今朝の土星とJ.ブリン氏の思い出 ― 2025/07/24
夜明けが近くなってようやく薄雲がとれたので、土星を眺めました。シーイングは5/10から7/10を行ったり来たり。ときどき大きなシーイングの揺れがあるのが気になりました。
環の右下にある衛星はレアとテティス。明るいほうがレアです。5日前と比較しても環の明るさは変わりません。カッシニの間隙は分かるけれどエンケの間隙はまだ判別不能。環の「透明感」と言いますか、「薄さ」と言いますか、そのような感じが表現できなくてもどかしいところです。
【脱線話】
環の明るさと言うと、学生時代にジェームス・F・ブリン氏の論文に魅了された思い出がよみがえります。
ハレー彗星の回帰や、ボイジャーの素晴らしい探査成果に沸き立つ1980年代から天文に関わってきた方なら、カール・セーガン氏の「コスモス」という番組をご存知でしょう。この番組で頻出していた「ボイジャーが木星や土星に接近しながら本体や衛星をモザイク撮影する」という驚異的なリアルCGを覚えているでしょうか?このCGを作ったのがNASA-JPLのジェームス・F・ブリン氏でした(→日本語wiki・英語wiki)。氏のCGは科学的に忠実なシェーディング理論やバンプマッピングなど、現在もなお使われ続けているコンピューターグラフィクスの基礎を作った科学者です。当時は大容量の映像をデジタル記憶できる時代ではなかったので、コスモスに使われたCGはモニター前に映画用カメラ(16ミリフィルム)をセットし、コマ撮りしたそうです。
マッピングの技法は現代の多くの天文ソフトで使われています。簡単に言うと、精密モデル化が難しい対象の代わりに、表面形状や光学特性のみ記述して簡略化する方法。たとえば惑星面の大気や海などの流れや光の拡散、反射などはそのままモデル化が難しいけれど、もし表面を1枚の平面図(展開図/テクスチャ)にできれば、それを球体に貼り付けて「それっぽく見える疑似惑星」が作れます。探査機飛行ルートや撮像エリアの確認であれば、それで十分なのです。
別途用意したテクスチャを時々刻々と変化させる…例えば木星の模様や大赤斑がウネウネ動いてる…といったことも可能です。惑星観測家が良く使うWinJuPOSのメニューにあるデローテーションもこのテクスチャマッピングの応用ですね。右はStellariumの木星テクスチャに「いらすとや」の絵を貼り付けたサンプル。ちゃんと顔面をイオとその影が通過します。自分で撮った画像を展開図にして貼り付けることも可能です。
ブリン氏は更に光の反射を表面特性に応じてに散らすことで、土星のA環B環C環…ごとの濃淡の違いや表面のスポークまでもリアルに映像化しました。バンプマッピングと呼ばれる技法です。逆に、地上観測やボイジャーカメラが捉えた環の明るさとCGモデルとの相違を追求することで、材質や密度などを特定してゆくことも可能でしょう。当時のCGは石膏像とかプラスチックみたいな質感ばかり。 レイトレーシングが生まれ、鏡面や透明なものの表現がようやくできるようになってきた時代。バンプマッピングは革新的発想でした。これを知ったとき大学図書館中を探して論文を見つけ出し、宝物のように何度も読み返しました。当時は私も8mmムービーカメラ(注:ビデオじゃなくフィルム)でPC-8801画面を写すコマ撮りCGに夢中だったので、妙な親近感がありました。
後に映画「ジュラシックパーク」の恐竜の肌など、主にエンターテインメント分野のあらゆる場面に応用されたバンプマッピングですが、元々は土星の環を『科学法則に則って』どうやってリアルに描くかと言うシミュレーションだったのです。現在では探査機による実測標高をデータとして持たせ、ツルッとしたガス型惑星表面だけでなく、当サイトのアーカイブ「月面の観察」にあるような岩石型天体の複雑な陰影も正確にシミュレートできます(左画像/これは撮影したものではなく、自作プログラムによる月面X地形のCG)。
ブリン氏のCGはYoutubeを検索すると少しだけ出てきます。消えちゃうかも知れないけど下に貼っておきます。古い映像ですが、今のような発達したハードもソフトもない40年以上も前の時代にこんなリアルな映像を作っていたことが驚きですよね。
環の右下にある衛星はレアとテティス。明るいほうがレアです。5日前と比較しても環の明るさは変わりません。カッシニの間隙は分かるけれどエンケの間隙はまだ判別不能。環の「透明感」と言いますか、「薄さ」と言いますか、そのような感じが表現できなくてもどかしいところです。
【脱線話】
環の明るさと言うと、学生時代にジェームス・F・ブリン氏の論文に魅了された思い出がよみがえります。
ハレー彗星の回帰や、ボイジャーの素晴らしい探査成果に沸き立つ1980年代から天文に関わってきた方なら、カール・セーガン氏の「コスモス」という番組をご存知でしょう。この番組で頻出していた「ボイジャーが木星や土星に接近しながら本体や衛星をモザイク撮影する」という驚異的なリアルCGを覚えているでしょうか?このCGを作ったのがNASA-JPLのジェームス・F・ブリン氏でした(→日本語wiki・英語wiki)。氏のCGは科学的に忠実なシェーディング理論やバンプマッピングなど、現在もなお使われ続けているコンピューターグラフィクスの基礎を作った科学者です。当時は大容量の映像をデジタル記憶できる時代ではなかったので、コスモスに使われたCGはモニター前に映画用カメラ(16ミリフィルム)をセットし、コマ撮りしたそうです。
マッピングの技法は現代の多くの天文ソフトで使われています。簡単に言うと、精密モデル化が難しい対象の代わりに、表面形状や光学特性のみ記述して簡略化する方法。たとえば惑星面の大気や海などの流れや光の拡散、反射などはそのままモデル化が難しいけれど、もし表面を1枚の平面図(展開図/テクスチャ)にできれば、それを球体に貼り付けて「それっぽく見える疑似惑星」が作れます。探査機飛行ルートや撮像エリアの確認であれば、それで十分なのです。
別途用意したテクスチャを時々刻々と変化させる…例えば木星の模様や大赤斑がウネウネ動いてる…といったことも可能です。惑星観測家が良く使うWinJuPOSのメニューにあるデローテーションもこのテクスチャマッピングの応用ですね。右はStellariumの木星テクスチャに「いらすとや」の絵を貼り付けたサンプル。ちゃんと顔面をイオとその影が通過します。自分で撮った画像を展開図にして貼り付けることも可能です。
ブリン氏は更に光の反射を表面特性に応じてに散らすことで、土星のA環B環C環…ごとの濃淡の違いや表面のスポークまでもリアルに映像化しました。バンプマッピングと呼ばれる技法です。逆に、地上観測やボイジャーカメラが捉えた環の明るさとCGモデルとの相違を追求することで、材質や密度などを特定してゆくことも可能でしょう。当時のCGは石膏像とかプラスチックみたいな質感ばかり。 レイトレーシングが生まれ、鏡面や透明なものの表現がようやくできるようになってきた時代。バンプマッピングは革新的発想でした。これを知ったとき大学図書館中を探して論文を見つけ出し、宝物のように何度も読み返しました。当時は私も8mmムービーカメラ(注:ビデオじゃなくフィルム)でPC-8801画面を写すコマ撮りCGに夢中だったので、妙な親近感がありました。
後に映画「ジュラシックパーク」の恐竜の肌など、主にエンターテインメント分野のあらゆる場面に応用されたバンプマッピングですが、元々は土星の環を『科学法則に則って』どうやってリアルに描くかと言うシミュレーションだったのです。現在では探査機による実測標高をデータとして持たせ、ツルッとしたガス型惑星表面だけでなく、当サイトのアーカイブ「月面の観察」にあるような岩石型天体の複雑な陰影も正確にシミュレートできます(左画像/これは撮影したものではなく、自作プログラムによる月面X地形のCG)。
ブリン氏のCGはYoutubeを検索すると少しだけ出てきます。消えちゃうかも知れないけど下に貼っておきます。古い映像ですが、今のような発達したハードもソフトもない40年以上も前の時代にこんなリアルな映像を作っていたことが驚きですよね。
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A.木星を通過するボイジャー -
B.土星を通過するボイジャー



