今日の太陽 ― 2026/03/01
『標準的な大きさ』の皆既月食 ― 2026/03/03
本日3月3日に皆既月食が起こります。「雛祭り月食」などと盛り上がってきましたが、残念ながら日本の大部分で天気が怪しそう。次に日本で見える皆既月食は2029年1月1日・初日の出前の未明です(→2025年8月19日記事参照)。偶然ながら「正月月食」「節句月食」「ゾロ目月食」になるようですね。
ところで今回の雛祭り月食の際、単に「皆既になる」だいうだけではなく、「満月として久しぶりに“標準的な”大きさに見える」というイベントにお気付きの方はいらっしゃいますか?普通の大きさの満月なんて毎年起こりそうなものだけれど、意外にも起きる期間と起きない期間がまとまって交互にやってくるため、しばらく見えないことがあるのです。しかも「瞬時に夜空に見える」「天気が良い」等の条件を加味すれば、10年あたり数回程度に減ってしまいます。
スーパームーンとか今年いちばん大きい/小さい満月と言った極値はよく話題になりますが、「標準的な大きさ」は全く話題になりませんね。でも標準があってこそ最大・最小が成り立ち、引き立つのですから、基本の大きさをしっかり観察し、自分の感覚に植え付けておくことに損はありません。
「標準的な大きさの満月」とは「地球中心と月とが平均距離にあるときの満月の視直径」と言い換えられます。平均距離を、ここでは多くの資料で使われる384400kmとしましょう。この数値は地球接近小惑星などの接近具合を表すひとつの単位としてLD(Lunar Distance)と言うこともあります。ちなみに月自身は回転楕円体に近く、月の軌道も楕円、しかも常に変化していますから、平均の計算と言っても様々な考え方があって簡単ではありません。(楕円軌道にも相加平均、相乗平均、調和平均などを定められ、それぞれ意味があります。)また月の直径に関してもいまだに精密な測定が行われてますし、何を持って正式な値とするかも色々な考えがあるでしょう。ここではIAU報告に基づいて平均半径1737.4kmを基準にします(→国立天文台・暦wiki参照)。これらは近い将来変わることもあり得ます。
1LDと月の実直径を使えば、地心平均視直径はおよそ31′ 4.55″=31.07576′=0.517929°と求まります(→国立天文台・暦wiki「視半径」参照)。
上図は今年の月視直径変化を計算したもので、A図は1月1日から4月1日まで、B図はA図のうち2月21日から3月5日を切り出したもの。結構変わりますねぇ。振れ幅も時期によって変化します。一般に月距離は「地心」から「月心」まで考えることが多いですが、地表から月を見ている私たちは地球直径ぶんの視位置変動があり、当然見かけの大きさに影響します。月食を数時間かけて最初から最後まで観察した方はご存知と思いますが、最初と最後で月の大きさが変わっていますよね。記事冒頭のような合成画像を仕上げるとき知ってなくてはならない案件なのです。
今回の月食では皆既最大が2026年3月3日20:33:41、満月瞬時は同20:37:53。満月瞬時の地心視直径は31′ 14.01″となって、前出の平均視直径に比べ10秒角程度大きく見えます。上B図からも満月瞬時に標準的な視直径に近づく様子が分かりますね。地心距離は1LD-1787.945km、測心距離は1LD-5573.829kmで、太陽系規模で考えればわずかな差でしょうか。(※ここでは日本経緯度原点を観測地代表にしています。)
別の見方で、満月瞬時における地球と月との距離をグラフにしたのが下図(※2019年11月13日記事の図を改良したものです)。C図は50年あまりの変化、そのうち2025年から2030年まで切り出したのがD図。2020年〜2025年は平均距離プラスマイナス2000km(図のクリーム色帯部分)に入り、かつ夜空に見えた満月は地心計算でも測心計算でも皆無、空白の期間でした。今回の月食満月からいよいよ「標準的な大きさの満月期間」が始まったと言えましょう。ただ、年間2回程度のチャンスはあれど、満月瞬時に空に見えるとは限りません。D図の範囲でも文字記入のある三回しかチャンスがないのです。意外なほど少ないですね。次回2027年10月15日は中秋一ヶ月後の満月で、瞬時の測心距離は平均距離より約290km月に近いだけ。国内では一番近いのが小笠原諸島付近の1LD-620km、いちばん遠くても北海道稚内辺りの1LD+190km。最も標準に近いのは函館で1LD-7km程度。今度こそ晴れてほしい。
2026年の満月については年初めの総括記事に書きました。満月に限らなくても良いのですが、普段から「自分の望遠鏡でこれとこれを組み合わせれば月がこれくらいの大きさで見える/写る」ことを身体が覚えるくらいになると良いですね。「今日の月はいつもより大きいな」と分かるようになったときの喜びはその人にしか味わえない醍醐味です。
参考:
天の川に近い皆既月食(2025/08/19)
満月の標準的な大きさを知るには?(2019/11/13)
ところで今回の雛祭り月食の際、単に「皆既になる」だいうだけではなく、「満月として久しぶりに“標準的な”大きさに見える」というイベントにお気付きの方はいらっしゃいますか?普通の大きさの満月なんて毎年起こりそうなものだけれど、意外にも起きる期間と起きない期間がまとまって交互にやってくるため、しばらく見えないことがあるのです。しかも「瞬時に夜空に見える」「天気が良い」等の条件を加味すれば、10年あたり数回程度に減ってしまいます。
スーパームーンとか今年いちばん大きい/小さい満月と言った極値はよく話題になりますが、「標準的な大きさ」は全く話題になりませんね。でも標準があってこそ最大・最小が成り立ち、引き立つのですから、基本の大きさをしっかり観察し、自分の感覚に植え付けておくことに損はありません。
「標準的な大きさの満月」とは「地球中心と月とが平均距離にあるときの満月の視直径」と言い換えられます。平均距離を、ここでは多くの資料で使われる384400kmとしましょう。この数値は地球接近小惑星などの接近具合を表すひとつの単位としてLD(Lunar Distance)と言うこともあります。ちなみに月自身は回転楕円体に近く、月の軌道も楕円、しかも常に変化していますから、平均の計算と言っても様々な考え方があって簡単ではありません。(楕円軌道にも相加平均、相乗平均、調和平均などを定められ、それぞれ意味があります。)また月の直径に関してもいまだに精密な測定が行われてますし、何を持って正式な値とするかも色々な考えがあるでしょう。ここではIAU報告に基づいて平均半径1737.4kmを基準にします(→国立天文台・暦wiki参照)。これらは近い将来変わることもあり得ます。
1LDと月の実直径を使えば、地心平均視直径はおよそ31′ 4.55″=31.07576′=0.517929°と求まります(→国立天文台・暦wiki「視半径」参照)。
上図は今年の月視直径変化を計算したもので、A図は1月1日から4月1日まで、B図はA図のうち2月21日から3月5日を切り出したもの。結構変わりますねぇ。振れ幅も時期によって変化します。一般に月距離は「地心」から「月心」まで考えることが多いですが、地表から月を見ている私たちは地球直径ぶんの視位置変動があり、当然見かけの大きさに影響します。月食を数時間かけて最初から最後まで観察した方はご存知と思いますが、最初と最後で月の大きさが変わっていますよね。記事冒頭のような合成画像を仕上げるとき知ってなくてはならない案件なのです。
今回の月食では皆既最大が2026年3月3日20:33:41、満月瞬時は同20:37:53。満月瞬時の地心視直径は31′ 14.01″となって、前出の平均視直径に比べ10秒角程度大きく見えます。上B図からも満月瞬時に標準的な視直径に近づく様子が分かりますね。地心距離は1LD-1787.945km、測心距離は1LD-5573.829kmで、太陽系規模で考えればわずかな差でしょうか。(※ここでは日本経緯度原点を観測地代表にしています。)
別の見方で、満月瞬時における地球と月との距離をグラフにしたのが下図(※2019年11月13日記事の図を改良したものです)。C図は50年あまりの変化、そのうち2025年から2030年まで切り出したのがD図。2020年〜2025年は平均距離プラスマイナス2000km(図のクリーム色帯部分)に入り、かつ夜空に見えた満月は地心計算でも測心計算でも皆無、空白の期間でした。今回の月食満月からいよいよ「標準的な大きさの満月期間」が始まったと言えましょう。ただ、年間2回程度のチャンスはあれど、満月瞬時に空に見えるとは限りません。D図の範囲でも文字記入のある三回しかチャンスがないのです。意外なほど少ないですね。次回2027年10月15日は中秋一ヶ月後の満月で、瞬時の測心距離は平均距離より約290km月に近いだけ。国内では一番近いのが小笠原諸島付近の1LD-620km、いちばん遠くても北海道稚内辺りの1LD+190km。最も標準に近いのは函館で1LD-7km程度。今度こそ晴れてほしい。
2026年の満月については年初めの総括記事に書きました。満月に限らなくても良いのですが、普段から「自分の望遠鏡でこれとこれを組み合わせれば月がこれくらいの大きさで見える/写る」ことを身体が覚えるくらいになると良いですね。「今日の月はいつもより大きいな」と分かるようになったときの喜びはその人にしか味わえない醍醐味です。
参考:
天の川に近い皆既月食(2025/08/19)
満月の標準的な大きさを知るには?(2019/11/13)









