どうして土星の環が暗くなったのか? ― 2024/11/27
少し前にSpaceweather.comギャラリーに掲載されたMichael Karrerさんの土星画像はなかなか示唆的でした。同時期にAstroBinの11月22日・IODに選出されたMAILLARDさんの土星変化組み写真もまた素晴らしい。
技術も機材も到底及ばないですが、私も7月末から11月25日宵までの撮影画像を使い、環の変化を追ってみました(左画像)。これらから色々なことが分かりますが、ここでは「環の明るさ」の変化に注目していただきたいのです。
9月までに比べ10月以降は明らかに環が本体より暗くなりました。これはモニター画面でもよく分かった現象です。当初私は衝効果の影響かなと軽く考えていたのですが、衝効果が現れるのは大きく見積もってもせいぜい位相角が1°以下と言われます。今年の土星では8月末から9月中旬ごろまで(→9月5日記事の図参照)。左画像で衝前日の9月7日の環が結構明るい説明にはなるけれど、10月以降に7・8月頃の明るさに戻った訳ではなく大きく減光してしまいました。減光は今も継続してますから、衝効果だけでは説明できませんね。ここまで急に暗くなった理由が全く思い付きません。
衝以外のトリガーになり得る事象があるかどうか、地心や日心から見た環の傾斜角関連のグラフを拡張し、あらためて描いてみました(右下図)。現在日心から見た環の傾斜(赤線)は来年5月の水平(0°)に向かって減っていますが、地心から見た傾斜(オレンジ線)は11月11日まで増加していました。両者の交点は9月4日。衝の少し前です。今後起こる各交点も衝や合の数日前に起こります。地球からの視線に対して太陽光が更に高いところから環を照らすか(オレンジ線より赤線が上)、それとも環の面に近いところから照らすか(赤線よりオレンジ線が上)…という違いです。この違いは環の明暗に結びつくでしょうか?
私の頭では簡単に答えが導けませんが、もしこの差が関係するなら来春に起こる次の交点までの間に元の輝度へ戻ることが考えられます。ただ、合に近くなりますから観察しにくいことは確かですね。2025年2月上旬が観察限界でしょう。「本体より明るいか暗いか」だけでも確認できたらと思います。それ以降はしばらく見えず、明け方何とか見えるのは5月下旬でしょう。この間は「太陽が環の南側から照らし、それを北側から見る」という探査機しか叶わないシチュエーションで、滝を裏側から見るような面白さがあります。でも太陽に近くて見えないんですよ…。
話を戻すと、過去に戻ってこの交点または衝前後で環が大きく減光した事例があるかどうか調べたのですが、私が探した範囲では見つかりませんでした。2024年11月24日記事のタイタンの影通過と同様に、環の傾斜が浅い時期しか起きないことなのかも知れません。また、詳しく調べると今秋の環の減光は2024年11月12日記事に書いた等級や表面輝度には反映されていませんでした。初めての事象という訳でもないですから、JPL-HORIZONSの計算アルゴリズムには含まれない特殊な減光なのかも知れません。衝効果の詳細も詳しく分かっている訳ではないので、今後の研究に期待しましょう。
25日宵から26日未明にかけてこの時期にしてはシーイングが良かったので、上に載せた土星だけでなく木星と火星も撮ってみました。もう冬の大気ですが、ここまで写ってくれたことに感謝。木星は大赤斑とエウロパが、火星は大シルチスあたりが写っています。木星は残り10日ほどで衝を迎えます。各種データを下にメモしておきます。
技術も機材も到底及ばないですが、私も7月末から11月25日宵までの撮影画像を使い、環の変化を追ってみました(左画像)。これらから色々なことが分かりますが、ここでは「環の明るさ」の変化に注目していただきたいのです。
9月までに比べ10月以降は明らかに環が本体より暗くなりました。これはモニター画面でもよく分かった現象です。当初私は衝効果の影響かなと軽く考えていたのですが、衝効果が現れるのは大きく見積もってもせいぜい位相角が1°以下と言われます。今年の土星では8月末から9月中旬ごろまで(→9月5日記事の図参照)。左画像で衝前日の9月7日の環が結構明るい説明にはなるけれど、10月以降に7・8月頃の明るさに戻った訳ではなく大きく減光してしまいました。減光は今も継続してますから、衝効果だけでは説明できませんね。ここまで急に暗くなった理由が全く思い付きません。
衝以外のトリガーになり得る事象があるかどうか、地心や日心から見た環の傾斜角関連のグラフを拡張し、あらためて描いてみました(右下図)。現在日心から見た環の傾斜(赤線)は来年5月の水平(0°)に向かって減っていますが、地心から見た傾斜(オレンジ線)は11月11日まで増加していました。両者の交点は9月4日。衝の少し前です。今後起こる各交点も衝や合の数日前に起こります。地球からの視線に対して太陽光が更に高いところから環を照らすか(オレンジ線より赤線が上)、それとも環の面に近いところから照らすか(赤線よりオレンジ線が上)…という違いです。この違いは環の明暗に結びつくでしょうか?
私の頭では簡単に答えが導けませんが、もしこの差が関係するなら来春に起こる次の交点までの間に元の輝度へ戻ることが考えられます。ただ、合に近くなりますから観察しにくいことは確かですね。2025年2月上旬が観察限界でしょう。「本体より明るいか暗いか」だけでも確認できたらと思います。それ以降はしばらく見えず、明け方何とか見えるのは5月下旬でしょう。この間は「太陽が環の南側から照らし、それを北側から見る」という探査機しか叶わないシチュエーションで、滝を裏側から見るような面白さがあります。でも太陽に近くて見えないんですよ…。
話を戻すと、過去に戻ってこの交点または衝前後で環が大きく減光した事例があるかどうか調べたのですが、私が探した範囲では見つかりませんでした。2024年11月24日記事のタイタンの影通過と同様に、環の傾斜が浅い時期しか起きないことなのかも知れません。また、詳しく調べると今秋の環の減光は2024年11月12日記事に書いた等級や表面輝度には反映されていませんでした。初めての事象という訳でもないですから、JPL-HORIZONSの計算アルゴリズムには含まれない特殊な減光なのかも知れません。衝効果の詳細も詳しく分かっている訳ではないので、今後の研究に期待しましょう。
25日宵から26日未明にかけてこの時期にしてはシーイングが良かったので、上に載せた土星だけでなく木星と火星も撮ってみました。もう冬の大気ですが、ここまで写ってくれたことに感謝。木星は大赤斑とエウロパが、火星は大シルチスあたりが写っています。木星は残り10日ほどで衝を迎えます。各種データを下にメモしておきます。
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【2024年12月8日・衝付近の木星メモ】
- 黄経衝の瞬時:8日 5:58:00 JST
- 赤経衝の瞬時:8日 7:23:52 JST
- 地球最接近:6日 18:59:48 JST、4.089361 AU
- 位相角最小の瞬時:8日 5:48:32 JST、0.1300°