タイタンの影を見たい! ― 2024/11/24
ガリレオ衛星の影は比較的頻繁に木星本体へ投影されて地上から黒い点状に観察できます。では、土星の衛星ではどうでしょうか?実はこの11月から、土星系最大の月である「タイタン」の影が土星本体に投影される季節を迎えています。かなり大きい像ですから小型望遠鏡でも地上から見ることができます。
7月30日記事にワンフレーズ書いただけなので多くのみなさんは気にも留めなかったと思いますが、この現象は土星の環が真横から照らされる季節…つまり15年ごとの環の消失時期でなければ起こらない珍現象。タイタンの土星赤道面に対する軌道傾斜は約0.3°と小さく、“ほぼ環の延長”と考えれば良いため、15年ごとに影が映る周期性は理解できますね。とは言え、タイタンの影はなかなか投影されません。理由は幾つかありますが、何と言っても「タイタンが土星本体からかなり遠くを半月あまりかけて回る」ことでしょう。例えば公転周期が一ヶ月弱の「地球の月」は平均公転半径の間に月自身が110個並びます。いっぽうタイタンは230個以上。タイタンよりわずかに大きい木星のガニメデでも203個。これではタイタン自身が大きくてもなかなか太陽と土星との間に立ちはだからず、ちょっとズレたら影も届きません。
逆に考えると、もし土星の環がタイタンの軌道までびっしり埋まっていたなら、土星の半球を影が覆ってしまうことになります。15年間は南半球が全て環の影に入り、次の15年間は北半球が暗くて見えない、といった異様な光景になるはず。初めて望遠鏡で土星を見たガリレオ・ガリレイは環と分からず「耳がある」とツイートしましたが、もしタイタンまで環がある土星だったら、更に困惑したことでしょう。土星本体が口のように半分見えたかも?なお、タイタンよりも本体に近い衛星の影なら軌道半径に応じてもっと幅広い期間に投影されており、大きめの影ならアマチュアの30cm級望遠鏡でも捉えることができるようです。
ところで、今期タイタンの影が日本から見えるチャンスは皆無です。というのも、地球から見た「タイタンと土星の会合周期(タイタンが手前のケースのみ)」は30年分平均で約15.97日プラスマイナス0.08日。つまり影が通過する現象は約16日ごとに発生するけれど、時刻のぶれがほとんどありません。日本から見えないサイクルに陥ると1年待っても解消されないのです。今期は大西洋を挟むヨーロッパやアメリカでは見えるけれどアジア圏では全くダメ。15年後も全くダメ。30年後の2054年の環の消失時期にやっと見えそうです。何とも不運な巡り合わせ。ちなみに前回2009年は春から初夏の宵空、および冬の明け方に日本で見られました。(→ALPO-Japanの2009/03/28UT記録や2009/04/29UT記録など参照。)
ということで、海外勢の投稿やつぶやきを期待してますが、今のところ件数は少ないようです。11月4日UTに始まったばかり(下A図/Stellariumで作図)、11月20日に二度目が起こったばかり。これからだんだん増えるでしょうか。最終日の来年10月6日UT(下B図)まで、16日ごとにネットを漁るとしましょう。こんなときのために「月惑星専用」のリモート天文台を海外各地にたくさん建てて!とサンタクロースさんにお願いしたい。シーイングと晴天率が良ければ、少々光害があっても構わないのですから。
来春4月29日はタイタンの影の上を環が横切るような状態になります(冒頭図)。これも楽しみ。前回2009年はまだアマチュアが惑星面を明瞭に記録できる手段を獲得していませんでした。今回は初めての機会ですから、ぜひ多くの方に注目していただきたいものです。
参考:
天気が崩れる前に惑星観察(2022/08/20)……カリストの影が木星に投影されない期間を考察
7月30日記事にワンフレーズ書いただけなので多くのみなさんは気にも留めなかったと思いますが、この現象は土星の環が真横から照らされる季節…つまり15年ごとの環の消失時期でなければ起こらない珍現象。タイタンの土星赤道面に対する軌道傾斜は約0.3°と小さく、“ほぼ環の延長”と考えれば良いため、15年ごとに影が映る周期性は理解できますね。とは言え、タイタンの影はなかなか投影されません。理由は幾つかありますが、何と言っても「タイタンが土星本体からかなり遠くを半月あまりかけて回る」ことでしょう。例えば公転周期が一ヶ月弱の「地球の月」は平均公転半径の間に月自身が110個並びます。いっぽうタイタンは230個以上。タイタンよりわずかに大きい木星のガニメデでも203個。これではタイタン自身が大きくてもなかなか太陽と土星との間に立ちはだからず、ちょっとズレたら影も届きません。
逆に考えると、もし土星の環がタイタンの軌道までびっしり埋まっていたなら、土星の半球を影が覆ってしまうことになります。15年間は南半球が全て環の影に入り、次の15年間は北半球が暗くて見えない、といった異様な光景になるはず。初めて望遠鏡で土星を見たガリレオ・ガリレイは環と分からず「耳がある」とツイートしましたが、もしタイタンまで環がある土星だったら、更に困惑したことでしょう。土星本体が口のように半分見えたかも?なお、タイタンよりも本体に近い衛星の影なら軌道半径に応じてもっと幅広い期間に投影されており、大きめの影ならアマチュアの30cm級望遠鏡でも捉えることができるようです。
ところで、今期タイタンの影が日本から見えるチャンスは皆無です。というのも、地球から見た「タイタンと土星の会合周期(タイタンが手前のケースのみ)」は30年分平均で約15.97日プラスマイナス0.08日。つまり影が通過する現象は約16日ごとに発生するけれど、時刻のぶれがほとんどありません。日本から見えないサイクルに陥ると1年待っても解消されないのです。今期は大西洋を挟むヨーロッパやアメリカでは見えるけれどアジア圏では全くダメ。15年後も全くダメ。30年後の2054年の環の消失時期にやっと見えそうです。何とも不運な巡り合わせ。ちなみに前回2009年は春から初夏の宵空、および冬の明け方に日本で見られました。(→ALPO-Japanの2009/03/28UT記録や2009/04/29UT記録など参照。)
ということで、海外勢の投稿やつぶやきを期待してますが、今のところ件数は少ないようです。11月4日UTに始まったばかり(下A図/Stellariumで作図)、11月20日に二度目が起こったばかり。これからだんだん増えるでしょうか。最終日の来年10月6日UT(下B図)まで、16日ごとにネットを漁るとしましょう。こんなときのために「月惑星専用」のリモート天文台を海外各地にたくさん建てて!とサンタクロースさんにお願いしたい。シーイングと晴天率が良ければ、少々光害があっても構わないのですから。
来春4月29日はタイタンの影の上を環が横切るような状態になります(冒頭図)。これも楽しみ。前回2009年はまだアマチュアが惑星面を明瞭に記録できる手段を獲得していませんでした。今回は初めての機会ですから、ぜひ多くの方に注目していただきたいものです。
参考:
天気が崩れる前に惑星観察(2022/08/20)……カリストの影が木星に投影されない期間を考察




