではカストル→ポルックスの方向角とカストル→火星の方向角が一致する日時を計算しました。離角欄はポルックス・火星間の離角で、7°以内の場合のみセレクトしてあります。(2024.11.01記:一部に計算抜けがあったので改訂しました。)
  • いずれも地心計算で、期間は1900年始めから2100年末まで。火星・太陽間離角が60°未満は空が明るくてふたご座全体が見えないため除いています。
  • 自作プログラムによる計算です。


20230505スターリンクトレイン
【余談】
上画像を撮影した翌日も金星とみつご座を見ていました。少し雲があり、風もあったため撮影はしませんでしたが、たまたま線状の飛行物体を見つけました。すぐに「スターリンク・トレイン」だと直感、北空を通って東の建物に消えるまで長時間の観察ができました。全体がまとまっており、最長時の全長は15°ほど、うち先頭の3°ほどは最大時に0等から1等級で煌めいていました。

このトレインは5月4日7:31UTに打ち上げられたStarlink G5-6の衛星群で、打ち上げから27時間後に見たことになります。こんなにも明るく見えたのは初めてです。左上図はStellariumで当日の軌道要素による表示。後ろの衛星群が暗かったのは謎ですが、正にこんな雰囲気。更に6日宵の周回時にも雲越しで観察しましたが、もう見えない光度になったためか発見できませんでした。