スターリンク・ダンスをとらえる2024/03/11

20240310スターリンク・ダンス
少し前の話題になりますが、星ナビ3月号の記事にあった「スターリンクの舞」をブログ「もっと宇宙の話をしよう!」のTaizoさんが撮影されていました。私もやってみたかったのですがなかなかタイミングが無く、ようやく昨夜に試すことができました。

記事によれば、日没後または日出前の太陽が一定条件のとき低空を飛び交うスターリンクのフレアが起きるため、多数のフレアが何度も横切るように見えるとのこと。直線的ではありますが、蛍のように飛び交う様を「舞い」と表現しているようです。

昨夜は恒星位置で太陽方向を確認した後、4秒露出+1秒間欠で20:02から2時間ほど撮影しました。当地ではこの間に太陽高度が約-28.7°から-49.4°まで画像右下に向かって下がっています。全部を比較明コンポジットしたものが冒頭画像。また30分ずつコンポジットしたのが下A-D画像です。D画像には全く写っていません。全てがスターリンクのフレアとは限りませんが、開始直後から21:27ごろまでフレアが写っていましたので、今回は太陽高度が約-30°未満あたりで始まり、-45°に達する前に終わるという条件が分かりました。また大雑把には次のような傾向がありました。

20240310スターリンク・ダンス
  • 出現位置が高いほどフレアが暗い。低いほど明るい。
  • 出現位置が高いほど飛行経路が長め。低いほど短め。
  • 出現位置が高いほど飛行頻度が多め。低いほど頻度が少なめ。
  • 時間経過と共に次第に北へ寄る。(宵側の場合。)

宵側の場合は太陽移動に伴って出現位置が次第に低くなります。明け方側では逆向きですね。全コマチェックしたところ、概ね1分につき数回のフレアが現れ、多いときにはひとコマに四つ写っていたものもありました(右画像/黄色円内)。今回は目視観測はしませんでしたが、双眼鏡で眺めても面白そうですね。空の良いところならもっと見えると思います。分野は違うけれど、理屈は「太陽柱」に似ているのかなと思いました。(イリジウムフレアの計算を学んでいた頃のうろ覚えですが、確かフレアを起こす太陽電池パネルやボディ面の法線に対し、太陽光入射角と観測者への反射角が一致するときフレアが起こったはずです。いっぽう太陽柱は大気中にある氷結晶の法線に対し、太陽光入射角と観測者への反射角が一致します。※このとき氷結晶は六角板状であり、地面に対して平行に漂っている姿勢で、無風のことが多いです。)

地平下の太陽方位
かつてのイリジウムフレアのような派手さはないものの、空をくまなく覆っている衛星コンステレーションですから、天気に恵まれ空の方向さえ間違わなければ宵側と明け方側の一日二回確実に見えるはず。見える方位は地平下の太陽方位とだいたい同じなので、手ごろなプラネソフトでシミュレートすればすぐ分かるでしょう。

地平下の太陽到達時刻
日本経緯度原点における“夜の”太陽方位および太陽到達時刻(太陽高度が-30°と-40°の各ケース)を1年ぶん計算すると左上図および右図のようになりました。左上図縦軸は90°が真東、180°が真南、270°が真西、0°=360°が真北です。また右図縦軸はJSTです。他年度でもほぼ変わりません。

夏至プラスマイナス二ヶ月程度は太陽の沈み込みが浅いため、この計算位置では-40°まで届かず「解無し」になります。その代わり僅か1.5時間ほどの時間差で宵と明け方のフレアタイムが真夜中を挟んで接近するため、理屈通りなら北天低空に煌めくスターリンク・ダンスを連続して楽しむことができるでしょう。本州辺りだと、もしかしたら「フレアの子午線通過(下方通過)」になるかも知れませんね。興味深い現象なので、年間で撮り比べ解析してみようと思います。スターリンクは今後もっと密度が高くなりますから、このフレア群は近い将来びっしり輝くようになると予想されます。現在目立つのは高度550kmにあるスターリンク群と考えられますが、将来は低高度(高度340km)の群が圧倒する計画なので、フレアも更に高輝度・多頻度になるでしょう。ある意味「見もの」であり、「厄介者」でもありますね。

  • 20240310スターリンク・ダンスA

    A.20:02-20:31
  • 20240310スターリンク・ダンスB

    B.20:32-21:01


  • 20240310スターリンク・ダンスC

    C.21:02-21:31
  • 20240310スターリンク・ダンスD

    D.21:32-22:02


20240310ポン・ブルックス彗星(12P)とM31
スターリンク・ダンスの前には前夜と同じようにポン・ブルックス彗星(12P)とM31のツーショットを撮りました。若干長いレンズにしています。尾は1.5°あるかどうかといった程度。今夜以降はアンドロメダ銀河から離れます。

参考:STARLINK CLUSTER FLARESの関連記事(海外サイト)
SKY&TELESCOPE・BOB KING氏の記事(2023/11/01)
Jeff Warner氏の記事(2023/04/24)

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