ガリレオ衛星の影踏み2026/01/11

202601・衛星の影踏み
昨日1月10日の天リフピックアップ作業配信でちょっと話題に出ていた「ガリレオ衛星の影踏み」。衛星が木星面を通過する際に自身の影に重なりながら移動する様子を、ずいぶん前にそう呼んだことがありました。衝のころ稀に観ることができる現象ですが、今回は三日連続、しかも影に極めて近いという滅多にないケース(左図はStellariumによるシミュレーション)。

衛星とその影が同時に木星面を通過すると嬉しいもので、大赤斑が加わると更に面白い。ガリレオ衛星によって公転半径は区々のため、近い側のイオとエウロパは通過ごとに同時通過時間が少しはあるけれど、ガニメデとカリストは滅多にない(カリストに至っては影が全く見えない時期もある:6年周期の半分は影が投影されない→2022年8月20日記事参照)と言っていいくらい。まして影踏みになることはなかなか無くて、一回の衝で数回見えればラッキーです。

影の位置が衛星位置と東西にも南北にもズレが少ない条件とは何でしょうか?右下図は天文関係の資料によく載っている衛星の運動図で、今年1月10日の衝を含む前後を切り出したもの。この中で、オレンジの点線円で囲んだ通過が、今回三日連続で見えた影踏みです。

ガリレオ衛星の運動図
イオの公転周期が約1.77日なので、冒頭画像でも分かるようにたまたま1回目と3回目の両方が夜の時間にかかってくれました。ただ、よく見ると影位置が東西方向にずれており、衝を挟んで西側から東側へ移りましたね。この移動は視線に対して衝の前と後で太陽の差す方向が変わったからです。満月の前後でお月様の欠ける位置が西から東へ移るのと同じことです。(注:ここで言う東西は天体座標の方角ではなく、天球での東西のこと。天の北を上とすると、天の西=右方向、天の東=左方向です。)

わずか1日でもずれると影の東西方向へのずれが目立ってくるため、影が見えなくなるほど美しい影踏みが成立するには「衝の日に起こること」が必須となるわけです。

では、衝の日に起こる全ての影踏みは美しいのでしょうか?実はそうなりません。南北にずれる原因がまだ残るからです。

ガリレオ衛星の公転軌道傾斜はゼロに極めて近いため、「木星赤道面を回っている」と考えても差し支えありません。もし木星に土星並みの立派な環があったら、ガリレオ衛星は環の中に浮かんでいるでしょうか。となると、衛星とその影が南北にもずれないようになるには、地球から見た“環”と“環の影”が一致する季節、つまり“環の消失”の時期に近く、また太陽が照らす方向と視線とが一致する時期が望まれます。これを知るには土星の環の傾斜でよく見る傾斜角の図を木星でも描く必要があります。ということで描いてみました(左下図)。

木星の赤道面傾斜
wiki等で赤道傾斜角(自転軸傾斜角)を調べたとき3.12°などと掲載されているのは、自分の公転面に対して赤道面がどれだけ傾いてるか、という値です。地球や太陽から見たときの傾きではありません。なので、「指定日時に地球(地心)から見た傾き」のように直してあげる必要があります。図では土星の環と同じく「中央緯度(惑心緯度)」で表現しましたが、そのまま(見かけの)赤道傾斜角と読み直しても同じです。

図から分かるように木星公転周期・約12年で繰り返しており、6年ごとに「環の消失」に相当する時期がやって来ることが分かるでしょう。衝と合の時期も分かるよう、破線を入れておきました。今回の衝は中央近く、緑の破線円で囲んだところです。中央緯度はゼロから少し離れていますが、それよりも地心中央緯度と日心中央緯度がずれていないことのほうが大事ですね。暗闇で目の近くに懐中電灯を構えると相手の影がほとんど見えなくなるのと同じです。影が南北にずれないためには、「衝のタイミングと地心中央緯度=日心中央緯度のタイミングが一致」することが肝心のようです。

全部では無いけれど先々の衝を調べると、今回並みに一致するケースは2032年7月19日の衝近くや2038年1月14日の衝近くのみで、前図の通り地心中央緯度と日心中央緯度がほとんどずれていません。しかしながら「ほとんど起こらないなぁ」という印象を持ちました。今年観ることができた方、特に11日のカリストは本当にラッキーでしたね。

全く関係ないですが、いろいろ探していてたまたま2027年1月31日0:53JSTごろに「エウロパがカリストの影を踏む」という珍現象が起こるようです(下A図)。ほとんど影が見えない美しい影踏みになるので見逃せません。ただしセルフ影踏みと違って一瞬で影を追い抜くので、現象時刻を間違えないようにしましょう。そのほか、悪像ながら過去に捉えた影踏みの実写画像を3枚掲載しておきます。(※参考値:2023年の黄経衝は11月3日05:02:26UT、2024年は12月7日20:58:00UT。)

  • 20270131-0052木星衛星

    A.エウロパのカリスト影踏み
    2027年1月31日
  • 20231102イオの影踏み

    B.イオの影踏み
    2023年11月2日
  • 20231103ガニメデの影踏み

    C.ガニメデの影踏み
    2023年11月3日
  • 20241206イオの影踏み

    D.イオの影踏み
    2024年12月6日


【補記】上のB・C画像を見ると、今年に比べて南北のずれが大きいことが分かる(影のほうが衛星より北にずれている)。前出の赤道面傾斜グラフを見ると、2023年11月の衝前後は地心から木星への視線よりも0.25°ほど南に低い位置から太陽が照らしていることが分かる。結果として地球からは衛星よりも北側へずれて投影された影が見える訳である。

今日の太陽とハロ現象2026/01/11

20260111太陽
昨夜は宵のうち晴れましたが、のちに曇ってしまいました。それに午後の強風は夜も止まず、コンスタントに5m/sを越えていました。今日は朝から雲が多く、最大風速10m/sを越えています。

20260111太陽リム
左は13時前の太陽。わずかな雲間から撮りましたが、メチャクチャなシーイングに加えて黄砂のような透明度の悪さで、完全に光量不足。フレームあたり2倍近くの露光をかけてます。ピントは合っているはずですが川底を見てるような悪像になりました。活動領域14336付近は中央子午線を越えました。まだ左半球は何も無し。右リムのプロミネンス達が荒々しいですね。

【夕方追記】
夕方窓を開けると、低空の木々越しに何やら色の着いた雲が。よく見ると幻日でした。風が強くて倒れそうになりながら外に出て木々越しに撮影。左右とも明るく、良く発色していましたが、ほんの5分で消えました。窓から顔を出したのが神タイミングでした。

  • 20260111幻日

    A.左の幻日
  • 20260111幻日

    B.太陽と右の幻日